地域ルポ 赤羽(東京・北区) 再開発で西口に活気、東西の立体交流計画も

1994.03.07 47号 4面

JR赤羽駅は京浜東北線のほか、東北本線(宇都宮線)高崎線、埼京線の結節点だ。また、駅北部に近接する岩淵町と目黒を結ぶ営団地下鉄南北線が、九五年秋には完成する予定で、鉄道の利便性はさらに高まる。一日の乗降客数一八万人。このほか、改札口を通らない乗り換え客が八〇万人もいるというマンモス駅で、都内のJR沿線の中でも往来の激しい駅の一つだ。

西口は商店街としては面としての発展もなく、東口と比べると、長く未発達のままに取り残されてきた地域だ。しかし、西口地区は北区の都市整備構想の中にあって、昭和51年6月に計画が策定され、これに基づいて昭和58年12月から市街地再開発事業が進められてきている。

西口は東北・上越新幹線や埼京線の高架下に位置しており、その前面は即歩道だ。また、高架下には飲食店や食料品、雑貨などの店舗が入居しているが、人の流れは弱い。

これら店舗は西口の再開発事業に伴って立退くことになった地権者や店舗経営者で、再開発事業が完了するまでの仮設店としての営業だ。

西口は東口と異なって駅前広場がない。空間的拡がりに欠けるほか、店舗も少なく、消費者が回遊するという図式にはなっていない。

この点、東口にはダイエーや西友、長崎屋といったスーパーが出店しているので、人の流れが大きく、西口地域からも買い物客を吸引している。

西口は東口地域と比べて街の賑わい、商業集積に大きな格差があるというわけだが、これを是正し地域を活性化する目的で、再開発事業が進められているわけだ。

赤羽は東京・北区にあって、荒川を渡れば埼玉県の川口市で、文字どおりに東京の最北部に位置する。北区の中でも最も人口密度が高いところで、よく知られた赤羽台団地や桐ケ丘団地などが点在する。

駅は東口、西口、南口の三つの改札には分かれるが、街としての拡がりは東口地区に大きく比重がかかっており、町名でいえば、赤羽一、二丁目および赤羽南一、二丁目に商業集積が進んでいる。

東口は改札口を出れば、噴水のある小さな公園とバスターミナルになっている。

バスターミナルの北側は東西に伸びる駅前通りの商店街だが、しかし、路面店は少ない。古くからの商店街は、バスターミナルの北側に展開しており、「一番街」「OK横丁」「明店街」「中央街」といった古く小さな店舗が、狭い地域に密集している。

これらの商店街は戦前および戦後から存在しており、このため闇市的な雰囲気を残した地味な店が多い。正直にいえば、時代に取り残された感じの商店街だが、一方においては昭和20年代や30年代の懐かしい雰囲気もあり、日本人にハートがあったよき時代のノスタルジアを感じさせる。

これら商店街の前面になる駅前通りに面して、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキンほか、テークアウトすしショップの京樽が出店している。

FFショップは東口改札口の左手にミスタードーナツも出店している。駅前の公園の右前方は「東口駅前商店会」で、パチンコ店やサウナ、レジャーホテル、キャバレー、カラオケスタジオなどが林立するいわば“風俗ゾーン”だ。

駅前通り寄りには居酒屋やラーメン店なども点在するが、トータル的に見ればゴミゴミとした感じで、不健康な街という印象を強くする。

赤羽駅西口地区の再開発事業は、第Ⅰ期と第Ⅱ期に分けて進められている。第Ⅰ期計画は昭和56年6月に決定し、昭和61年3月に完工した。

改札口から南寄り歩道部分に建つ地上一四階、地下二階建ての高層ビル「アピレ」がそれで、再開発事業の一街区として機能している。

このビルは地下一階が飲食ゾーン、地上一~三階が物販店、四~一四階に住宅(一二二戸)が入居するというフロア構成で、複合都市ビルとしての性格にある。

飲食ゾーンには糸ぐるま、藩、小吃坊、杵屋、茶月、カフェラミルなど一三店が出店しているが、ビル全体に賑わいがないので、集客力が弱く、営業は特定の店を除けばかなり厳しいという状況だ。

「このビルの出店コンセプトは、一〇代から二〇代前半の若い女性をターゲットにしておりまして、物販店も大半がブティックであるわけです。主婦とかファミリー客を対象にした店がありませんので、消費不況を反映していることもありまして、購買力が十分でないわけです。でも、現在進めている第Ⅱ期の計画が完了しますと、地域に回遊性と賑わいが出てきますから、アピレもリニューアルをするなどして、多様な客層を集客できるようになると期待しているのです」(アピレ管理組合)。

第期計画は現在進行中であるわけだが、これは二街区と三街区の二つのブロックで具体化されている。

道路(補助第七三号線)を挟んでアピレの西側が三街区で、鉄骨が建ち上がっている。平成4年12月から着手、地上一一階、地下二階建ての複合都市ビルで、平成7年12月には完成する。

このビルは、地下一階から地上六階までが大型店舗(一部オフィスと戸割店舗)、併設して地下一階が駐輪場(六〇〇台)と戸割店舗、地上一~九階が駐車場(四五〇台)と戸割店舗、八~一一階オフィス(七階はピロティ)というフロア構成で、大型店舗にはイトーヨーカ堂がキーテナントとして出店することになっている。

三街区の北隣は道路(補助線街路第一五七号線)を隔てて二街区の建設現場だが、ここはまだ基礎工事の段階だ。

地上一八階、地下二階建ての高層ビルで、店舗をはじめオフィス、公益施設、スポーツ施設、住宅(二一九戸)が入居することになっており、赤羽地区最大の複合都市ビルが誕生する。完成は三街区と同じ時期の平成7年12月の予定だ。

これら計画は住宅・都市整備公団(東京支社)および北区都市整備部が主体となって推進しているもので、都市ビル建設に加えては周辺道路整備のほか、交通広場の整備にも着手する。

また、赤羽は東口、西口両地域を結ぶ駅北側の道路(北区画街路第三号線)が鉄道との平面交差になっているので、鉄道路線の立体化を進めて、東西の人の流れを円滑にする計画で、再開発事業と連動して工事に着手し、平成8年~10年には具体化する。

これら多面的な西口地区の再開発事業によって、第期計画の一街区と第期計画の二、三街区が一体化することになり、地域への集客力および回遊性が大きく期待できるとしている。

「西口地区は計画的で整合性のある再開発事業ですし、商業施設もいろいろと個性的な店が出店するでしょうから、街としての魅力は東口以上になると思います。場合によっては街の中心が西口に移るかも知れません。少なくとも地域が活性化し、賑わうことは確かでしょうね……」(北区都市整備部)。

赤羽地区の再開発事業については、東口でも計画されており、現在マスタープランが練られているところだ。

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