トップインタビュー カナディアンスプリングピュアウオーターJ・小林健三代表
‐‐ぶしつけな質問ですが、ピュアウォーターとミネラルウォーターはどのように違うのですか。
小林 ミネラル分をまったく含まない純度九九%以上の真水がピュアウォーターです。使用しているシェフからは「水自体に主張がないので料理の素材の持ち味を壊さずにおいしく仕上げることができる」とおっしゃっていただいています。普通、真水はコンピューターのマイクロチップの洗浄などに使われ、飲み水としてはおいしくないと思われていますが、この水はほんのりとした甘さがあっておいしいんです。
たとえば、水道水より安全だからと赤ちゃんの粉ミルクをミネラル水で溶くと、粉ミルクで赤ちゃんの発育に良いように調整されているミネラルバランスが崩れてしまいます。欧米諸国ではスポーツの後はミネラル、のどが乾いた時は真水と水の使い分けが進んでいます。
水には塩類含有量の少ない軟水と逆に多く含む硬水、ガスなし、ガスありなどいろいろな種類と特徴があるのですが、日本では水を売る先発の会社が多種ある水を「ミネラルウォーター」と一括命名して売ってしまったため、有料水イコールミネラルウォーターという誤ったイメージが出来あがってしまいました。ピュアウォーターを通じて水の特徴に合った飲み方、使い方を啓蒙していきたいと思います。
‐‐カナダではピュアウォーターが主流なんでしょうか。
小林 日本同様ヨーロッパのミネラルウォーターがメジャーです。しかし、店頭販売を行わず独自の空ビン回収システムで顧客に直接配送するため、スーパーなどの店頭にはまったくありませんが業界の七五%のシェアを占めるほど最もポピュラーな水です。カナディアン・スプリングス一社でピュアウォーター市場を築いています。森林の豊かな丘陵地でカナディアンロッキーの水が地下にしみこみ、湧き出た水を採水していますので渇水の心配はありません。
‐‐ピュアウォーターと出合ってあしかけ五年と聞きましたが、どんな出合いだったのでしょうか。
小林 話すとカナディアン浪花節になってしまうんですが‐‐。当時私は経営コンサルタントをしていまして、ある用事でカナダに行ったんです。知人宅に泊まり、夜中にのどが乾いたので台所で水を飲んでいたらもっとおいしい水があると飲まされたのがピュアウォーターでした。“味”に感動しました。好奇心が強いものですから、日本に入っているかどうか知りたくなりました。その知人とそのおいしい水の社長は友達だということで、さっそくあくる日会いに行きました。日本には輸出していないという答えでした。国内への供給で手いっぱいだし、日本の有力商社数社からもインポートの申し込みはあるが、日本の商社はライセンスを育てようとしない。カナディアンは迷惑しているという。
私はこんなにおいしい水を日本に紹介しないのはもったいないと思い「水を売るのではなく、水を育てたい」と申し出ました。数日後、まさかのライセンスレターが滞在ホテルに届きました。このようないきさつで全アジアに対する総輸入販売権を譲渡されました。今でもキャム・ホルコナー社長とは水の良さと人の良さで信頼関係が保たれています。
‐‐普及は安全志向や健康ブームに乗り順調なスタートだったのですか。
小林 日本に帰って厚生省に輸入許可の申請に行ったら「真水」という用語がないから許可は出せないというのです。あまりの役所的処理に驚きました。そこでカナダ大使館に飛び込み、商務官の松永氏と二人三脚で一年九ヵ月かかってやっと九三年5月に許可がおりました。販売方法はカナダと同じで五ガロン(一八・九リットル)のボトルと専用のディスペンサーを設置し、一週間の無料試飲後、必要に応じてボトルの配達を行います。その後、使用した分だけ料金をいただき、空ビンを回収して、予備を一本置いてくるという方法を取っています(空ビンはカナダに送り返す)。富山の薬売りみたいなものです。
スーパーなどの流通に乗ると価格が崩れ、ピュアウォーターを育てられなくなると危惧するからです。まずはしっかりしたレストランに置いてもらい、ハイクォリティー路線というポリシーを堅持してピュアウォーターの味を知って欲しいと思います。レストラン需要は順調に伸びています。
‐‐昨年の猛暑以降、飲料水がクローズアップされていますが何か変化が起きていますか。
小林 あの猛暑で飲料水は有料ということを日本国民が学習したことは大きいですね。それまでは都市型商品だったものが、全国型商品となりました。しかも、多量に出まわったのでスーパー、CVS、酒屋などの小売側も消費者も有料水の味にもいろいろあることに気づいてきました。これまでは棚に並んでいたら安い商品を買っていた消費者が品質で選別するようになってきたんです。おかげさまで当社も九四年度は前年比二四〇~二五〇%の成長率です。
‐‐いよいよピュアウォーターの本格的な全国展開に向けて基盤が整ったということですね。今後の展開をお聞かせ下さい。
小林 仙台にFCが内定しましたので、今年はFC展開でマーケティングを広げながらパートナー企業を育てていきます。基本的に流通には乗せない予定でしたが、スーパー、CVSの方から、どうしても置かせて欲しいとの要望があり、四リットル(六〇〇円)の大型容器商品を出したところ、とても反響がありました。あくまで、水を育てる、適正価格を厳守できる範囲内で新商品にもトライし、まもなくスーパー、CVS向けにパッケージ革命とも言える新商品を発表します。あわせて消費者教育、コンシュマーヘルプをしていきます。あくまで他のミネラルウォーターと共存共栄できるように使い方の意識PRをしていきたいと思っています。
‐‐ありがとうございました。
昭和6年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒。経営コンサルタントを二十数年続け、「何かこの世に業績を残したくなり、六〇歳のシルバードリームをかけれるものを探していた時」にピュアウォーターと出合う。「かけるお金も失う物」もないところから出発し、今は「お客とキャム社長の友情と社員は失いたくない」とピュアな心でウォーターに取り組む。趣味は車(ラリー)と酒。国際A級ライセンス保有。初めてキャム社長に会いに行く時、紹介してくれた友人とピュアウォーターが日本に入っているかどうか一〇〇ドル賭け、社長の目の前で友人から一〇〇ドル手渡されたという洒脱さも持ち合わせている。
(文責・福島)