めざすは一流MISS料理人:グラデボーレ調理スタッフ・秋山たえ子さん

1999.10.04 189号 8面

何と秋山さんは中学三年と小学校五年のふたりの男の子のお母さん。家でケーキ講習会を開くほど料理好きの、ごく普通の専業主婦だった。

下の子が幼稚園に入園した七年前、知人に頼まれてコーヒー専門店のパートを始める。そこではホール兼調理を担当。日替わりランチメニューも自分で考えた。

「定食を仕込み、お客さまに運び、おいしいと残さず食べてもらったときの喜び。これはもう、自分の天職だ、と思いましたね」

好きな道に出合った秋山さんのその後の行動は着実だ。コーヒー専門店を一年ほど勤めた後、和食の店でキッチンとホールを二年経験。さらに欧風料理の店でキッチンを二年半。

そしてこの春、グラデボーレ出店の話を知り合いから聞き、小野瀬憲一社長の「女性にもどんどん仕事を任せる」方針に感動し調理スタッフの一員となった。

「これまでの調理場は女性は補助的な立場。それでも一生懸命やろうとすると、出る杭は打たれ、足を引っ張られる。だからだんだん意欲を失ってしまって」

「ここでは杭を出したら出しただけやらせてくれる。それがうれしいし、やる気もわいてくる」と秋山さん。

パート待遇でも苦労上回る充実

グラデボーレの総勢四〇人のスタッフは、四分の三が女性だ。ホールの男性は店長のみ。キッチンも二〇人のうち男性は八人。

「男性ばかりだとどこかで甘えが出てしまう。でも女性が多いと甘える気持ち自体が起きないんですね。まず自分がやらなくちゃ、になるので」と秋山さんは分析する。

店のオープン時、スタッフ全員が研修を受けた。店舗前での発声練習に始まり、オーダー取りから実際の調理、メニュー出しまでのロールプレイングと試食批評会をみっちり二週間。

「あれは厳しかったですね。いまも『あの特訓を乗り越えたから忙しくても頑張れる』とスタッフで語り草になっているんですよ」

秋山さんはいまはパート待遇。「あまり夜遅くまではできないし、日曜日ぐらいは子供といたいので」

とは言っても夕食を作りに自宅に帰り、また店にとんぼ帰り。また日曜も月に一回ぐらいしか休めないのが現状という。でも、充実感は苦労を上回る。

究極オムライスを家で100回練習

「不況でも伸びる会社は理由があるんですね。社員をやる気にさせてくれる、トップの考えが的確、などなど」

とくに感心したのが小野瀬社長の「お客さまの目でメニューを読む」力だという。例えばめんたいこスパゲティを「ぬるい」と評した。

「作る側からすれば冷たいめんたいことスパゲティを混ぜれば麺の温度が下がるのは当たり前。でも確かに中途半端な感じもある。それで混ぜるときにフライパンであおる工程を加えました」

このほか社長考案の昔ながらのナポリタンなど、若い人にも大人気だとか。

秋山さんは、売りメニューである究極オムライス(客の前でオムレツを切り開き、くるりとチキンライスを包む仕掛け)を芸術的域へ高めるために、家で一〇〇回以上も練習を重ねた。

将来は自分の店を、という夢もあるが、いまはグラデボーレで「頼りになる存在」になりたいとガッツある毎日を送っている。

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