飲食トレンド:宮城県下の農村地域で「農家レストラン」相次いでオープン

2002.08.19 258号 1面

全国的なグリーンツーリズムへの関心の高まりとともに、近年、宮城県の農村地域で「農家レストラン」のオープンが相次いでいる。地域食材の魅力を知り尽くした農業家が、畑から採ってきたばかりの野菜や地場産の食材を使い、自ら料理の腕を振るうというこの形態。地域興しや農産物への理解推進につながるばかりでなく、農業に従事する女性たちの起業活動の一つとしても、今後一層注目を集めそうだ。

宮城県の食といえば、カキやマグロ、ホヤといった海の幸が有名だが、ササニシキ、ひとめぼれなどのコメを産出していることからもわかる通り、総耕地面積一四万一八〇〇m、全農家戸数八万三七二〇戸を誇る農業県でもある(平成13年1月データ)。

宮城から首都圏の市場に出荷されている野菜も多く、それら農産物を生産する農業家自身が栽培、収穫、調理、経営を一環して手がけているのが農家レストランである。平成8年、先駆けといわれる食事処「ふみえはらはん」(小野田町)の誕生を機に、県内各地で次々とオープン。昨年、宮城県産業経済部が「みやぎの農漁家レストランガイドブック」を発行するまでのブームとなっている。

市街地を抜けた田園地帯や山すその農村に、農家レストランは存在する。のれんや看板がなければ一見「普通の民家?」と、見過ごしてしまうかもしれない。古くは使用されていた築何百年という板蔵や米蔵が、そのまま店舗となっているところも少なくない。

周辺の自然風景を楽しみつついただく創作料理や農家の伝統食は、ゆっくりとうまみを堪能する究極のスローフード。懐かしいけれど新しい「温故知新の味」といえるだろう。食材となる野菜やコメのほとんどが、無農薬、低農薬栽培のため、食の安全性に対する消費者の目が厳しくなっている今、安心、健康といった面からも注目度は高い。

手塩にかけて育てた野菜のおいしさを、生産者がじかに消費者に伝えられること。これが農家レストランの一番の魅力だろう。収穫時期や天候によりメニュー内容が変わるため、一皿一皿料理の説明に余念がない。コースは平均二〇〇〇円とランチにはやや高めの設定だが、コンセプトは儲けよりも消費者との触れ合い。完全予約制で一日ワンクールのみ営業という店も多い。またこれらのレストランには、田植えや稲刈り、野菜もぎ、果樹刈りなどの体験ができるところもあり、農山村地域において自然に親しみ、地域の人々との交流を図るグリーンツーリズムの定義に、ぴたりとはまるスタイルなのだ。

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