’94外食産業業種・業態別展望 喫茶・スナック=淘汰される個性のない店

1994.01.03 43号 10面

喫茶店が年を追って街から消えている。とくに個性のない個店は淘汰される憂き目にあっている。一杯四〇〇円前後のコーヒーを提供するのに一、二時間もねばられては、収益は上がらない。

しかし、コーヒーはファストフードショップをはじめファミリーレストラン、コンビニエンスストア、自販機などでも提供されており、この面での競合もある。

個性も付加価値も訴求していない店というのであれば、淘汰されるのは必然的な成りゆきだ。

喫茶店は昭和57年の一六万店をピークに、同61年に一五万店、平成元年一三万三〇〇〇店、同4年一一万五〇〇〇店と減少し続けており、データ的にも明らかに店数が減っていることを証明している。

しかし、店舗数が減少したというものの、喫茶ニーズは根強くあり、市場が消えてなくなるということではない。

外食総研の調べによると、平成4年の市場規模は一兆四八三〇億円強(前年比〇・六%減)で、外食産業全体(二六兆円)の六%近くを占めている。

店舗数が減ってきている分マーケットの規模もスケールダウンするということになるわけだが、しかし、前述したように市場が消えていくということではない。

現にここ数年来ドトールコーヒーやプロントに代表されるように、専門チェーンが出店を活発化しており、独自のマーケットを創造している。

要は経営の問題なのだ。つまり、消費者の嗜好やニーズに対応する店舗運営であれば、ビジネスとして成り立つということだ。喫茶業態は元来が低コストで、高度な料理技術や人手を集約するようなビジネスではないので、投下資本が小さくできれば、“パパママ経営”でも成功する確立は高いのだ。

とくに店舗が自己物件であれば、固定コストがかからないので、それだけ収益性が増し、成功する度合が大きくなる。しかし、その店に魅力がなくては客は寄りつかない。やはり店に特色と訴求のポイントがなくては競争に負けてしまうということだ。

その点、専門チェーンはドトールにしてもプロントにしても特色があり、独自の集客力を誇っている。

ドトールコーヒーは、一八〇円というFF機能および低価格志向で消費者にインパクトを与え、チェーン展開を可能にしているわけだが、消費が低迷する今日、この価格帯は重要なファクターだ。

しかも単にロープライスというだけではなく、店の雰囲気、商品の質、サービスの点でもクオリティーがあり、高付加価値をアピールしているのだ。

また、コーヒーなどドリンク類に加えてはフード(ホットドッグ、サンドイッチ、トースト)メニューも導入しており、軽食ニーズにも対応している。

ドトールの店舗展開は一八〇円コーヒーだけではない。三八〇円のオーディナルタイプの「カフェ、コロラド」、スパゲティハウス「オリーブの木」、二一世紀の喫茶店をテーマにした「二人の珈琲」、高価格帯(六〇〇~八〇〇円)の「カフェ・テレジア」、インテリジェントビルやSC対応の「カフェ・エクセシオール」など全方位の喫茶ビジネスを展開しており、コーヒー専門チェーン(企業)としてのあり方を示唆している。

低価格志向といえばプロントをはじめ、アートコーヒー、三本コーヒーなども同様に、この価格帯は一六〇~二〇〇円の範囲で、喫茶チェーンの大きな流れとなっている。

そして、各チェーンともにパンやサンドイッチ類のスナックメニューをラインアップしており、この面での集客および収益効果も狙っている。

また収益効果といえば、プロントは昼・喫茶、夜・ショットバーという“二毛作経営”を展開しており、不況時における市場戦略としても、業界の注目を集めているところだ。

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