特集・宅配ピザ 特別インタビュー アーネストM・比嘉氏に聞く
‐‐宅配ピザが日本に上陸して一〇年が経ちますが、業界の第一人者として現在の率直な感想を聞かせて下さい。
比嘉 業態がこれほど急成長し、競合が激化するとは思わなかった。ピザ自体よりも宅配というビジネスに火を付けた点で、外食産業に与えた影響は大きいと思う。
‐‐戦国時代の業態といわれる現状をいかがお考えですか。
比嘉 いかなる業態もファッション、流行から始まり、競合による淘汰を繰り返して発展するものです。宅配ピザ業態は五年ほど前に淘汰期を迎えましたが、立ち上がりと同時に今回の不況に見舞われたため、さらに生き残り戦争に拍車がかかっています。
‐‐業態としてはどのような結果を迎えていますか。
比嘉 品質、サービス、イメージ戦略に各社とも意欲的で、業態としては以前よりも数段レベルアップしています。不況は好ましくないが、今回に限っては、一〇年という期間でこれだけの世相のライフサイクルを味わえたことに感謝すべきです。業態の発展と向上の追い風として受け止めるべきでしょう。
‐‐今後はどのような課題がありますか。
比嘉 ファッション性や淘汰から脱皮した現段階で宅配ピザ業の基礎は確立できた。今後は消費者に対するマーケティングを本格的に稼働させること。いままでは、ピザを食べたい人、興味ある人を対象にした商売で、各店の競合も決まった顧客のパイを奪い合うだけでした。現在生き残った店舗は洗練されたプロフェッショナルな店舗です。それらの店舗が新規客の開拓を行えばパイの拡大も当然と思います。
‐‐具体的には。
比嘉 シェアの拡大にはやはりマスコミの力が必要でしょう。とくにTVCMに注力すべきです。ピザーラやピザ・カリフォルニアが先陣を切っていますが、同社のCM効果に便乗して他チェーンの売上げも伸びているようです。わが社でも積極的に取り組む方針です。今後はTVCMの使い方がこのチェーン格差のポイントになります。場合によっては中小チェーンの吸収合併も相次ぐかもしれません。いかにTVCMと兼ね合わせてスケールメリットのある商品開発を行えるかが一つのカギとなるでしょう。
‐‐宅配ピザ業態における将来の懸念はありますか。
比嘉 TVCMを始めることで売上げの増加は目に見えてますが、それによる現場(店舗)での油断が危惧されます。TVCMの効果に頼り過ぎて、サービス、品質、イメージを怠たる店舗は必ず現れます。TVCMの販促は楽するためでなくあくまでも市場の拡大を狙うためのものです。いままで培った品質管理、サービスの口コミ、チラシ配布の基礎を土台にしてこそCM効果が見込めるわけで、その足場を踏み外すような店舗は一時的に伸びても、すぐに淘汰されるでしょう。チェーン本部のスーパーバイジングがそこを重視するか否かで今後の店舗格差は一層広がると思う。
‐‐宅配ピザの将来については。
比嘉 ピザ店(宅配・イートイン)は米国ではすでに五万店を突破し、現在も対前年度比一〇%増で、他のファストフードを圧倒的にしのぐ成長率を挙げています。米国のフードコンセプトは日本でも成功し、市場規模は最低でも米国の一〇分の一に達すると思っています。これからの日本でのピザ市場の拡大が楽しみです。
‐‐ありがとうございました。
〈略歴〉アーネストM・比嘉氏、(株)ヒガ・インダストリーズ代表取締役社長、一九五二年ハワイ・ホノルル生まれの日系三世。一九七四年ペンシルベニア大学で理学士号取得、一九七六年コロンビア大学経営大学院で経営管理学修士号取得、同年(株)ヒガ・インダストリーズの前身である(株)ワイ・ヒガコーポレーション入社、一九七九年副社長就任、木材輸入業、医学会社などを手掛ける。一九八五年米国ドミノ・ピザの独占契約者となり日本で初めてホームデリバリーピザチェーン店をオープン。ピザブームの火付け役となる。一九九〇年現職就任。