デリバリー業の抱える課題 交通事故の代償、試される本部の対応
死亡事故を起こしたFC店は数多い。脱サラで始めたA氏の店もその一つ。A氏の罪悪感は事故から数ヵ月経ったいまもつきまとう。同時に本部に対する不信感もぬぐえないままだ。
事の始まりは、アルバイトドライバーが前方不注意で通行人をはねた死亡事故。常識なら本部とFC店は揃って遺族に謝罪するところだ。
しかし現実は違った。
事故後の連絡はA氏からの一方通行。本部は逃げるかのような姿勢。通夜、葬式、それ以後も本部からは誰も姿を見せない。遺族への謝罪、見舞金などもってのほか。保険屋がやってきたのは事故から四日後であった。あきれたことにこの本部は保険代理店を兼務し、加盟店を強制加入させているという。
事故原因は前方不注意。警察では事務的に処理された。事故の背景についての記録はない。
A氏の加盟するピザチェーンは過当競争のおり圧倒的な低価格で勢力を拡大した。が、そのやり方には周囲から疑問符をつけられている。
食材原価高によるFC店の経営圧迫。急造SVの知識不足。置き去りにされた安全運転指導。そして相変わらずの事故。企業責任を無視した急成長の裏には数々の犠牲がある。現実を聞かされるたびFC広告の華々しさにしらけさが増す。
利益を出すために人件費を削る。当然ドライバーに負担がかかる。対応策として信号の無いルートを選定。不本意にも猛スピードのデリバリーを強いられる。そのしわ寄せが死亡事故という形となって現れた。
A氏の口にやるせなさがにじむ。死亡事故は利益追求の悪循環がもたらした結果である。
低価格はユーザーから支持される。だがモラルに反してまでの低価格は認められない。安全運転はデリバリービジネスで最優先される義務である。置き去りは絶対に許されない。
運転する以上、事故の可能性が消えることはない。可能性をいかに低くしていくか。仮に事故をおこしたらどのような行動をとるか。チェーン本部の見識が問われるところだ。(岡)