ヒットメニュー開発講座:喫茶店のランチメニュー

2001.03.19 224号 12面

◆ヒットメニュー開発五訓

一、クセになる要素を盛り込むべし

一、得意分野をつくるべし

一、数量限定で手をかけるべし

一、セットのノウハウで売るべし

一、チョイスの要素を組み込むべし

◆ヒットメニュー開発のポイント

喫茶店のランチメニューはとかく、代わり映えがしないだの、手がかかっていないだのといった評価を受けがちだ。現実にその通りといわざるを得ないケースも多いのだが、一方では、喫茶店なのにランチメニューが人気で、ウエーティングすら出るという繁盛店もある。

喫茶店だから厨房が狭くて調理に制約があるとか、調理係の技術が問題だといった事情もわかるが、それを前提にしても、工夫次第で人気メニューは作れるはずだ。

そのための第一歩は、他の飲食店の商品のコピーからの決別だ。喫茶店のランチメニューには何のタブーもないし、セオリーもない。もっと自由自在に、自店独自の料理やスタイルを打ち出すべきだし、それでなければ食事が本業の他業種にはかなわない。個店で、それほど規模も大きくない店ならば、必要な客数も高が知れている。

膨大な客数を必要とするチェーンレストランなどとは違うのだから、もっと的を絞り込み、個性的で、他の店では食べられないようなメニューで勝負すべきだ。

もちろん、だからといって突飛なものを売れとか、単に個性を主張しただけの中身のないものを売れというのではない。

ランチタイムのニーズはあくまでも日常生活のうちでの外食なのだから、基本的にはお客が食べ慣れた要素を持たせることが重要だし、コストも相応にかけなければヒットメニューは生まれない。このベーシックポイントをきちんと押さえたうえで、ひとひねりを加えることが大切なのだ。

◆低価格メニュー開発のポイント

低価格での開発となれば、まず第一に低原価の食材の使用が前提だし、低価格で売る分、調理の効率も良いものにするのが理想。この点ではライスメニューやパスタメニューが最適だ。なかでもライスメニューは店側から見たメリットが多いうえ、調理の工夫が効くし、ボリュームもあり、実質感も強調できるのでおすすめだ。

若い客層に人気のエスニック風ライス料理を独自にアレンジしてみるのも面白いはず。

インドネシア風のナシ・ゴレンやマレーシア風のチキンライスなど、そのままメニュー化できるものも多いが、さらにトッピングを加えたり、ヌードル類とのセットにするのも一法だ。辛みは自己調整できるよう、サンバルなどを別添にして提供しよう。

ポピュラーなカレーにしても、ソースを素焼きの壷で出したり、ご飯を石釜で焼いて「石焼きカレー」にするなど、ちょっとした工夫がヒットメニューを生むポイントだ。

◆お値打ちメニュー開発のポイント

以前の喫茶店のランチでは「コーヒー」をセットにするだけでお値打ち感が訴求できたが、現在ではその神通力はない。やはり効果的なのは多品種の料理を取り合わせたグレージングタイプのメニューだ。ただ、種類を増やすために調理効率が著しく低下するのでは逆効果。

例えば三品の料理を取り合わせるならば、二品は仕込み置きをし、一品だけをオーダーで調理するといった工夫が不可欠だ。これによって、仕込み品の品切れという事態が起きるが、それはむしろ計算のうち。つまり、仕込み量によって「食数限定」を行い、店頭でも訴求することで、一種のハングリーマーケットが創造できる。「これだけの数しかない」と言われると食べたくなるのが人情というものだ。

さらに、そのうちの一品はチョイスができるといった工夫も効果的。その一品は男性と女性でかなり嗜好差の出るような料理にしておけば、そのチョイスによってお客の満足感は強まるし、ヒットの可能性も高まること受け合いだ。

◆高価格メニュー開発のポイント

ランチでの高価格メニューといっても、喫茶店であれば自ずと価格の上限がある。そのうちで、高原価の食材を使った開発を考えても、どうしても本業のレストランなどに負けてしまうはず。本格感、本物感がない分、ハンデになるのだ。

