シリーズ給食産業総点検 エームサービスの長野五輪受注とイベントへの取り組み
二年後(一九九八年2月)に迫った「長野冬季オリンピック」のフードサービス部門の運営管理業務と運営業務を、エームサービス(株)(東京都港区、Tel03・3502・3722)が受注した。
開催期間一六日間、参加国・地域六十数ヵ国(NOC)、総食数七一万八五一九食提供するためにすでに着々と準備が進められている。これまでにも東京オリンピック、大阪万国博など大量調理の技術を駆使して最先端の給食を提供する国際的なイベントで外食産業が飛躍的に技術革新されてきたことは周知の通り。
そこで、エームサービスの長野オリンピック受注と同社のスポーツイベント受注実績、そして一九六四年(昭和39年)に開催された東京オリンピック選手村の料理に携わった村上信夫氏のエピソード((社)全日本司厨士協会発行月刊西洋料理11月号に掲載)から、日本の給食技術の今後を展望してみたい。
エームサービスと財団法人長野オリンピック冬季競技大会組織委員会(NAOC、Tel026・225・1857)は長野冬季オリンピックでの選手、役員、報道関係者、スポンサー関係者を対象としたフードサービスについての運営管理と運営業務をエームサービスに委託することで基本的に合意、具体的な条件などは今後検討することとし、来年6月末をめどに本契約を締結する予定。
長野冬季オリンピックでのフードサービス(観客と大会運営要員向けは除く)について、施設ごとの運営基本コンセプト、運営基本計画、メニュープログラム、衛生管理基準、サービス基準、大会終了後の撤収管理などの実施計画の策定業務、大会中の運営管理業務とNAOCの窓口としての調整業務を行う。作業は10月下旬から同社スタッフがNAOCに駐在して行っている。
運営業務の対象となる食堂施設はオリンピック村、競技施設、IBC(国際放送センター)、MPC(メインプレスセンター)などの二四会場・五九施設(別表)となっている。
スポーツの国際大会におけるフードサービスは短期間に大量、複雑なサービスを要求されるために特別なノウハウを必要とする。同社は一九九四年に「第一二回アジア競技大会広島一九九四」の選手村食堂の施設設計と運営を一括受注した実績をもつ。九八年2月の長野オリンピックの後の10月にはマレーシアのクアラルンプールで開催される「コモンウェルスゲーム」も受注している。
同社のパートナーである米国のアラマーク社(フィラデルフィア)は、過去一〇回(夏季六回、冬季四回)のオリンピックにおいてフードサービス部門の運営もしくはコンサルティングの実績をもち、この夏開催された「アトランタ夏季オリンピック」のフードサービスも受注しており、同社はスタッフ九人を派遣している。
広島アジア大会運営実績は選手村開村期間三二日、参加選手・役員六八〇〇人、提供食数約三五万食でほぼ東京オリンピックと同程度の規模である。
食習慣の違いや提供する食数が多いため選手村の食堂運営には独自のノウハウが必要。選手村の食堂は客席数二〇二〇席で、二四時間営業のカフェテリア方式。ドリンクを含め、常時五〇種類のメニューをそろえ、陣容は正社員一〇〇人、現地採用のパート・アルバイト約五〇〇人で交代制で対応。
料理は各国の宗教や食習慣を配慮して日本、中国、韓国、東南アジア、中近東にグループ分けし、メニューを編成。大会期間中は五日ごとのローテーションで延べ二〇〇種の献立が供された。日本になじみの薄い地域の料理も用意する必要があり、大使館に問い合わせながら準備を進めた。
メニューの味付けはクセのないスタンダードなものにし、香辛料を約五〇種類そろえて喫食者が自分で味を調整できるようにした。また、スポーツ選手用の食事が主となるため、主菜・副菜などを標準的に組み立てると一日六〇〇〇キロカロリーの熱量をとれるようにした。これらのことをクリアするためには、いかにスムーズに材料を集められるかがポイントとなる。
これらの実績を基に長野オリンピックの食堂運営の細部をこれから詰めていく。