低価格時代の外食・飲食店 イタリアレストラン「サイゼリア」

1997.04.07 124号 4面

サイゼリヤ(本社=千葉・船橋)は、イタリアレストランを展開する国内一、二位のチェーン企業だ。この企業のイタリア料理に対する思い入れは一徹で、哲学的でさえある。また、企業理念はトップが理科系出身者であるだけに、一貫してロジカルで、他のレストランビジネスとは異なった生き方を主張している。イタリアントマト(本社=東京)も、社名どおりにイタリアレストランを展開するチェーン企業だが、この企業は若い女性層を主力ターゲットに出店を進めており、″イタトマ〓の愛称でストアイメージが浸透している。店舗数二二〇店。イタリアレストランでは国内最大のチェーン規模にあるが、サイゼリヤと比較すれば、この企業の生き方はファッショナブルで、感性的だ。

サイゼリヤは千葉・市川に第一号店を出店してから、来年で創業三〇年を迎える。ビルインタイプで店舗面積一〇坪、客席数二〇席ほどの小さな店で、現在も営業しているが、メニューは今もほとんど変わらない。

すでに創業時において、確固たるメニュー政策があったということだ。出店数は九五年度(8月決算)一一四店(売上高一四六億円)、九六年度一三四店(同一六〇億円)、今年度は出店数約一六〇店、売上高一九〇億円を目標に立てている。

店舗の出店は直営オンリーで、店舗展開は首都圏を主体に北海道、東海、愛知、北陸、三重、大阪、兵庫エリアに及ぶ。兵庫以西の出店はなく、首都圏八割のいわばドミナントの出店形態だ。

店舗規模や立地はどうか。結論からいえば、サイゼリヤの店舗展開は他のレストランチェーンのように、標準化、定型化はしていない。

売上高経常利益率一〇%、ROI(総資本経常利益率)が二〇%以上確保できれば、店の大きさにもロケーションにもこだわらない。

要は投資に見合って収益が出せるのであれば、一切のパターンや形式にこだわらないということだ。

社長の正垣泰彦氏は言う。「ROIが二〇%以上確保できれば、ビルでもフリースタンディングでも、ショッピングセンターの中でも、駅前でも駅裏でもどこでもかまわない。店の大きさも三角形であろうが細長であろうが、面積(形状)にはこだわらない。他のレストランチェーンは標準化にこだわるが、私にはこの考えが理解できない。消費者においしいものを提供するチェーンビジネスであるのなら、収益が確保できるのであれば、面積や立地にこだわる意味はないと思うのだが……」。

「結局はパターン化された範囲でのノウハウであり、オペレーションでしかないということだ。この点、われわれは多様なノウハウを蓄積しており、また店舗スタッフも、店の大小や立地に関係なく、店の運営が行える能力を有しており、これがサイゼリヤの大きな強味であるのだ」

サイゼリヤの店長およびスタッフは、数字に強く、臨機応変な行動をとれることが不可欠な条件だ。数字に強いのは他のレストランチェーンでも基本的なことであるのだが、同社の場合は人事採用の面で、数理に強い理科系の人間にウエートをおいて採用しており、これは極めて特異な存在だ。

トップや経営陣が理科系出身者というのも根底にあるが、メーカーや商社並みに当初から能力の高い人間を採用するという考えからだが、もう一方においてはものの本質が理解でき、正垣社長の考え方や企業哲学に共鳴できることが重要なポイントだ。

真理は一つ。すなわち、おいしいものを″安く〓提供し、客が満足し、それによってビジネスが成立する店舗オペレーションやチェーンシステムが確立できるのであれば、ホテルレストランビジネスを専攻していようが、電子や機械工学を学んでいようが、求められる方法論と解は同一になるはずだ。

要はそれを導き出す企業理念や環境があり、また事業を発展させていくマインド(情熱)が共有できるかということだ。

「科学的な方法論をもって生産性を上げ、食文化を広めていく、その目標を認識することにおいて、物事に対して科学的に思考できる人間、すなわち、理科系のスペシャリスト集団を作っていく。これがわれわれの考え方であるのです」(正垣社長)

いかにも理科系出身のトップらしい理屈っぽい考え方だが、文系であろうが理系であろうが、望む結果が出て社員が潤い、企業として成長発展していければ、万事結構なことだ。

スパゲティ四八〇~五八〇円、ドリア四八〇円、リゾット三八〇~四八〇円、ピザ三八〇~四八〇円、チキン料理三八〇~七八〇円、ステーキ、シチュー七八〇~九八〇円。

これはサイゼリヤメニューの一例だが、創業三〇年間メニュー政策は変わることがないし、価格も長期にわたってポピュラープライスで推移している。

「日本の食文化というのは、はやりすたりがあって一貫性もなく、体系的でもない。常に近視眼的でビジネスライクな範囲にとどまっています。私どもは、ワインも含めてイタリアの食文化をトータル的に、しかもイタリアと同じ価格帯で提供していこうという考えでして、プロ意識に徹して食材開発から味づくりまで、不偏的な考え方で取り組んできているのです」(サイゼリヤ取締役経営企画室室長尾島教仁氏)

◆会社概要

・企業名/(株)サイゼリヤ

・チェーンブランド/サイゼリヤ

・創業/昭和43年(一九六八年)7月

・会社設立/昭和49年(一九七四年)5月

・本社所在地/千葉県船橋市浜町二-一-一(TEL0474・35・6201)

・資本金/五億六三〇〇万円

・代表取締役社長/正垣泰彦

・従業員数/四五四人(正社員)

・事業内容/イタリアンレストラン「サイゼリヤ」のチェーン展開

・出店数/直営一一四店

・売上高/一四六億円(平成7年8月期)

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