赤・白・・・カラフルなカレー戦争 バラエティ化する薬味・トッピング

1993.06.21 30号 15面

いま、食材の売れ筋としてカレー製品と冷食のコロッケ製品をあげる人が多い。「こんなご時世だからかもしれない」と言う人もいる。それじゃ好況の特はどうだったのかというと、消費は減ることなく、やはり売れた。一時の急カーブはないものの。つまりは好・不況に関係なく売れているのがカレーライスといえそうだ。知らない土地へ行って、さて何を食べようかな、といろいろ思案するが、やはり無難なところカレーライスを注文してしまうというのが落ちである。という具合に、どこででも安心して食べられるのがカレーライスである。

そのカレーライスもいろいろとバラエティーに富んできている。特に若者人気のエスニック調のカレーライスが流行っている。それだけに新しいスパイスも加わって、カレーライスが演出されている。

これまでのスパイスは、カレー粉、ソースの原料としての延長線上にあった。ところが、エスニック料理のブームがグルメとともにやってきた。アジア料理や食材もやってきたのだ。で、カレーライスもインド料理、タイ料理、インドネシア料理、ベトナム料理などお国自慢のカレーメニューが出揃った。同時に、これまでとは違ったスパイスもレストランやエスニック専門店に入ってきた。コリアンダーなどの香葉やホールものの生スパイスである。そうした新しいスパイスやハーブが、カレーソースの新しい味、オリジナル料理の隠し味として使われ出している。それとともに、スパイス柵の飾りものとされていたホールものなどなじみのない製品も売れ出している。

昨年は、ファミリーレストランの夏は、辛いカレーのタイカレーを前面に出した商戦が展開された。赤カレー、白カレーと色とりどりのカレー戦争が行われた。そして、若者の間に、カレーライスは盛り上がった。

いま都内を中心とした首都圏にエスニック料理、なかでもタイ料理を中心とする東南アジア料理店が急増している。一説によると六五〇軒とも、七〇〇軒ともいわれている。その七〇%までが、アジア各国の特徴を生かしたエスニックのミックス版メニューであるという。つまり無国籍版料理だという。多いのは、タイ料理食材によるベトナム風料理など。場所によっては屋台の店までも出現して、若者受けしているようだ。

エスニック料理の主流をなしているのが、カレー料理であるわけだが、新・食材の出現はカレーライスの薬味、トッピングにも利用拡大、人気メニューともなっている。

「最近のカレーライスのトッピング傾向は、非常にバラエティーに富んでいる。カレーソースには酸味がとても相性がいいんです。昔、カレーライスにウスターソースをかけて食べていたが、それも理屈にあっている。カレーには酸味が必要なんです。その酸味のために、リンゴを入れたり、レモンを絞って入れる。タイ料理やインド料理には、レモンライムを絞って素材に加えたり、ソースに入れたりします。そして、トッピングにも使います」というのは、本紙連載・エスニック食材講座を執筆しているスパイス研究家・朝岡和子さん。

「例えば、タマリンドのペーストがあります。タマリンドのペーストはカレーの中に入れる酸味として存在しているわけです。アジアの国によっては、これをジュースにして召し上がっているところもあります。酸味は食欲を増進させるとか、そそるという働きがありますね。そういった意味からもカレーにタマリンドを使うわけですが、それは薬味としても本当に価値の高いものなんです。カラメル状ですから、皿にとっていただくわけですが、梅エキスとまではいかないが、なんとなくそういった雰囲気をもっている」という。

このタマリンドペーストや右表にあるビンダルーペーストなど東南アジア系エスニック料理によって、カレー料理のバリエーションが広がったわけだが、同時に従来からの薬味である福神漬、ラッキョウ、紅ショウガやタタミイワシやアーモンドなどのナッツ類にプラスアルファされてのトッピング、薬味としても広がりをみせている。

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