この一品が客を呼ぶ冷やし中華麺編・堺:「龍旗信」塩冷麺
大阪人の好みに合わせた、あっさり塩ラーメンの専門店。うまみたっぷりだが塩辛くない、やさしい味わいのスープが人気で、カップルや女性客が多く集まる。このスープを使った塩冷麺は、ほかではちょっとお目にかかれない味。「実は、普通の冷麺は苦手なんです」という店主の松原龍司さんが、試行錯誤の上に作った自慢のメニューだ。
ラーメン、つけ麺など、この店の麺類はすべて塩ベース。「堺ラーメンと称する通り、“大阪の塩ラーメン”がコンセプト。大阪の人が、明日も明後日も食べたくなる。そんなラーメンを作りたかった」と松原さん。
季節メニューの塩冷麺は、透き通ったスープに、ズワイガニや水ナス、水菜などの具がのり、ボリュームたっぷり。彩りの美しさも魅力だ。
各麺共通のスープは、鶏や野菜のほか、天然のムール貝や陰干ししたゴボウなどを合わせたもの。決め手の塩は、ナトリウムが少なく、カリウムなどが豊富な、中国産の低納塩を使う。
「塩分をおさえ、いかにうまみで持っていくかが、塩ラーメンの難しいところ。さらに、大阪人は臭みにもうるさい。“とがったところ”がなく、なおかつ多くの材料から出るうまみを感じさせるスープを目指しました」
塩冷麺用には、みりんなどの甘みや少量の酢をプラス。
冷蔵庫で寝かせることで脂が取れ、味わいもまろやかに。飲んでも、塩辛さや酸っぱさを感じない。
麺は、油分の少ないスープによく合う、細ストレート麺を使用。1・5玉とたっぷりの量だが、女性客でもぺろりと平らげてしまうとか。
具には、醤油やごま油などをブレンドしたドレッシングを合わせる。生でも甘みたっぷりの泉州産水ナスなど、食材はできるだけ近場のものを使う。販売時期も「4月末から、地域の祭りが終わる9月ごろまで」と徹底してローカル志向。地元の人の心をつかみ、リピート率も高くなっている。
◆龍旗信(堺市浜寺石津町西4‐1‐19、電話072・245・2040)営業時間=午前11時30分~午後2時、6時~翌2時、第3月曜休/席数=14席/1日食数=40~50食
◆食材の決め手:(株)雑賀豊吉商店(和歌山県和歌山市)「雑賀吟醸酢」・(株)日食(大阪市北区)「バルサミコビネガー」
塩冷麺のスープに酸味を添えているのは2種類の酢。雑賀豊吉商店の山田錦大吟醸酒粕を100%使用した「雑賀 吟醸酢」と、イタリア産の「バルサミコビネガー」(輸入元・日食)。いずれもフルーティーな風味が愛用の理由。
「普通の酢だと酸っぱくなってしまうのですが、この2つはまろやかさが違います」と松原さん。バルサミコは、デザートに使われているのを食べて、ヒントを得たという。