ヒット食材パワーの徹底研究:味の素「ほんだし」
外食市場の活性化に貢献した業務用加工食品の功績を記念表彰する「業務用加工食品ヒット賞」は、本紙創刊五周年を契機に各関係団体協力のもと創設された。これまでに「和食」「洋食」「中華」「給食」の四部門で計三六製品が受賞に輝いている。これらの製品は、昨今の消費低迷のなかでも元気いっぱいだ。ではヒットの要因は何なのか。このシリーズでは、受賞ヒット製品の開発コンセプトと成功要因を徹底検証する。今回は、和食部門で受賞した「ほんだし」(味の素(株))。
一万t強規模の業務用風味調味料市場で圧倒的なシェアを誇る「ほんだし」。もっともデビューした一九七一年当時は、ほとんどの店で調理人がだしをひくのが当たり前の時代だった。
「ほんだし」は面倒な“だしとり”をプロの代わりに代行するというコンセプトで、利便性と品質を追求し開発された。しかし、こうした製品は実際に体験してもらわないと納得させられない。このため、同社の営業マンがほんだしを水溶液にして各店を訪ね、また全国で講習会を開くなど、まず認知してもらう努力を重ねたという。
その後は外食産業の伸びとともに販売量は右肩上がりで伸長。下ごしらえの手間と時間、光熱費、材料費をカットできる魅力と、プロが納得し、安心して使える内容(味、品質)であったことが、次々採用された背景にある。
特筆すべきは、製品の完成度の高さにあぐらをかかず、常に内容の向上に努め続ける同社の姿勢だろう。ほんだしブランドの主力である「ほんだし かつおだし」は、これまで数回の品質改善を経て、風味、香り、肉質感をグレードアップさせている。
原料は静岡県焼津産と鹿児島県枕崎産の荒節を使用し、熟練の職人の手により、焙乾を丁寧に繰り返し、数週間かけて丹精こめて作られた節を吟味厳選。研究・開発を積み重ねた独自の製法により、削りたての香りを作り出すのに成功している。
同社では「今後も品質向上を続けたい」(調味料・油脂事業本部調味料部)と、さらなる改善を計画中だ。
煮物や汁物を提供する和食系の店や産業給食向けに拡大してきた「ほんだし」だが、ここ一~二年はラーメンのつゆの隠し味や焼き肉のキムチの下味など、幅広い用途・メニューへのアプローチも積極的に行い、注目されている。
また顆粒の特徴を生かし、焼きおにぎりや和風パスタなど具材そのものに「まぶす、からめる」使い方も提案し、需要拡大につなげている。
沖縄料理店では伝統料理であるチャンプルー(炒め物)に、「ほんだし」の風味がよくマッチすると好評だという。
この夏、同社製品の業務用「味の素KKいりこだし」が、「ほんだし」ブランドに仲間入りした。「ほんだし いりこだし」は新製法により、いりこ(煮干イワシ)本来の風味を際立たせ、よりしっかりとした豊かな味わいを実現させている。
同時に、業務用「ほんだし こぶだし」も「ほんだし こんぶだし」に製品名を変更、製品も昆布本来の風味を生かしたものに改定されている。
現在、ほんだしブランドは「かつおだし」「こんぶだし」「いりこだし」と、「上撰『ほんだし』汁椀仕立て」の四シリーズ。
◆商品規格=「かつおだし」一キログラム箱×一〇、一キログラム袋×一二/「いりこだし」一キログラム箱×一〇/「こんぶだし」五〇〇g×一二/「上撰『ほんだし』汁椀仕立て」五〇〇g×一二