喫茶店の場合はやはりセットメニュー的な売り方をした方が、高めの価格を取りやすいだろう。もちろん、高価格に応じた実質感、お得感がベースになければだめだが、そのセットの組み合わせに意外感や他店にはないユニークさを加えることも大切だ。

ビーフシチューにライスやパンといえば何の変哲もない商品だが、ライスの代わりにオムライスやパスタをつければ十分に個性的になるし、価値観もアップする。

また、ごく普通の料理であっても、それをレギュラーサイズのデザートメニューや、ケーキなどとセットにすれば、甘いものは別腹という女性客には大いに受ける要素がある。ポピュラーなものでありながら、組み合わせの工夫次第でヒットメニューに続けることも可能といえよう。

◆業務用食材活用のポイント

喫茶店にとって業務用の加工食材の利用価値は高い。けれども、加工食材はその加工度合が高くなればなるほど、原価はアップするし、アレンジの余地も失われてしまう。例えば、冷凍ピラフは便利なものだが、具材まですべて入ったものより、ライスだけというタイプの方が、商品開発の融通性が高くなる。

カレーにしても、具材入りのソースよりも、フレークなどのルウタイプのものを使いこなした方が良い。要は自店にとって最も効率の良い加工度合の業務用食材を使うということが最大のポイントで、その加工レベルの製品から、さまざまなアレンジを加えて付加価値を高め、オリジナリティーを打ち出すことを考えるべき。

また、味のレベルアップも大切な課題だが、普通は喫茶店では使わない他業種向けの食材を活用するのも一法だ。グラスド・ヴィアンドやフォン・ド・ヴォーなどの抽出製品、冷凍のフレッシュハーブなど、喫茶店でも役に立つ製品は数多くある。少し情報網を広げ、ワンランクアップのメニューにチャレンジすることをおすすめしたい。

○取り合わせイタリアン・ランチ

●作り方 鶏もも肉をオリーブ油でソテーし、ニンニク、玉ネギを加えソテー。白ワインでフランベし、ホールトマト、チキンブイヨンを加え煮込む。ツナ、マッシュルームをバターとオリーブ油でソテー、ドライバジル、バジルの生葉みじんを加える。スパゲティ、パルメザン、ペコリノチーズを加え、調味。サーモンをソテーしホワイトシチューを作る。サフランライス、サラダとセット。

●ポイント ソース類は仕込みをしておく。

○シーフードサラダ・ランチ

●作り方 魚介類はクールブイヨンでボイルし、冷却。レタス、グリーンカールを皿に盛る。ワカメ、とさか海苔を散らす。魚介類にsの量のイタリアンドレッシングをからめてトッピング。残りのドレッシングをサラダにかける。パルメザンチーズをふり、ライプオリーブをあしらう。サフランライスを器に盛り、コロッケ、ソーセージをのせ、オーブンで焼く。コンソメスープとセット。

●ポイント 魚介類は提供直前まで冷やす。

○オムライス・コンビネーション・ランチ

●作り方 チキンライスをバターで焼いた薄焼き卵で包み、オムライスにする。オムライスを皿にのせ、バターを溶かし込んだトマトソースをかける。ロールキャベツはチキンコンソメで味がしみるまで煮る。玉ネギとマッシュルームをバターでソテーし、オヒョウを加えさらにソテーし、ホワイトソースを加え軽く煮る。器に盛り、ミックスチーズをのせてオーブンで焼き、ポテトを添える。

●ポイント オムライスは小さめのフライパンで作る。

■筆者紹介■

押野見喜八郎(おしのみ・きはちろう)/FSプランニング代表。外食企業、食品メーカーの経営・商品開発コンサルタントとして活躍中。専門の商品政策やメニュー開発指導では第一人者としての定評がある。『外食新メニュー実用百科』(日本食糧新聞社)、『ヒットメニュー全科』(商業界)、『喫茶店経営ハンドブック』(柴田書店)などの著書も多数。

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