拡大路線の給食業 「エームサービス」給食部門で年9%の伸び

1996.11.04 114号 5面

エームサービスは三井グループで、年商三六〇億円、出店数四〇〇店、業界三位の給食企業だが、事業展開はオフィス、工場、学校などの給食サービスからオフィスコーヒーサービスや食器、調理器具の販売まで、シダックス以上に多角的だ。

会社設立が七六年5月、今年で満二〇年になる。三井物産が米国最大の給食会社ARAサービス(現ARAMARKコーポレーション)と提携してスタートしたもので、給食事業におけるアメリカの最新ノウハウとシステムを導入、飛躍的な発展をみせている。

売上げの推移は過去五年間の場合、九二年二六六億円、九三年二九六億円、九四年三一五億円、九五年三四〇億円、九六年三六〇億円(3月期)で、年率九%台の伸びをみせている。

エームサービスの給食事業は、製造業、金融・サービス業、病院、社会福祉施設、学校、その他を対象に展開、全体売上げの九割を占める。

ポストバブル経済で企業の活動がスタティックになり、またリストラが進んでいるにもかかわらず、シビアな給食業界で安定した企業成長をみせているということは、やはり大資本三井グループのパワーが強力な後ろ盾になっているということだ。

給食業界トップのシダックスが四八〇億円、二位のニッコクトラストが三七〇億円。ニッコクとはすでに肩を並べている状況にあり、シダックスは年率五%の伸び、エームの年率九%のレベルで推移していけば、五、六年内に国内一位の給食会社に躍り出ることになる。

給食事業は外食産業二八兆円(九五年度)の市場規模にあって、約四兆円(全体比一四%)とビッグな市場ボリュームにあるが、しかし、この市場の全体の伸びは二・五%でしかない(エームサービス試算)。

シダックスの例のようにトップ給食会社の伸びでも年率五%。この数字でも市場の伸びを超えているわけだが、エームサービスの企業成長は驚異的だ。

給食業界も中小の企業が圧倒的分母を占めているが、経営のシステム化や施設運営のノウハウ、トータル力が要求される高度成熟化の給食事業にあっては、弱肉強食で資本力や優れたノウハウを有する企業が市場を制するというメカニズムだ。

エームサービスの市場戦略は、主力の給食事業においては市場占有率を高めて、企業の拡大発展を図っていくという考え方だが、もう一方の戦略は、「ヘルシーケア・サービス・マネージメント」(病院・シルバー施設のホスピタリティ事業)、「ファシリティ・サービス」(施設清掃・設備保守サービス事業)、「オフィス・コーヒー・サービス」(オフィスコーヒーサービス事業)などの周辺および関連ビジネスを積極展開していくということだ。

病院・シルバー事業については、シダックスが本格参入を始めているところだが、エームサービスも近未来のフードおよびケアビジネスとして、トータルシステムでマーケティングを進めていこうということだ。

ファシリティサービスは給食、レストラン事業の側面支援、付加価値を高めていこうという事業戦略にある。施設のランニングコストの八割が、清掃や設備保守にあるといわれ、事業の一体化で事業者(クライアント)の省力化、コストダウンに寄与するという考え方だ。

二一世紀初頭には主力の給食事業で一〇〇〇億円、周辺事業で五〇〇億円の計年間売上げ一五〇〇億円が目標。

事業が多面すぎて、いかにも“商社ビジネス”という趣もあるが、目標を実現するのは真の市場ニーズに対応した、企業エネルギーにかかっているということだ。

エームサービス‐‐東京都庁四階食堂(東京都社会福祉協議会受託運営)、客席数四五〇席の大型施設、一般客の利用も可能。客単価昼四五〇円、夜二〇〇〇円

◇会社概要

企業名/エームサービス(株)▽会社設立/一九七六年5月▽本社所在地/東京都港区西新橋一‐一‐一五、物産ビル別館四階(Tel03・3502・3721)▽資本金/一六億四〇〇〇万円▽代表取締役会長/田淵守・代表取締役社長/若杉康孝▽従業員数/一五四〇人▽事業内容/(1)オフィス、工場、学校、病院などにおける給食サービス(2)会議研修施設などにおける飲食サービスおよび施設のトータル管理(一括受託業務)(3)レジャー施設、国際展示場などにおけるレストラン経営(4)オフィスコーヒーサービス(5)食堂施設の設計および厨房工事元請け(6)食器・調理器具の販売▽出店数/四一一店(事業所クライアント)▽売上高/三六〇億円(九六年3月期、前年比約五%増)、給食部門九五%、その他五%▽営業利益/三%(純益一・五%)▽特色/米国最大手の給食企業ARAMARK社と三井物産との提携による給食事業大手。企業、学校、病院給食事業を主体に、飲食および関連事業をトータル的に推進中。

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