新店ウォッチング ワンダーワールドレストラン「GYAO」古河店
久々に、度肝を抜くようなスケールの大型レストランが開発された。マイカルグループの外食企業、マイカルイストが展開するテーマレストラン「GYAO」(ギャオ)である。
GYAOの一号店は、今年4月、マイカルグループのショッピングセンター(SC)狭山サティに実験店という位置づけでオープンした。
今回取材したのは、9月9日に新規開業したばかりのSC古河サティへ出店したGYAOの二号店である。この古河店は約四九〇坪、三七八席という大型店で、二一四席の狭山店を上回る大規模なレストランとなっている。
GYAOのテーマとなっているのは「ジャングル」である。店内全体が人工の樹木などで密林を模したつくりになっており、客席のあちこちでライオンやゴリラ、恐竜などの大型ロボットが動き、ほえている。さらに照明や音響の演出で雷鳴や降雨を表現するなど、これまでのSC内レストランにはなかった、非常に凝った内装デザインが売り物なのだ。
店内に入って、まず驚くのはその広さである。薄暗い店内の演出もあって、隅の客席からは店内の反対側が見えないくらい広い(これは決して誇張した表現ではない)。ピーク時に満席になれば圧巻であろう。
商品の品ぞろえは、スパゲティ、カレー、ピザ、ハンバーグなどの各ジャンルが八五〇円程度から、和風の弁当型定食が一四八〇円から、ステーキ(サーロイン)が一八八〇円からと、比較的高単価なアイテムが中心であり、そのほかに花火の付いたパフェ風のデザート「ファイアーオレンジタワー」が七八〇円、フルーツコンポートが七八〇~八八〇円など、通常のファミリーレストランとは異なった「ハレ」の食事を意識した商品が並ぶ。
また、古河店では、狭山店にはなかった物販のスペースがかなりの広さで設置され、動物のぬいぐるみや関連の雑貨なども販売している。
近年、少しでも集客力の向上につながるテナントを導入したいと考えるSCデベロッパーの多くが、圧倒的な集客力を誇る米国のテーマレストランを視察して、大型テーマレストラン業態の国内展開を待望しているが、GYAOはその期待に応える可能性を持った規模の業態である。
GYAOは、年内にさらに数店舗をオープン、チェーンとしては年間で五店舗程度の出店を計画しているという。
◆取材者の視点
実のところ、このGYAOは、エコロジーをテーマとした米国の大型テーマレストラン「レインフォレスト・カフェ」(以下R・Cと略す)にまるでそっくりなのだ。
R・Cは「世界の熱帯雨林を守ろう」という壮大なコンセプトを掲げ、実際にその売上げの一部を環境活動に寄付するなどの活動でも知られるベンチャー企業で、一号店は一九九四年に米国の巨大SC「モール・オブ・アメリカ」に出店、業態の枠組みを超えた新しいスタイルの店舗として、その後のテーマレストラン開発に大きな影響を与えた。
女性従業員による動物を使ったアトラクションを行うなど、アメリカらしい楽しさとサービス精神にあふれた営業で業績を伸ばし、現在では世界中に約二〇店舗を展開、一九九七年度の売上高は一億ドルを超えている。
筆者はロサンゼルスのR・Cに行ったことがあるが、GYAOは、本家本元のR・Cを見た方ならば、あっと驚くほど店舗のデザインが酷似している。
しかし、デザインがそっくりなだけで「エコロジー」という基本コンセプトが抜け落ちている以上、どう見てもGYAOはただのファミリーレストランであり、明確なコンセプトやオペレーション上の演出を兼ね備えたR・Cとは比ぶべくもない。
しかも、本家を越えるような優れた店舗ならまだしも、内装、商品、サービスのどれを取ってみても、イメージや雰囲気だけを流用した、本家と比べれば、かなりお粗末なものなのである。
同社は、古河店を標準としてこの業態を多店舗化すると発表しているが、これから先、引き受けなければならない「代償」が大きすぎるということはないだろうか?
◆ワンダーワールドレストラン「GYAO」古河店(マイカルイスト、茨城県古河市旭町一‐二‐一七、古河サティ内、Tel0280・31・7131)、開業=一九九八年9月9日、店舗面積=約一六〇〇平方メートル、客席数=三七八席、営業時間=午前10時~午後8時(土・日は午後9時まで)
◆筆者紹介◆ 商業環境研究所・入江直之=店舗プロデューサーとして数多くの企画、運営を手がけた後、SCの企画業務などを経て、商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく、情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の活性化・情報化支援などを幅広く手がける。