関西版 ごった煮大阪、コリアタウン キムチの匂い漂い情緒たっぷり
商都大阪は、世界に門戸を開放した多面な魅力を持つ街であり、特に隣国のコリアンの人たち二〇万人も住む汎アジアの街でもある。そんな彼らの胃袋を満たす町として誕生した町が生野区にある。戦前は「朝鮮市場」と呼ばれ親しまれてきた「御幸通商店街」であり、三年前にはリフレッシュして、「コリアタウン」「コリアロード」との愛称を持つ、近隣の人たちだけではない国際的で個性豊かな町として生まれ変わった。
最寄りの鶴橋駅(JR・地下鉄・近鉄)に下車すると、どこからともなく焼き肉とキムチのにおいが漂ってくる網の目のようにはりめぐらされた市場を通り抜けると、極彩色に彩られた異国風景の町と出合う。
ありとあらゆる韓国料理(朝鮮料理)の食材が何百メートルに及ぶ商店街の主役であるが、銀行も軒を並べていれば、民族風冠婚葬祭の店もあり、日常・非日常を問わず民族の需要が満たされる商店街である。
それぞれの店頭に並ぶ商品も人も、エネルギッシュでバイタリティーが伝わってくるが、それもそのはず、この商店街は近隣の主婦を対象にした小売り機能だけでなく、京阪神全域を商圏とした各地の料飲店に食材を卸す問屋機能も有するからである。
五〇年前、祖母の時代に、手押し車でトックという冠婚葬祭用のもちを売り歩いたのが始まりで、今では、この通りで有数の店舗を構えるばかりでなく、この地と韓国にライン化された工場を持ち、全国規模の展開を図っている韓国食材総合商社の(株)徳山物産・洪性翊(ホン・ソンイク)社長は、この町についてつぎのように語った。
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戦前、生野区に流れる新平野川の河川工事に連れて来られた朝鮮人たちが、この辺りに定住し、独特の食材や冠婚葬祭の道具など、住民の必要に迫られて自然発生的にできた町。現在でも一〇〇軒程度ある店のうち、韓国人と日本人の店の比率が半々となっており、日本では珍しい定住外国人と日本人が共生する町として異なった観点からも全国の視線を集めており、意義深い町と自覚しております。
卸の機能もあるので、神戸の南京町のように食べ歩きのスタイルは定着していないが、頼めばキムチなど味見をさせてくれるはずです。
キムチは指の先から味が出ると言われているほど作り手によって味が千差万別するものなので、この町で食べ比べをして自分の好みの味を見つけるのも、この町の魅力のひとつでしょう。ただ、キムチ店などは、きつい労働を嫌う若者が多いので後継者がおらず、高齢者の商店主ばかりになりつつある。
エキゾチックで楽しく活気あふれる町に変身させ、若者を呼び戻したい。そのためには、ファストフードのように食べ歩きのできる飲食店や、ファッショナブルな小物を売る店などを充実させ、音楽や踊りなどイベントの企画も充実・展開してきたい。
洪社長の熱き想いは同世代の商店主の意欲を揺さぶり、3月16日の日曜午前11時~午後5時、共生の街「生野」チョアヨ!(素敵な)コリアタウン祭りが開催された。
今回が初めての開催にもかかわらず同胞との出会いの場として遠近を問わず多数が来場し、終日それぞれが祭りの主役となって楽しんだ。いわずもがな、文字どおりどん欲なまでの食欲を発揮しながら……。