原油高騰で続く原料高 包材メーカーの収益を圧迫
昨年から続く原油価格の高騰が、日本の包装産業に暗い影を落としている。原油高に伴い、食品包装フィルムやプラスチック製品などの主原料となるナフサ価格も上昇。原料メーカーは汎用樹脂の値上げを断行し、採算確保に向けて動き出している。一方、川下での価格転嫁は依然進まず、値上がり分を吸収できない包材メーカーが続出、大きな打撃を受けている。特に中小企業からは「適正な価格転嫁ができなければ製品の安定供給は不可能」との声も聞かれ、最終財など川下価格への波及が遅れる間の企業収益の圧迫が懸念されている。
石油化学工業協会の笠原隆男氏は「ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の原油価格は史上最高値圏の50ドル台で推移、ナフサ価格も高値安定で推移していく」と予想する。今年1~3月期の国産ナフサの平均価格は、1キロリットル当たり3万3200円。これは前年同期比約20%増で、今後は3万7000円台に上がると予想する専門家もいる。
包装業界関係者は「原料価格の値上がり分をコスト削減で吸収してきたがもう限界。安定した原料確保と供給継続のためには、お客さまに適正価格への改定をお願いせざるを得ない」と訴える。
しかし、末端のデフレ傾向が収まる気配はない。原燃料価格の上昇とデフレ圧力の間で、競争力の弱い企業の淘汰が進んでいる。
全日本プラスチック製品工業連合会の調査によると、2004年度に3割以内の原料値上げを受け入れた包材メーカーは216社(回答252社)。中には6割の値上げを受け入れざるを得ない企業も3社あった。さらに163社(回答258社)は、今年に入ってからも原料メーカーの値上げ要請を受けている。
また、同連合会に所属する包装関連メーカーの8割以上は、昨年に比べて材料調達単価が上がったと回答。今期の業績も2割近くが悪化すると答えている。これらは従業員数の少ない企業ほど顕著で、苦しい台所事情を示している。高橋廣常任理事は「安価な中国製品の輸入や納入先からの値下げ要求で、川下に行けば行くほど製品への価格転嫁交渉は難航している」と苦言を呈する。
各加工メーカーでは、ナフサの代替として、安価な液化石油ガス(LPG)やコンデンセート(NGL)を使用するなど、原料の多様化にも着手。さらなるコスト削減を強いられている。今後も納入先と価格面での折衝を重ねていく意向だが、交渉は長期化する見通しだ。
※ナフサ=原油から精製され、食品トレー、包装フィルム、PET容器を形成するポリエチレンやポリプロピレンなどの原料となる。
◆解説 WTI原油価格
国際市場における原油価格は、各消費地域の需給を反映して決定される。中でも国際的に原油価格を先導しているのが北米市場。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)での原油先物相場だ。そのNYMEXでの基準銘柄が米国産ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油。米国テキサス州で産出される硫黄分が少なく、ガソリン精製に適した軽質油だ。実際の生産量は1日当たり80万バレル程度。しかし、日々の取引量は1億バレル以上に達する。これは日量8000万バレルといわれる世界の原油供給量を楽に超える数字だ。
WTIの原油価格は、90年代は1バレル20ドル前後で安定的に推移。その後はおおむね30ドル前後の水準で売買されていたが、04年に入り急速に上昇。今年4月には一時1バレル58ドル台の最高値を記録した。需給状況の変化や在庫の増減、OPECの発言を受け、6日現在は55ドル台で推移している。