絶対失敗しないための立地戦略(8) 自然の流れ“けもの道

1993.01.18 20号 9面

《重要な役割に なう飲食店街》 もう一つ、これらの「黄金回廊」で、大きな役割を果たしているのが、商店街や大型施設に張りついた“飲食店群”であることを忘れてはならない。前述したように飲食店は、回遊する魚ともいうべきたいせつな“お客様”を「溜める」という重要な要素を持っているからだ。いくら外観上立派な商店街であっても、いつもなぜか寂しく、人々が集まらない不人気な商業立地は、この“飲食店群”の未発達である場合が多い。溜まらない商業立地は絶対に繁昌しない。人々がそこに憩い、楽しみ、回遊し、滞在時間を長くさせ、懐を軽くさせ、消費金額を大きくさせている影の主役は、実は飲食店であることを肝に命じたい。

《最寄品店と 買回り品店》 さらに「黄金回廊」でのもう一つのポイントは、たいせつな回廊である商店街の構成。商店街の構成中すくなくとも三割以上が商文化度の高い買回り品店、専門店群で占められていることである。

いくら、人の集散源である駅やターミナルと、大型誘客施設、そして、それを連結する商店街が完備して、「黄金回廊」としての要因がそろっていたとしても、人々がショッピングや各種レジャーを楽しむ商文化度の高い、買回り品店や、専門店群がないことには、魚(顧客)は回遊してくれない。目的地から目的地への単純な動線となり、そこには、そぞろ歩き‐‐とでも表現すべき“回遊性”は生まれてこない。

これが、駅前とショッピングセンターを結ぶ商店街が、各種食料品店や、酒屋、文具店、雑貨屋、小間物店、電器具店、小型本屋‐‐などといった、日頃の生活と密着した、いわゆる“最寄品店”の集合では、客は回遊せず、単純な直線的動線に終わってしまい、したがって、客は「溜まる」こともせず、飲食店群も発達しない‐‐ということになる。

専門用語ではあるが、ぜひ、この“最寄品店”と“買回り品店”の違いの認識をしておきたい。極めて重要なポイントである。

「最寄品店」とは、字のごとく、生活に密着した、日ごろ必要に応じて買物をする食料品店などで代表される、アイテム数もすくない、いわば個人経営の小型店である。

これと対応しているのがブティックや、ファッション用品、宝石店、画廊‐‐などといった、何ヵ所も見て買い回る、回遊性のある「買回り品店」である。いわば専門店ともいえ、品揃えが豊富で、商品の奥行きが深く、商文化度の高い商店である。人々は一ヵ所だけ見てこと足れりという最寄品店とは対象的に、同じ商品で何ヵ所も見て回ったり、ショッピングを心から楽しめる店といえる。

この「買回り品店」が一定の割合でないことには、人々はショッピングやレジャーを楽しむことなく、商店街を目的志向のみでバイパスしてしまうため、そこにはたいせつな“回遊”という要素は生まれてこない。したがって、型だけでなく、その商業地の店舗構成、業態、業種を見極めるのもたいつせな出店のさいのマーケティング要素の一つとなるわけである。

こうした「黄金回廊」を見極め、その中でも人々が、自然の流れをつくる“けもの道”を発見し、出店することが、絶対失敗しないための立地戦略ともいえるのである。

それを見極めるためのテクニックの詳細を紹介していくのが本連載の最大の主眼でもある。

マーケティング・コンサル

タント 戸田 光雄

(㈱タック代表取締役)

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