で・き・る現場監督:ばんどう太郎総本店店長・岡野英樹さん

1998.07.06 155号 15面

(株)坂東太郎入社五年の岡野さんは、一年目に下館店主任、翌年に小山店店長代理、その一年半後に小山五〇号店店長、昨年11月からはグループ中核をなす総本店店長と、いわゆる出世街道をばく進してきた。小山店以降月商二〇〇〇万円を弾き出す店舗のリーダーであり続けながら、物腰の低さとスマートな笑顔は「やさしい兄貴」という印象である。

「実は、はじめは外食業界でこんなに本気でやるつもりはなかったんですよ」と岡野氏は笑う。(株)坂東太郎に入る以前にすし店、ファミリーレストランなど外食店を何店か渡り歩いていたが、「遊んでいた」時期もあり、仕事に本腰は入っていなかったという。ところが縁あってこの会社に入社し、青谷洋治社長の「単純なことでも本気でやっているところ」に強い印象を受ける。

「社長は『一番が好き』とよくいうのですが、これは売上げが一番ということではなく、『あいさつが一番』『笑顔が一番』など、ちょっとしたことを指しているんです。こんなささいなことも真剣にやるのが大事という考えは、それまで『二番でも三番でも気楽だからいいや』と思っていた自分にはなかったんです」

この発想が岡野氏を動かし、以後、氏の働く姿となっていく。

スタッフへの対応にもそれは生かされ、それぞれのもっている力を最大限に引き出すことに心をくだく。例えば、各スタッフに「やればできる」目標を自ら掲げさせ、それを達成する喜びを実感してもらうこともひとつ。

仕事は各自が自主は判断で

「アルバイトのひとりが『感謝される接客』を目標に出したとします。お茶を出すタイミングを図り、心をこめて接客し、そして狙いどおりにお客さまに『ありがとう』といわれた時、その達成感、喜びは大きいですよ。そんな感動の積み重ねが、仕事の楽しさや働く意欲につながります。これが、『こうしなさい』と命令された仕事では、しょせん機械的にこなすだけで終わってしまいますし、お客さまもそれを敏感に感じとるものなんですね」

また、各自が仕事に主体的に取り組めるよう、細かい口出しはせず、ある程度自由に仕事をさせるのが岡野流。

「業者への資材の注文、お客さまの予約応対など、いちいち店長に聞いていたのではスピードにも欠けますから、社員クラスにはどんどんまかせています。もちろんミスの出ないよう、できる部分はマニュアル化し、後で必ず報告させますが」

トップの視点で考え行動を

仮に失敗したとしても、お客さまに迷惑がかかる場合でなければ、なるべく各自に対応策を考えさせ、アフターケアまで体験させる。責任感をもたせることで自然とトップの視点で考え、行動することが身についていく。

そんなスタッフが多くなれば仕事はスムーズに流れるし、何よりもチームワークが強まる。こうした岡野店長の考えのもとで育ったパートさんが、やる気を出して社員となり、ついには次長を経て現在はみごと店長になった人もいる。

むろん個人個人で能力差はある。そんな時は、できないことをたしなめるのではなく、まず一生懸命やる姿を評価していくという。何ごともまずはプラスすることから。いきいきと働くスタッフの原動力はこんなところにもありそうだ。

◆おかの・ひでき(ばんどう太郎総本店店長)=昭和42年茨城県出身の三二歳。昨年10月に社内恋愛で結婚したばかり。週一回の休日は奥さまと買い物などで過ごす。この夏は待望の二世誕生の予定。公私ともに充実しつつもあわただしい日々のため、「ゆっくり考える時間をつくる」のが目標とか。勤務時間は午前9~午後10時。

◆(株)坂東太郎(本部=茨城県猿島郡総和町高野五四〇-三、電話0280・93・0180)一九八六年11月設立。店舗数「ばんどう太郎」七店舗、「かつ太郎」九店舗、ほか三店舗を展開する郊外型和食チェーン企業。従業員四〇〇人(社員一〇〇人)。年商二三億円。

◆ばんどう太郎総本店(茨城県猿島郡長井戸親孝行通り二九七-一、電話0280・87・3016)店舗面積八五坪、一四六席。カップル、ファミリーが中心。駐車場台数五〇。従業員は社員七人、パート一一人、アルバイト一九人の計三七人。

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