マイナス成長時代を迎えた外食業界 落ち込み目立つ客数、過当競争で売上げ減

2003.09.01 272号 2面

◆2003年問題も深刻 外食ベンチャー・ディナーレストランに影響

また、都心で深刻になってきたのが「二〇〇三年問題」だ。東京駅、六本木など相次ぐ再開発地区のビルラッシュは、飲食店の過剰問題につながった。昨年以降に開発された施設内の飲食店は、三〇〇店舗近いといわれている。来年は丸の内や日本橋一丁目、二〇〇七年には六本木防衛庁跡地などで、再開発事業の完成が控えている。

いずれもレストランはビルの有力な集客装置として誘致され、「トータルすると五万席分のレストランが都心で増殖する」と流通コンサルタントは指摘する。

この余波は付近の飲食店が被ることになり、とくにこれまで好景気だった外食ベンチャーやデザイナーズ系のディナーレストラン、有名シェフの店など、五〇〇〇円以上の客単価の店が影響を受けているとみられる。店が増えてもパイは広がらない。消費者は回遊魚のように移動するだけだ。丸ビルさえも「かつての活気はなくなった」とささやかれ、消費の流動化が始まっている。

◆元気取り戻す焼き肉店 1兆3600億円規模に復活

一方、元気なのは焼き肉店だ。5月の全店売上高は前年比六・五%増と、BSEの影響で不調だった昨年から復活してきた。

全国の焼き肉店で組織する全国焼肉協会によると、焼き肉の市場規模は二〇〇二年度で一兆一〇〇〇億~一兆三六〇〇億円に上ったという。

食堂やレストラン市場の一四%前後が焼き肉店といわれるほど一大市場に成長した。焼き肉店は食材原価も低く、料理人もいらないために人件費も抑えられるなど、出店しやすい条件がそろっており、まだ「市場規模は拡大する」と見られている。

和食ブームも引き続き健在だ。とくに個性的で値ごろ感のある新興チェーンが台頭してきた。カフェテリア方式が売り物の「まいどおおきに食堂」や串揚げ店を展開するフジオフードシステムは、関西から関東に勢力を拡大。昨年12月には上場を果たした。

年内に惣菜店も手がける計画だ。個室居酒屋の「東方見聞録」や豆腐創作料理の「月の雫」などを展開する三光マーケティングフーズはシックで落ち着いた店内と創作和食が女性の人気を集めた。今年3月に上場している。

◆新興勢力が市場を席巻 ファミレスチェーンに厳しい淘汰の波が

業態開発に出遅れた業界2位のロイヤルは、提携する大阪ガスの外食子会社が「ロイヤルホスト」から撤退し、グループ全体の一割の店舗が閉鎖した。

また新興勢力がファミレス業界を席巻、M&A(企業の買収・合併)によって業界地図を塗り替えている。牛丼「すき家」のゼンショーは「ココス」「カーサ」「ビックボーイ」を次々に買収。高田屋を展開するタスコシステムは、西洋フードシステムの赤字店舗を譲り受け、中華レストラン「暖中」に転換させている。ほかにも牛角のレインズインターナショナルが「レッドロブスター」を買収した。

ファミレスチェーンは、自社で再生の道を切り開けるか、新興勢力に飲み込まれるか、厳しい淘汰の波にさらされている。

◆ラーメンに低価格の波 讃岐うどんブームに続け!

また「一杯一〇〇円」でブレークした讃岐うどんブームに続き、ラーメン業界でも低価格ラーメンが話題を呼んでいる。福島を中心に東北を地盤とする幸楽苑は、主力の三九〇円ラーメンを引っさげ、今年2月東京に進出。「ラーメン業界のマクドナルド」を目指す同社は、さらなる価格引き下げを視野に直営で今期四〇店を出店、三年間で店舗を一四〇店から三〇〇店に拡大する計画だ。

ほかにも三九〇円ラーメンを展開するハイディ日高(埼玉市)、一八〇円ラーメンのラーメン一番本部(大阪市)なども首都圏で店舗を拡大する。

◆地盤沈下が著しいFF 客離れ加速するファミレス業態

財布のひもは固いが、飽きやすい消費者。もはや「新しい業態も三年で陳腐化する」といわれるほど、トレンドの移り変わりは速い。その中で三〇年前と変わらない旧態然とした洋風ファストフード・ファミリーレストランは、客離れが加速し、地盤沈下が著しい。値下げなどの価格戦略にも限界が見えてきた。

低価格路線が破綻したマクドナルドは、「これまでの戦略をゼロベースで見直す」(八木社長)と、新メニューの投入、店舗のリニューアルなどで巻き返しを図る。セルフカフェチェーンの大量出店で競合が増え、「マックダイニング」など、有名デザイナーを起用したカフェスタイルの高級業態にも力を入れはじめた。

ファミレス各社も、起死回生に必死だ。再生のカギとなるのが「業態転換」もしくは「低価格」の二極化。

ここ一~二年、ロードサイドに並ぶ飲食店の顔ぶれは様変わりした。不採算店を別の業態に転換し、新たな客層の掘り起こしを狙う。

最近とくに顕著なのがイタリアン。すかいらーくの「グラッチェガーデンズ」、サンデーサンの「ジョリーパスタ」、西洋フードシステムズの「パスタバールブイトーニ」、ジョナサンの「ジョナサンガーデン」などがそれ。女性に人気が高い上、パスタ・ピザなどの原価率が低く、厨房システムも身軽なため、各社とも出店を強化している。

またデニーズは、デザートやカクテルなどのメニューを強化し、外観も斬新なブルーに衣替えするなど、ファミレスのイメージを払拭した「24時間カフェ」に再生をかける。

業態転換に必要なのは、潮流に乗るスピード。そのためにもより多くの持ち駒を持った方が有利だ。最大手のすかいらーくはこれまでもカレーや惣菜店など、数多くの業態を開発し覆面で実験してきた。「ガスト」「バーミヤン」などの低価格店、イタリアン・和食の「夢庵」などの専門店といった使い分けのきく複数業態を持つことが生き残りに欠かせない。

◆地方グルメにも新鉱脈 武器は地元の食材

こうした地方チェーンの都心進出の背景には、景気低迷で地価が下落し、繁華街での出店が容易になったことが大きい。ラーメンチェーンに限らず、近年は地方の繁盛店が次々と東京に乗り込んでくる。名古屋の八丁味噌や、京都の抹茶、鹿児島の黒豚、沖縄の泡盛など、武器は地元の食材へのこだわりだ。

「地方のあの名物を食べたい」という消費者のニーズは大きい。こうした地方グルメの掘り起こしで、新たなヒットを生むこともできそうだ。

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