中国にファストフードの夜明け KFCなど一斉に出店、人気沸騰

1992.05.18 4号 21面

中国4000年の歴史のなかで、いま“食”の分野で最も注目すべき全く新しい大きな変革が生じつつある。それは米国式のファースト・フード・サービスが導入され、中国人に大歓迎されているということである。■小平の改革解放路線もあって、その勢いにはまさにすさまじい“時代の流れ”といったものを感じる。日本で昭和45年に銀座に進出したマクドナルドが、新しい外食時代の幕開けとなったのと同じように、中国にも黎明期が到来したことを思わせるものがある。この報告は日本食糧新聞社の中国視察団(4月10~19日)のホットな最新ニュースである。 (伊奈記者)

写真右は、上海に開店したケンタッキー・フライドチキンの店頭風景である。この行列、人だかりが人気の何よりの証拠である。ここは上海名物の精進料理の功徳林素菜館から約四〇〇m離れた南京西路にあり、まさに上海新名所の趣きがある。この行列ではファースト・フードとしてのスピード感は味わえないが、新しい異国の食文化と味覚が中国の人達に新しい目覚めと満足を呼んでいるようである。

ケンタッキーフライド・チキンは、早くからまず北京に進出し、全世界のなかで最高の売上げを誇っていたが、その後はモスクワにナンバーワンの座を奪われ、現在二位にある。あとは上海、香港に展開しているが、次第に各地に出店していく計画という。

ファーストフードの早くて、安くて、うまいの三条件のうち、中国人にとっては決して安くも、早くもないが、中国の若者は、これまでの中国風にないスパイシーのところを好んで「うまい」と熱烈歓迎しているようだ。

この背景には、天安門事件のあと、ここ二、三年で経済が改善され、所得が増え、生活が豊かになっていることである。

北京に写真左上の「国際快餐城」が出現した。所は北京一番の繁華街の玉府井大街、北京の銀座といわれる目抜きの東風市場にある東来順(回教徒の丁子清が開業した羊の肉のシャブシャブ料理の店・代表的な名物料理屋)に並んだ場所に建設された複合食堂ビルである。

ここのオープンは3月18日、われわれ日本食糧新聞社の訪中視察団の到着からわずか二〇日余り前のことである。入店しているのはハンバーガーのカースジュニア、フライドチキンのゴールデンスピリット、それと日本の牛丼の吉野家、アイスクリームのデイリークインの四社。

そのなかでわずか一ヵ月足らずの間に、断然、頭角を現わして好評なのが『日本吉野家』である。それは牛丼が中国人の馴染んでいる掛け飯に近いものである親しみに加え、中国は牛肉が安いので肉質がよく、肉量が多く、さらに赤ワインの隠し味も受けて、“うまい”という評判である。それに加えて店員のサービスがいい。

値段は牛丼六・五元、上天丼七・八元で、一般には二元あれば上等な食事のできる中国では、むしろ高い価格だが、若者、家族連れで吉野家はお客でいっぱいである。

四社揃っての出店だけに各店の客の入りがひと目で分かる。牛丼食べたあとの二・五元のアイスクリームといった食事も、少しゼイタクながら中国に定着し始めているようだ。

また、4月23日にマクドナルド北京店がオープンしたが、ここの店員募集に二万五〇〇〇人が応募したと、中国香港通信社電が報じている。同店は客席七〇〇とその規模は世界一。応募者は年齢一〇代から五〇歳代の国営企業労働者、学生、主婦など多彩な顔ぶれが集まり、ここにも人気の高さがうかがえる。

このようにケンタッキーフライドチキン、マクドナルド、デイリークイン、ピザハットなど米国のファースト・フードが中国に進出し、米国と同じような激しい販売戦を展開している。

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