御意見番・話題の外食合弁企業始動:王利彰・清晃代表取締役

2000.11.06 215号 5面

各社共通の経営理念を持ち寄った、話題の合弁外食企業二社が始動した。和民、KFC、モスバーガーの共同出資によるメンテナンス企業・JRM(株)と、外食コンサルタント最大手のOGMコンサルティングを核に加盟一九九社が出資する保証企業・日本外食トラスト(株)である。前者は、店舗の清掃・メンテナンスの共有化を通じ環境リサイクルなどの社会貢献を目指すもので、後者は、優良中小企業の新規出店にかかわる家賃の支払いを保証するなど外食ベンチャーを支援するものだ。競争改め協調路線に乗り出した二社の戦略について見識者に聞いた。

外食に限らないことだが、いま不動産が非常にだぶついている。これまで「サイゼリヤ」などが他社の撤退物件をうまく活用して成功してきたが、たぶんOGMにも多くの物件が持ち込まれていると思う。共同会社設立の動機は、そうした優良物件を参加企業にあっせんできる窓口をつくろうということだろう。

外食の場合、特に借り主に合わせた建物を建てるので、なるべく長く借りてほしいから、たとえ安くても大手に貸す。OGMはいろんな業態を持っているので、大手のファミレス一社に持ちかけるよりも最適な業態が選べ、仮に失敗しても、「すかいらーく」のように環境に合わせた転換が可能だ。さらに家賃支払いも保証してくれるというなら安心して貸すだろう。

不動産の賃貸交渉では大手に価格をつり上げられ、高い家賃で失敗したチェーンの話がいくらでもある。不動産の交渉にはかなりのノウハウがいる。OGMで不動産のノウハウを構築して、大手と同じような有利な条件で借りられれば、店の採算性は格段にアップするし安定もする。

また地方で良い物件が出た場合、グループ企業同士が競合しないよう、OGMが間に入ってうまく決めればいい。会員が不満を持たないような振り分けが大きな仕事になってくるだろう。

一方「店頭公開を目指す」ことは、これまでのOGMの路線から大きく方向転換した。これはベンチャーリンクを意識したやり方だ。

二〇社の株式公開となればかなりの資金力がいる。今回の出資企業を見る限りはそこまで見えないが、本格的にベンチャーキャピタルや物流をやるのなら、商社や銀行、リース会社などのバックアップが必要だ。

共同事業というのはひとつの過渡期の段階だと思う。そこで実績を残して最終的にOGMフランチャイズチェーンになるくらいの強制力と団結力がなければ、これからはボランタリーでは生き残れない。企業は伸びれば伸びるほどお互いに競争が始まってくる。

最初は緩やかな不動産から始まり、資金、資材の調達を含めて、持ち株会社的になってくれば結束はもっと強くなる。あまり緩いとメリットがないし、株式公開後に企業は離れていってしまう。

いずれにしても、個別の企業だけではやっていけないことをはっきり象徴した。いまは榊社長のカリスマ的な求心力でグループをまとめているが、最終的にはどれだけ参加企業にメリットを与え、グループにとどまらせるかという仕組みづくりが大変な作業になると思う。

「ワタミ」らのJRMは、清掃やメンテナンスといった限定した範囲の共同会社だが、OGMの場合は、店だけではなくリースや投資に対する債務保証もしていかないと展開していかない。金融と物流をどうやって提供するかが今後の課題で、これはかなりのビッグプロジェクトになる。成功すればすごいことだ。

数千億円の規模で会社をまとめられるのはOGMぐらいだから、可能性は高いし、またOGMの最大のメリットを生かした事業といえるだろう。

◆王利彰(おう・としあき)昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務める。

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