トップインタビュー:叙々苑代表取締役・全国焼肉協会会長・新井泰道氏
都内を拠点に高級焼き肉店「叙々苑」三三店舗を展開する(株)叙々苑。新井泰道社長は昭和51年の創業以来、無煙ロースターをいち早く導入しサイドメニューを充実させるなど、従来の焼き肉を“焼き肉会席料理”の域にまで高めてきた。矢継ぎ早に新戦略を打ち出し焼き肉市場をリードする新井社長は、このほど全国焼肉協会の会長にも就任。BSE騒動去って新たな局面に突入する焼き肉市場の動向について聞いた。
‐‐焼き肉市場の現状についてお聞かせください。
新井 全国の焼き肉店の売上げは、国内第一号のBSE感染牛が見つかる前の水準を一〇から二〇%上回るまでに回復しています。
その理由は、全頭検査などで消費者に安心感がひろまったことと、各店が騒動を機会に味や品質、サービスの向上に努力し、新メニューを積極的に取り入れたのが消費者に受け入れられたことにあります。
もともとBSE騒動自体が風評騒ぎでした。今までにも魚や野菜、鶏肉と騒がれてきて、今回はたまたま牛肉の番だったというだけです。マイナス面も大きかったが、今はどの店も危機管理体制が整い、「あとは売って売って売りまくるだけだ」と意気込みが強くなっています。
‐‐お客のニーズの動向についてお聞かせください。
新井 焼き肉店の人気のメニューが、カルビ、タンシオ、キムチであることは変わりありません。この三つのおいしさを追求し続けることが、われわれの恒久的な課題であることは間違いない。ただそれだけではお客様が飽きてしまう。この三つをよりおいしく食べられるようにするサイドメニューのニーズは増えると思います。
なかでもサラダは、焼き肉と一緒に食べると肉がいっそうおいしく感じられるだけでなく、栄養のバランスを訴求するためにも重要なメニューです。今後さらなるバリエーション展開が必要となると考えます。
ほかのものを食べてみたいというニーズに向けては、焼き肉の新メニューの提案も必要です。
今は少し前まで焼き肉店で使われることのなかった内臓部位を利用したメニューが、ヘルシーメニューとして女性に人気です。
内臓部位は原価が安く、栄養豊富で飽きのこない味つけができることから、まだまだメニュー開発の余地があります。これからは焼き肉店で牛一頭、豚一匹を食べる時代になるのだと思います。 ‐‐貴社の今後の取り組みについてお聞かせください。
新井 「焼き肉道一筋」が私のモットー。多角経営は考えず、一店一店を超繁盛店に育てあげていくのが私の経営方針です。
ただそのために他店より安く売ろうとするのではなく、一〇〇円や二〇〇円高くてもお客様に納得していただける料理とサービスを提供していきます。和洋中など他の外食業種に高級店と呼ばれるお店があるように、焼き肉店にも高級店はあってしかるべきだと思います。当社が目指すのは焼き肉を会席料理の域まで高める高級焼き肉店です。
‐‐貴社のメニュー提案についてお聞かせください。
新井 新メニューとしては、近くツボ漬けカルビを導入する予定です。
焼き肉は肉の色や品質を落とさないために「その場で味付け、その場で出す」が基本です。ツボ漬けカルビは前日に漬けるので肉の色に華やかさがなくなりますが、漬け方で店のオリジナリティーが出せるメリットがあります。とことん研究しつくした結果、当社ならではの自慢のメニューに仕上がったと自負しております。
ほかに焼き肉の食べ方として現在、味噌だれを提案してお客様に好評です。
味噌だれはお酒によくあいますから、ご飯にあう醤油だれと合わせて提供することでお客様に喜んでいただけるだけでなく、客単価アップにもつながっています。
‐‐今度、全国焼肉協会(JY)の会長に就任されましたが、抱負をお聞かせください。
新井 焼き肉で人々に幸せになってもらいたい。おいしい焼き肉を提供することでお客様に喜んで代金を支払っていただき、店は利益をあげることで従業員を幸せにする。そういう世界を確立するために尽力するつもりです。
そのためにも全国焼肉協会の加入店舗を現在の約一五〇〇店舗から、五年以内に三〇〇〇店舗まで増やしたいと考えています。
協会では個々のお店の繁盛に貢献するための料理の研究会、経営の勉強会、焼き肉業界を支える人材の育成などを行い業界の地位向上を目指して活動を行っています。
さらに加入店舗にはカードの手数料を五%から三・六%まで引き下げられるという経営に直結するメリットもあります。
これは年間で考えると協会の会費を差し引いても一店舗あたり一五万円のメリットがでる計算になります。今後、会員が増えればさらに引き下げることも可能です。ぜひ、未加入のお店はご参加いただきたい。
‐‐トレーサビリティーが問題視されていましたが。
新井 トレーサビリティーは、その内容がはっきりするにつれ、和牛のカルビ、ロースの仕入れが店の仕入れ全体の五〇%を超える店でなければ対象にならないことがわかってきました。輸入牛がほとんどの一般の焼き肉店では問題になりません。それ以上に問題となるのは輸入牛肉の関税引き上げです。こちらは焼き肉店全店が対象となるのでより切実です。
‐‐今後の焼き肉業界の展望についてお聞かせください。
新井 牛肉は味の良さ、栄養面からみても「食べものの王様」といえます。その牛肉を一番おいしく食べる方法は焼き肉店の網焼きです。
おいしくてヘルシーな食事が求められる時代にあって、焼き肉は今以上に日本の国民食として浸透していくことは間違いないでしょう。
‐‐ありがとうございました。
◆(株)叙々苑 代表取締役=新井泰道/本社所在地=東京都港区六本木四‐一二‐八、六本木今橋ビル9F、電話03・3423・2646/創業=昭和51年/会社設立=昭和59年/資本金=一〇〇〇万円/従業員数=一五〇〇人(正社員三五〇・準社員四五〇・パート七〇〇)/年商=一二一億円(昨年度実績)/店舗数=三一














