宅配ピザ特集:ディスカウント合戦に熱気

2000.02.21 198号 2面

店舗飽和化による競合激化と不況のあおりで宅配ピザ店の生き残りをかけた戦いが熾烈化している。ブーム時のビッグセールスと急速な多店舗化は夢のごとく、いまやディスカウント合戦の真っただ中にある。すでに五〇〇~一〇〇〇円引きは当たり前。“半額チケットの乱発”“一枚オーダーするとオマケにもう一枚”などキャンペーンはエスカレートするばかりだ。そんなおり、バリューセット(二枚組売り)の米国第三勢力「リトルシーザーズ」の日本進出も始動した。もはやプライスゾーンの歯止めはなきに等しい状況にある。

Lサイズ三〇〇〇円、Mサイズ二〇〇〇円を堅持してきた相場価格が乱れはじめている。定価引き下げにこそ踏み出さぬが、値引きクーポンや半額チケットの配布、サイドメニューの無料サービスなど、実質的値下げが恒常化しつつある。

店舗過密化と不況のダブルパンチに対する応急処置として、一昨年から傾向は表面化していたが、昨年、業界の雄「ドミノ・ピザ」が五〇〇~七〇〇円引きクーポンと持ち帰り一〇〇〇円引きを打ち出してから、「ついに宅配ピザ業界もディスカウント時代に突入か」との見方が走った。

値下げのパターンはクーポンチケットの配布が大半を占める。値下げの経緯については(1)競合店対策(顧客奪取抗戦型)(2)季節キャンペーンの代用(経費代用型)(3)ヘビーユーザーの開拓(薄利多売型)(4)消費者還元(パパママ型)などが入り交じる。

(1)は店舗過密化と不況対策によるもので、ライバル店のつぶし合いとも見える。(2)は新メニュー開発費や販促(ポスティング)費を削って、その余裕を値引きに転嫁するもので、悪くいえば手抜きの販促策と見える。(3)はとにかくたくさん売ろうというもので、ピザの消費拡大には役立っている。(4)は減価償却の終了した生業店が地域サービスをモットーに展開するもので、トレンドには無関係。

いずれにせよ、値引きは生き残り策の大きな潮流と化している。

発足当初から戦略的にドミノ・ピザ、ピザーラより三〇〇円前後安く提供している「ピザハット」によれば、「競合店が閉店すると確実に月商一〇〇万円以上は跳ね上がる」という。消費拡大に努めるよりも競合店を閉店に追い込んでエリアを独占した方が売上げ回復は早い、といった向きも伺える。

実際、値引き効果はとてつもなく大きく、オーダーは激増する。

「半額チケットの配布で二倍に」(ストロベリーコーンズ)、「割引クーポンとサイドメニューの無料チケットの配布で二~三倍に」(ピザーラ)、といずれも地区期間限定のスポットキャンペーンながら、予想をはるかに上回る反響を得ている。ドミノ・ピザも「割引クーポン実施で五割増。持ち帰り値引きは五倍」に達したという。

だが、オーダー激増とはいえ、値引きが起爆剤だから利益の比例はあり得ない(ドミノの持ち帰りにしても分母が低いだけ)。また、オーダーの継続にも疑問符がつくのが現状だ。

「売上げが三倍になっても利益は三~五割増ぐらい。逆にオーダーが多すぎて、スタッフの手配や配達時間に支障が生じ、クレームが増えてしまう」「また、値下げを止めると値下げ以前よりもオーダーが減ってしまうので危険」(ピザーラ)、「値下げ競争は品質低下とモラル破壊の引き金になりかねない。業界のイメージダウンが心配」(ストロベリーコーンズ)、「ディスカウント価格が定価イメージになると困る」(ドミノ・ピザ)といった声が本音のようだ(各社ともディスカウントは一時的方策とし定期継続は否定)。

しかし、「安ければもっとピザを食べたい」という、かねて叫ばれてきた潜在ニーズは今回のディスカウントによって実証されたわけで、一~二ヵ月に一度のオーダー客をヘビーユーザーととらえてきた各チェーンにとっては、消費拡大の大きな糸口を得たともいえる。

また、この期を狙い澄ましたようにバリューセット(二枚売り)の米国第三勢力のリトルシーザーズがこのほど上陸。看板替えも含めた急速な多店舗化をもくろんでいる。業界の台風の目になるのは必至だ(3面に詳細記事)。

賛否両論の絶えない業界トレンドと動向について特集する(各社トップインタビュー=4面、9~11面、動向=5~8面、その他=14~17面)。

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