うまいぞ!地の野菜(39)高知県現地ルポおもしろ野菜発見「はす芋」

2002.04.01 249号 13面

「昔からリュウキュウと呼んでいたんですよ。今ははす芋といっていますが」と高芝智子さんが差し出す手の内には、一見里芋風だが青々とした芋の茎がある。

このはす芋、もとはといえば高芝さんがこの地に嫁入りした二十数年前、長く住み慣れた実家の隣のおじさんが育てていたもの三株を記念にもってきたもの。

畑の隅に植えてみたところ、一年後には元気いっぱいのはす芋でいっぱいになった。

当時、ご主人とともに後継者育成事業の一環としての補助金を借り受け、六〇〇坪の施設園芸でシシトウ、キュウリなどを栽培していた。

コメと野菜の生産時期が夏の繁忙期と重なり、考えあぐねた結果、思い切ってはす芋に切り替えてみた。

はす芋は、ジャワ、ビルマ一帯で自生し、子芋は硬くて食用にならず葉柄を野菜として食用にしていたもの。

同じ類に属する里芋は、中国南部、ヒマラヤ、東南アジアで自生していたものがインド、中国、日本へと伝播したとされる。

里芋の葉柄や葉はシュウ酸石灰を含み、えぐみがある。ところがえぐみのほとんどない品種もあり、それらの葉柄を剥皮し乾燥させたものがズイキ。似ているが芋がらは、はす芋の葉柄を乾燥させたもので両者は別物。

「たくましい芋で、実に手が掛からないんですよ」と高芝さんが紹介してくれた栽培法は‐‐。

6月に親芋から出た元気のよい子芋を定植。太陽がギラギラする7~8月は、ビニールハウスの窓、天窓すべてを全開し、六〇%カットのネットで光を遮断する。

このころ一回目の稲刈りを終了。はす芋は、芯葉と二枚の葉を残してカットし、消毒をする。

「カタツムリがつくこともありますが、ダニがつくと葉柄が軟らかくなり、シャキシャキ感もなくなるので葉の裏に消毒を噴霧します」

同時に茎を肥大させるため追肥を行う。

9月20日~10月初めにかけ、ブランド米「ひのひかり」の二回目刈り取りが始まり、この間、はす芋は太陽光と養分で日に日に大きく生長。11月中旬ごろ、畝から順次一株で一枚ずつ、常に芯葉と二枚の葉が残るよう刈り取っていく。

5月連休明けまでこうした作業を繰り返し、区画ごとに畑を空けては肥料と消毒を行い、土作りをする。

こうして畝床のできたところで順次、勢いのよい子芋を選別して植え付ける。

昨年、補助整備事業の一環として、土地区画整理が行われ、長い間慣れ親しんだ土地を離れ、新しい土に挑戦している。

「移転して二年目ですが、今までの土と違い高温障害と排水の悪さで苦戦しています。水が溜まると根腐れする恐れもあるし。土になじむには四~五年はかかるでしょう」と語る高芝さん。新しいものに挑む意欲満々の表情が頼もしい。

高知は山内一豊の逸話で知られるように、内助の功を美徳とする県民性。

「高芝さんのように元気な方が前面に出て、後に続く人を引っ張ってくれればいいのですが」と背中を押す市原利行県農林水産部園芸流通課長。

今後、こうした後押しをバックに、女性軍の活躍が期待される。

■生産・販売者=高芝智子(高知県南国市久礼田九六六、電話088・862・0077、FAXなし)

■価格=出荷先は大阪市場。三本約二〇〇gで平均価格一二〇~一三〇円。12月に露地ものが品薄になると施設栽培ものが高値となり、二〇〇~三〇〇円に値をつけることも。

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