話題の飲食施設 クリスタルヨットクラブ(東京・品川)

1997.10.20 138号 6面

クリスタルヨットクラブ(本社=東京・品川)は、陸上のクラブハウス(レストラン)と東京湾クルージングの洋上レストランを一体化させる施設運営で、海辺のリゾート気分と非日常的な食行動が楽しめることで、安定した集客力を誇っている。会食、宴会、ランチ、ディナー、カクテルクルージング、ウエディングパーティーなど年間約三万人の利用、年間売上高六億五〇〇〇万円(九六年度)。都心から離れた立地だが、目的志向に支えられた施設利用で、大きく成功を収めている。

本紙9月1日付の「地域ルポ」で一部紹介したが、あらためて全施設を紹介する。JR浜松町から東京モノレールに乗って一つ目の駅。天王洲アイルはオフィス、ショッピング(レストラン)、文化施設が一体化する高層ビルが建ち並ぶ“運河の街”だ。

オフィス人口六〇〇〇人を合わせて地域への来街者は一日二万人前後。平日は“サラリーマンの街”の顔、土・日・祝日は若いカップルやファミリー層が主体になる水辺の“リゾート地”に変身する。

クリスタルヨットクラブは、高層ビル街東側、京浜運河を挟んで対岸に位置しており、場所的には橋を渡って回り込む形の立地条件。人の往来の面からするとベストロケーションとはいえない。

しかし、この施設は基本的には、多人数利用(目的志向)の宴会、パーティー、クルージング客を対象にしているので、フリー客の利用は限られる。

地域には五〇店以上もの和洋中レストラン、パーティー施設、ファストフードなどが展開するので、これらレストランビジネスと差別化する意味でも、集客の的を絞っているのだ。

「この施設はヨットとクラブハウスをセットにした形で運営しておりまして、一般のレストランにはない雰囲気が訴求のポイントだと考えております。ですから、客層も不特定ではなく、ピラミッドに例えますと、真ん中から上の層、いわばミドルからアッパークラスへの訴求です」

「それとご利用形態としては、会社の接待とか、社員旅行の代わり、何かアニバーサル的な利用、個人利用では結婚記念とかグループでのパーティー、懇親会、結婚式の二次会などといったご利用です。とくにクルージングにおきましては、先行き大型客船でのご旅行を楽しまれるための“入門編”として、ご利用していただければと考えております」((株)クリスタルヨットクラブ営業部営業企画チーム田中理恵チーム長)

クリスタルヨットクラブは会社設立八年目を迎える。国内最大の開運会社日本郵船一〇〇%の子会社で、東京湾専用クルーザー「レディクリスタル号」(三四六t)一隻を所有、クルーズビジネスを展開しているわけだ。

親会社日本郵船は例のクリスタルシンフォニーやクリスタルハーモニー、飛鳥などの大型客船を運航させ、世界一周やカリブ、地中海などのクルーズ事業を推進している。これに比べれば、東京湾クルーズは“舟遊び”程度の小さいクルーズ事業ということになる。

しかし、規模は小さいが、陸上のクラブハウスと連動させて多様な営業メニューを打ち出しており、生産性は高い。

「小さい船ですし、航路も狭い範囲に限られていますが、それでもクルージングは初めてという人は多いのです。水上バスのように気軽にというわけにはいきませんが、会社利用の宴会、パーティー、ウエディングなどと多様な販促活動を展開しておりまして、業績、収益面ではいい結果を出しているのではと自負しております」((株)クリスタルヨットクラブ坪井光男社長)

昨年度実績で延べ三万人の集客、売上高六億五〇〇〇万円。集客、売上げともに前年比一〇〇%をクリアしている。

粗利は不明だが、料飲コストは三〇%以下に抑えているので、収益は十分に確保できているようだ。

売上げはクラブハウス七割、クルーズ三割のウエート。しかし、これは両者が補完し合い、一体化した施設展開になっているので、切り離した考えのものではない。

売上げのウエートは小さいが、むしろクルーズが強い集客装置となって、施設のイメージを高め、安定した実績を出してきているということだ(営業部)。

社名、施設名に「クラブ」を冠しているが、メンバーシップ制をとっているわけではない。クラブハウス(レストラン、バーラウンジ)に限っていえば、フリー客の利用も可能だ。クルーズについては予約制になっている(乗船希望日の二ヵ月前から)。

施設のオープンがバブル経済ピーク時であったので、当時は″高値志向〓に乗ったバブル経済のあだ花と見られていたが、クルーズビジネスに対する確固たる考え方で顧客を開拓、現在では安定した事業の推移をみせている。

顧客(年齢層)は三〇代の中堅ビジネスマンが主体になるが、クルーズメニューによって客層が異なってくる。ランチクルーズは二〇~三〇代の女性(主婦)、カクテルクルーズが二〇代後半の若いビジネスマンやOL、ディナークルーズが三〇~四〇代の会社接待、宴会客など。

