飲食トレンド:広島で”つけ麺”がもてもて
「冷麺」というと、一般的には韓国のものか盛岡冷麺のことを指すというが、広島では冷やし中華、つけ麺を含めた総称を冷麺と呼んでいる。岩手ほどではないにしろ、冷麺全般を好んで食べる土地柄であるようだが、特にこのところ、つけ麺がブームの兆しを見せはじめた。
広島風つけ麺の特徴はまずつけだれ。中には唐辛子味噌がたっぷり入り、表面は中が見えないほどのごまが浮く。麺はストレートの中華麺。その上にのるのはチャーシューとネギ、キュウリ、ゆでたキャベツが麺を隠すほど…というのが一般的である。
「激辛」をウリにしている店が多く、一〇倍、二〇倍と好みに応じて唐辛子の量を増やす。この刺激的な味に中毒的なファンが急増。また一方で、唐辛子+ごま+たっぷり野菜という健康食の組み合わせが女性客にも支持されているようだ。
この「広島風冷麺=つけ麺」の出店ラッシュが始まったのはこの一~二年のこと。広島市の繁華街・流川通りの周辺を歩くと、六~七軒のつけ麺店を見つけることができる。
ほとんどの店が専門店で、基本的にメニューは「冷麺のみ」というケースが多いが、焼き肉店や焼き鳥店のサイドメニューとしても出るようにもなった。
現在、広島市内でこのつけ麺を味わえる店は、恐らく三〇軒以上を数えるだろう。そもそも、この「広島風冷麺」のルーツは、少なくとも三〇年以上前から存在している。
元祖といわれる「新華園」は、マスコミへの露出は一切拒否。口コミだけで行列のできる超繁盛店となった。その後も「知る人ぞ知る広島の名店」として長く愛されてきたのである。
いま、広島で起こっている「冷麺ブーム」は、この「新華園」の冷麺に魅せられて、そのスタイルを踏襲した店が生み出したものである。
今後は、ベーシックな広島風に独自の工夫を加えた、新しいスタイルのつけ麺店も登場し、広島での勢力はさらに拡大していくと予想される。また、首都圏にも広島風冷麺の進出の動きもある。徳島ラーメンほどのブームになるかどうかは未知数だが、お好み焼き、カキに続く広島第三の食文化として、今後の動向に注目しておきたい。