トップインタビュー:ロック・フィールド 岩田弘三代表取締役社長
(株)ロック・フィールド(神戸市東灘区、電話078・435・2800)の岩田弘三社長は、今年の食品界の見通しについて「二一世紀型食産業への転換期」を迎えたのではないかと言う。同社の事業もそれに合わせるように企業インフラを徹底整備、今年は攻めの姿勢を鮮明にしていく。その第一弾が昨年の暮れに発表した「フライ革命」だ。市場変化のスピードは速く、何が起こるか分からない。だが、中食ビジネスは食品の中のコアビジネスととらえ、同市場におけるビジネスモデルの確立にまい進する。
昨年10月に新社屋・神戸ファクトリーを竣工させたが、これはわれわれの企業理念とこれまで蓄積してきた技術を集大成したものだ。設計監理をお願いした安藤忠雄先生もわれわれの考えを明快に表現していただき、素晴らしい社屋・ファクトリーが完成したと思う。この新社屋・神戸ファクトリーをご覧いただくことで、お客さまやお取引先さまに当社の企業理念をご理解いただき、またわれわれ自身も常に理念を意識しながら仕事をしていく環境が整ったと思う。
失われた一〇年に続く、ここ数年の食品産業を振り返ると、私は二〇世紀型の産業から、二一世紀型の産業への変化が求められる中で、行き過ぎた食の欧米化、行き過ぎた食の工業化が、BSEや産地偽装などいろいろな食の問題を顕在化させてきたと考えている。
ただ私は、バブルの時期とそれに続く失われた一〇年を必ずしもマイナスばかりではなかったと考えている。高度経済成長で一気に上りつめ、バブル崩壊を迎えた後、正常な新しい時代へ変わっていくためのプロセスが、失われた一〇年であり、経済的には大きな痛みが伴ったが、時代が大きく転換するときの大きなエネルギーを蓄えた時期でもあったと思う。
当社の昨年一年間を振り返ると、これまで進めてきた基盤整備の締めくくりにしっかりと取組んだ一年であった。一昨年には、川崎市に玉川ファクトリーを竣工し、昨年の10月には、ここ神戸に新社屋・神戸ファクトリーを完成させた。これで、静岡ファクトリーを含め、生産体制については、すべてのインフラが整った。同時にブランドについてもメリハリをつけた戦略を進めてきた。
われわれの行動基準に「非常識な発想で変化を続ける企画開発集団」というフレーズがある。その成果の一つが、アールエフワンにおける「サラダ革命」ではなかったかと思う。ポテトサラダやマカロニサラダといった惣菜のサラダに対して、海藻のヒジキを使ったサラダをはじめ、それまでのサラダの常識を限りなく破って、今までにない新鮮なサラダを開発してきた。
今、このサラダ革命に続く取組みとして「フライ革命」を進めている。油で揚げるフライはカロリーが高いとか、油そのものの酸化の問題もあって家庭内調理が敬遠され、健康的なイメージも低かった。しかし、今日、料理のベースは素材のおいしさをいかに引き出すかにかかっている。その点、フライというのは、短時間で素材をおいしく包み込む優れた調理法だ。今回のフライ革命では、価格が通常油の三倍、四倍もする健康的なリセッタオイルを使用、フライ料理を健康料理として提案し、ご家庭でフライのおいしさを楽しんでいただくような取組みを進めている。
昨今、「食育」が大きな課題として取り上げられている。われわれも食育については、大きな関心を持っている。これまで、販促的には、十分に取り上げてこれなかったが、健康・安全・安心を理念とする企業として、子どもたちの食育、バランスの取れた食の大切さ、食と健康について、食にかかわる企業として、大いに情報発信をしていくことが求められていると思う。
二〇世紀の食産業は、価格訴求を前提に安価な素材にいかにコーティングして、濃い味付けをしておいしく見せるか。いわば厚化粧の食産業が王道であった。二一世紀は高品質な素材、自然な素材をいかに素材の持つ本来のおいしさ、力を引き出すか。薄化粧の食産業の時代だと考える。
今年は、第二次大戦後、六〇年という節目の年。この六〇年間の間に大きな経済発展があり、日本は世界中の食文化をはじめ異文化をどん欲に飲み込んできた。この間、かつての三世代家族が同居し、おのおのが役割分担した時代から、女性の社会進出の高まりや少子高齢化が進み、定年年齢の延長も真剣に論じられるなど人々のライフスタイルはもとより、生活者の求める価値観も大きく変化している。まもなく団塊世代がリタイアを始め、これからの日本では、古くて懐かしい伝統的な「和」回帰が始まろうとしている。その大きなうねりの中で、これまでインプットされた世界中の食文化をどう伝統的な日本の食文化と融合させていくのか。新しい日本発の健康的な食を発信していく時期ではないかと思う。
中食マーケットも食の外部化が一層高まる中で、大きく市場を拡大し、これからは、中食がコアとなって、中食と内食の間、中食と外食の間など垣根を超えた取組みも始まっている。大手流通や素材メーカー、外食からの新規参入をはじめ、大競合がはじまる一方で、中食市場の一層の拡大が期待される。当社は、昨年までに完成させたインフラを生かして、中食のビジネスモデルの確立に全力で取組んでいきたいと考えている。
(文責・中村雅彦)
●企業メモ
◆(株)ロック・フィールド/本社所在地=神戸市東灘区魚崎浜町一五番地二/事業内容=惣菜の製造・販売/設立=昭和47年6月8日/代表取締役社長=岩田弘三/資本金=五五億四四〇〇万円/売上高=三九五億七一〇〇万円(平成16年4月期)/経常利益=一七億五六〇〇万円(同)/従業員数=七二九人(同)/展開ブランド=「RF1」「神戸コロッケ」「融合」「三日坊主」「そうざいや地球健康家族」「ベジテリア」
◆「ロック・フィールド」という社名の由来=創業者であり代表取締役社長である岩田弘三の姓「岩田」を、岩=rock 田=fieldと訳したところから付けた社名。若きころの岩田がアメリカを訪れた際、大財閥の「ロック・フェラー」からひらめいてつけた。