これら定番のクルーズメニューに加えては、ウエディングクルーズがあるわけだが、これはDMと自社の外商チームに加え、ホテル、式場、旅行代理店、カード会社などを通じて販促を行い、集客の成果を上げている。

ウエディングクルーズは、春秋がハイシーズンになるが、年間当たり約一三〇組の利用と比較的多い数をみせている。

クルージングは、京浜運河(東品川)を基地(プライベートピア)に、品川埠頭沖や青海、若洲海浜公園沖などを航路として、「ランチクルーズ」「カクテルクルーズ」「ディナークルーズ」の三コースを定番にしている。

これらのコース以外には8月の花火シーズンに、横浜や船橋方面に臨時のクルージングも企画、1、2月のオフシーズンを除けば、安定した集客力をみせている。

クルーズはもちろん、荒天や天候不順の時は運休になる。料理はフランス料理で、これはフランスで修業を積んだ野中直器(四〇)料理長が担当。アラカルトから正餐コースメニューまでを提供している。夜の客単価は一人平均七五〇〇円。

◆クルーズウエディング基本料金(二時間)

・運行時間帯/ランチ午前11時30分~午後1時30分、アフタヌーン午後3時~5時、ディナー午後6時30分~8時30分

・定員/着席五〇人、立食一二〇人

・プラン名・料金(五〇人の場合)/A=一七五万円(一人二万八〇〇〇円)、B=一五五万円(同二万五〇〇〇円)、C=一三五万円(同二万一〇〇〇円)

<料金は貸し切り運航料、乗船料、料理、飲み物、税・サービス料込み>

◆料理(例)

<前菜>ホタテ貝のタルタルサーモン巻き、マスの卵添え、またはキャビア添え(二四〇〇円)▽タラバガニのサラダ、アボカド包み(一七〇〇円)▽小エビ、イカ、タコ入り、アーティチョークのクープサラダ(一二〇〇円)▽エスカルゴとキノコのパート包み焼き、サラダ添え(一二〇〇円)▽カラスミのカッペリーニ(温製、一二〇〇円)

<魚介料理>本日のお魚料理(一八〇〇円)▽スズキの香草風味焼き、ハマグリのリゾット添え(二二〇〇円)▽ホタテ貝のア・ラ・ナージュ、粒マスタード風味(二二〇〇円)▽ボタンエビの天火焼き、バジリックソース(二二〇〇円)▽オマールエビの殻付きポワレ、プロヴァンス風スープ仕立て(二二〇〇円)

<肉料理>伊達鶏もも肉と小野菜のパイ被せ焼き(二二〇〇円)▽ウズラの詰め物のコンフィ、甘いニンニクのピュレ添え(二二〇〇円)▽子鴨胸肉のエギュイット、クルミオイル風味(二二〇〇円)▽子羊背肉のロースト、カポナータとゴルゴンゾラのコロッケ(二二〇〇円)▽子牛肉と野菜のカイエット風、あみがさ茸のクリーム添え(二二〇〇円)▽ディナーコース料理=前菜、魚介料理、肉料理、デザート、コーヒー(四八〇〇円から)

◆クルーズ料金

・ランチクルーズ(正午~午後1時30分)大人八一五〇円、子ども五一〇〇円、幼児三〇六〇円(定員六〇人、コース料理、飲み物、乗船料、税、サービス料込み)

・ディナークルーズ(午後6時30分~8時30分)大人一万七三二〇円、子ども一万三二六〇円、幼児一万〇二〇〇円(同)

・カクテルクルーズ(午後9時~10時30分)大人男性七一五〇円、女性四一〇〇円(カナッペ、飲み物、乗船料、税、サービス料込み)

・スターライトプラン(午後7時~9時)=クラブハウス「オセアノート」での食事とカクテルクルーズのセット。大人男性一万二〇〇〇円、女性一万一〇〇〇円

<大人一二歳以上、子ども六~一一歳、幼児〇~五歳>

◆施設データ

・店名/「クリスタルヨットクラブ」

・経営主体/(株)クリスタルヨットクラブ(本社=東京・品川、坪井光男社長、日本郵船一〇〇%出資子会社)

・所在地/東京都品川区東品川五-九-一六(電話03・3472・8733)

・オープン/一九九〇年(平成2年)5月

・支配人/田村健一

・施設構成/クリスタルベイクルーズ「レディクリスタル」(三四六t)=船内一F個室「クリスタルキャビン」、一二席、同メーンダイニング「パトリシウス」五六席、船内二Fラウンジ「レジーナ」四五席

クラブハウス=レストラン「オセアノート」店内五〇席、テラス四〇席、バンケットル ーム「ミレディ」着席五〇、立食九〇人、個室「クラブルーム」着席一六、立食二五~ 三〇人

・年商/六億五〇〇〇万円(クラブハウス七割、クルージング三割)

・営業時間/クラブハウス=ランチタイム午前11時30分~午後2時、ディナー午後6時~9時

クルージング=ランチクルーズ正午~1時30分、ディナークルーズ午後6時30分~8 時30分、カクテルクルーズ午後9時~10時30分、無休

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