御意見番:レストラントレンド 榊真一郎・OGMコンサルティング常務取締役

2004.01.15 279号 4面

都心はいま商業ビルラッシュだが、そうした話題のビルの飲食店に消費者が行って気が付いたことは「どこも同じ」ということだろう。デザインや雰囲気は違って見えても、ふたを開ければ、どれも同じスターシェフ、有名デザイナー、創作料理の店ばかり。それは地方でも同じこと。

中にはクイーン・アリスの石鍋裕シェフが、料理ではなく店舗設計のプロデュースをしている店もある。これって本当に飲食店なのか? と感じる。業態的にももう飽和状態。お客さんも飽き飽きしている。こうした傾向はそろそろ終えんするだろう。

今年期待しているのは、和食のスターシェフがマネジメントする店舗の登場だ。フレンチや中華などに比べて、和食は経営者としてのカリスマが少ない。カウンター一本守ればいいという職人の世界。和食の専門料理と西洋式のサービスを融合させたグランメゾンができればブームになるだろう。

一方、そうしたブームを作りきったフレンチ・イタリアンは、世界的にもインテリアなどに行き過ぎ、サービスと料理が完全に分離してしまった傾向がある。ロブションが六本木ヒルズにカウンターの店をオープンさせたように、職人が職人らしく、料理を通じて顧客とコミュニケーションできる店に回帰していくだろう。

また注目しているのは、「有名オーナーシェフの二号店」。ここ一〇年ぐらいに独立し、メキメキ名を上げたオーナーシェフのセカンド店だ。昨年オープンした二子玉川の玉川高島屋にテナントとして入った「イレール・ドゥーブル」「文琳」などがそれ。

知る人ぞ知るというあこがれの店を、もう少し便利で敷居も低く、利用しやすい環境で体験できる。かつて巣鴨の古奈屋の二号店ができたときも、そうした熱狂的な期待があった。

オーナーにとっては、二号店は若い弟子を独立させるチャンスでもある。それが今後一〇店舗になるか、二号店だけで終わるのか分からないが、消費者としてすごく楽しみな一年だ。ビルのデベロッパーにとっても、全く新しいものは敬遠するが、一店しかない有名店はとてもチャーミング。出店条件も良いため、余裕のある経営で面白いコンセプトが期待できる。二号店はオーナーの職人としての腕だけでなく、人を使ったマネジメントや新しいアイデアにも注目している。

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