喫茶特集:業態特化を牽引する有力チェーン ドトールコーヒー
街中から喫茶店が消えはじめて久しい。喫茶市場は店舗数、売上げともに減少傾向が続いている。これは旧態依然とした喫茶経営、個性のない店、老朽化した店舗などの淘汰が進んでいることが大きな要因だ。
(財)外食産業総合調査研究センターのデータによると、この市場規模は平成6年一兆四一九〇億円、平成7年一兆三五八〇億円、平成8年一兆三五六〇億円。店舗数は平成元年一三万三〇〇〇店、平成4年一一万五〇〇〇店となっている。また、(社)日本フードサービス協会が発表した「九七年外食産業市場動向調査」による会員会社の既存店の売上げにおいても、喫茶分野は前年比一・八%減と報告している。
結論的にいえば、喫茶業界は先細りにあるということだが、しかし、これは喫茶ビジネスが消滅してしまうということを意味しているのではない。生産性の高いチェーンビジネス、個性の主張がある店などは集客力を発揮し生き残る。優勝劣敗の競争原理。市場が成熟化し、消費者の選択の幅が広がれば、魅力、特色のない店は消えていくしかないという構図にあるのだ。
そこで今回は、喫茶業態の業態特化を牽引する有力チェーンの動向を探った。
ドトールコーヒーは、FFスタイル“一八〇円コーヒー”のパイオニアだが、四、五年前から、スタンドオンリーからテーブル席を設けたオーソドックスな店舗出店に切り替えている。店が大きくなるので、投資がかさむことになるが、客のメンタルを無視した店の論理、都合だけの効率追求だけでは客数はとれないので、時代の消費マインドに合わせているということだ。
ポストバブル時代の消費マインドは大きく変化している。マニュアル志向の似たような業態、店が増えてきたため、消費者は値ごろ感とともに、手作り感覚と温もりを求めている。
いわば古典的なもの、オーソドックスなもの、居心地よさへの回帰だ。ドトールはこういった消費マインドを捉えて、「客の満足度第一」「やすらぎと活力の提供」をスローガンに、温かみのある店舗運営を展開してきているのだ。
ドトールはスタンドコーヒーの「ドトールコーヒーショップ」を軸に、「カフェコロラド」「エクセシオールカフェ」「カフェテレジア」「マウカメドウズ」(コナコーヒーガーデンズ)など五つの喫茶業態を展開、多様な喫茶ニーズに対応している。
一八〇円のFFスタイルから一杯が一〇〇〇円の高級喫茶まで、全方位の喫茶ビジネスを展開しているというわけだが、ドトール本体の活性化に加えて、「パリの小粋なデザートカフェ」をコンセプトにしたエクセシオールカフェの展開にも意欲的だ。
この業態は若い女性を主力ターゲットにしており、コーヒーほか女性が好むデザートや手作りデニッシュなどを導入、また、店舗もリゾート感覚の明るい内装で、女性の感性にフィットしている。
価格はブレンド、カフェオレ、カプチーノ、エスプレッソ、紅茶、フレッシュジュースなどが三五〇円。デザート、ケーキが四五〇~六〇〇円前後。デニッシュ類が一三〇円前後。客単価七〇〇~七五〇円で、新宿店(六三坪、一〇〇席)の場合は月商二〇〇〇万円と好成績を上げている。
店は新宿のほか、池袋、恵比寿に出店。この後、物件が確保できれば、意欲的に店を出していく考えで、ここ二、三ヵ月内に四号店目をオープンする計画。