ネスレグループ、新戦略本格始動「カフェ ネスカフェ」神戸・三ノ宮店

2001.08.20 234号 5面

さて、ネスカフェ、即インスタントコーヒーのイメージを払拭する戦略店舗となった一号店。大阪・梅田と並ぶ関西の大型商業集積地であり五つの交通機関が乗り入れる三ノ宮駅から数分の場所にあるが競合店から店サイン(看板)は控えて欲しい、という申し入れを受けているため、初めての客には分かりづらい。

しかし、全面ガラス張りの開放感のある二階建て店舗、ガラス越しに映し出されるコーポレートカラーの黒、赤を使用したロゴマークを見れば、建物自体が広告塔という印象だ。

来店客の七〇~八〇%が女性客。なかでも狙うターゲットは二〇~三〇歳。平日は狙いどおりになる。ただしランチ時間はOLの利用客が増えるため若干ぶれる。土・日・祝日も浮遊層が利用するため同様のぶれが起きる。

カップル構成は女性同士が六〇%、男女のペアが四〇%。乳児をベビーカーに乗せてくる客もいる。店内はスモークフリーのため安心感があるのだろう。

この年齢別分析は、マック、セブンイレブンが実施しているようにPOSレジ対応で行われている。男女別、年齢は四段階識別。「カフェネスカフェ クラブ」がスタートし、カードによる顧客データ集積が進めば、ピンポイントの情報発信が可能になる。

来店客数の平均は、平日四〇〇~五〇〇人、土・日・祝日は六〇〇人。ピーク時間は平日がランチタイムと午後3時から4時のコーヒータイム(休日などはこの時間帯がピークになる)。

客単価は公表していない。ただし、来店客の五〇%はコーヒーのみの注文だという。部門別の売上げ構成比はドリンク六〇%、サンドイッチ二〇%、デザート二〇%。

人気商品(売れ筋)は、コーヒーでは冬季がカフェ・オ・レ・バニラ(三〇〇円)、夏に向かうこれからの季節はメープルシロップと冷たいミルクがマッチしたアイスカナディアンブレイク(同)、冷たいストロベリーミルクと熱々のエスプレッソのレイヤーがきれいなストロベリーレイヤードラテ(三二〇円)。

サンドイッチはサーモンクリームサンド(三五〇円、定番一番人気)、オリジナルのピタパンサンド(二八〇~三二〇円)。サンドのパン生地は、基本はブラウンブレッドだがピタパンは中近東のナンに似て好評。

デザートはタルトフレーズ、アンシャンテレーズンのほかベークドチーズケーキ(三二〇円)、エスプレッソブラウニー(一八〇円)など。

三ノ宮エリアは同店周辺と駅前に客の回遊が分かれる。両ゾーンにはスターバックス、マックをはじめ十数店のコーヒー飲食店がひしめく。いかに差別化し、リピート客を増やしつづけていけるかが最大のテーマ。

店入り口左側に二階に通じる階段がある。階段踊り場に座席(約一一席)を設けているが、この場所は時として関西ローカルFM局のスタジオに変身する。ネスレがオフィシャルスポンサーになっているのがジュビロ磐田。シーズンオフのときイベントに選手が参加するときにもステージとして使用される。ガラス張りのため道路の通行人も参加できる形になっている。

一方、映画、テレビドラマのロケ地として積極的に関係者に売り込んでいるのも認知度をアップさせるためだ。また、昨秋から市バス全体を広告塔にするラッピングバスも実施している。それが時にはペリエであったり、ネスカフェエクセラ、キットカットであったりする。

フードサービスに進出かと思わせながら、実はすべてをコミュニケーションツールとしてブランド展開するネスレ。競合店だけでなくフードビジネスチャンスの拡大を狙う企業にとっても気になる存在である。

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