トップインタビュー:オージーエムコンサルティング・榊芳生社長

1997.08.18 133号 7面

――中小の飲食企業や単独店を支援するコンサルタントとしてご活躍されています。その信念を声を大にして広めようとなさっていますが、どのような考えをお持ちなのですか。

榊 ここ二十数年、飲食業界は成長率を根拠に外食産業がもてはやされてきました。しかし、その報道姿勢たるや大手企業に偏重するばかり。三〇兆円の市場規模のなかで外食企業上位二〇〇社のシェアはわずか一八%しかないのに、マスコミはその一八%ばかりを報道している。本来は残りの八二%が業界を支えているのに、大手企業や珍しい事例ばかりを競って報道しているわけです。

もとより大手企業と中小、単独店では、商売のやり方がまったく違う。かたやチェーンストア、かたやインディペンデント。一八%のトレンドなんて八二%から見ればまったく関係ない。一八%の飲食店が何か話題性のあることをしても、わが国の飲食業界にさして影響はないのです。

なのに、そういう一八%の大手チェーンばかりが報道され、地方で抜群に行動している単独店が表舞台にでてこない。

そのような報道をされ続けては、わが国の外食産業は片寄ったものになってしまう。だからコンサルタント活動を通して、地方の中小チェーンや単独生業店の存在や貢献度を明確化すべく、声を大にしているわけです。

――片寄ったものになりそうな気配はあるのですか。

榊 現にマスコミは、大手チェーンの安売りを、飲食業界のトレンドのごとく報道しているじゃないですか。安く売ることは、相手を打ち倒してでも安く売ってお客に来てもらおう、ということ。それは間違っているのではないでしょうか。

安く売って、お客が感動して再度来店してくれればよいが、成熟した現代社会においては、安さに興味こそあれ、それが継続性につながるとは思えない。決して社会正義ではないわけです。

昭和の経済成長期、日本人が貧しかった時代にハンバーガーを安く売ることは社会正義です。しかし、飽食なこの時代に安くし話題を集めて、何の意味があるのでしょうか。

われわれは、成熟した現代だからこそ、一〇〇円でも二〇〇円でも客単価を多くもらいなさい、多くもらえるような、感動を与える商売を勉強しましょう、と促しています。

アルバイト、パートを入れて、食材の外部化を図って、システムをつくれば、そりゃ大量に安くつくれます。これは片方(供給者側)では効率化だの合理化といいますが、お客さんから見て、こんな不合理なことはありませんよ。手抜き商売にほかならないのではないのですか。

榊 飲食サービスとは、本当に手間暇かけたおいしいメニューを、心こもったサービスで提供するのが筋であって、手抜きの安物を安易に売りつけることではありません。

また、安く売っている従業員が、本当に幸せかどうかも疑問です。

二五年前、マクドナルドで働く従業員は誇りを持って幸せに働いていたはず。お客もそういった店に胸ときめかせ食べに行きました。しかし現在の従業員が当時と同じような気持ちで働いていますか。二十数年も経てば、従業員の気持ちも変わるし、お客も変わるのです。

その気持ちの変化を、マスコミは一切報道していないわけです。大きくなること、儲けることばかりしか報道しない。だからわれわれは反発して、声を大にして従業員やお客の気持ちを優先すべきと主張するのです。また、それを実践できる中小飲食店を応援するわけです。

安く売ること事態を否定はしません。そういった需要もありますから。けれどもそうした需要は一部に限られています。現代ニーズの大筋は、大手チェーンのやってるディスカウントではなく、二〇〇〇~三〇〇〇円で満足のゆく飲食サービスを受けたい、というものなのです。

――成熟した現代において、飲食店は効率論主導のマスプロ、マスセールに走るべきではないというわけですね。

榊 その通りです。飲食店業界において企業規模は関係ない、というのが私の持論です。お客に感動を与え、かつ働く従業員にも感動(歓働)を与える、その二つをつくり得ない経営者(外食企業)は、いくら規模が大きく収益性が高くても屁みたいなもんです。

飲食店を企業化するチェーンストア理論は、一店舗から一〇〇店舗つくる、大きくして利益を出す、大きくなって安く売ることが貢献だ、といいますが、そんな考えが成熟社会の主流として通用するはずがありません。

お客にも従業員にも感動を与えることができる地域一番店(中小規模の)の方が、今後さらに消費者の支持率をつかむはず。飲食業界の主流となるはずです。

現に売上げだけ見ても、既存店ベースで前年を上回っているのは中小の地域一番店ばかり。大手チェーンは新規出店があるのでトータルではプラスになっているものの、既存店ベースで見れば、ほとんどが横ばいかマイナスの状況。私のいっていることは一目瞭然ですね。

※続きは次号にて。今後、飲食店経営者は何をすべきか。労務管理、業態開発に対する榊氏の見解を具体的に掲載します。

昭和12年、香川県生まれ、六〇歳。中央大学在学中、愛媛県松山市に「へんこつ庵」を開業、以後、四国を拠点に一九店舗をチェーン展開、四国地方のトップ外食企業を築く。が、政治がらみの影響を受け昭和50年にチェーンを解散(企業倒産)。後、それまでに培った、地域一番店づくりのノウハウをいかして、コンサルタント業に転身。チェーンストア理論に逆行するユニークな指導法で手腕を発揮し、現在、国内六二〇社(三五〇〇店)、韓国、台湾においても多数、繁盛店の顧問を務める。

昨今は、国内最大の外食コンサルタント軍団(株)オージーエムコンサルティングのトップの立場から「生業店、中小飲食企業による地域志向の外食産業づくり」を声を大に啓蒙している。

「飲食店経営者時代、天国と地獄の両方を体験した」という榊氏。「コンサルタントはまず人生の相談役になること」といってはばからない。「従業員の充実感を高めていくのが経営者の仕事」「一に人生を語り、二に時流を語り、三にノウハウを語るのがコンサルタントの仕事」の二点をモットーに活躍する榊氏に、今後の外食のあり方について聞いた。

(文責・岡安)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: マクドナルド