お店のトイレ 気配りで店のグレードが決まる
“その気配りで店の品格、グレードが決まる”といわれるトイレ。特ににおいと音が悪玉にあげられるが、最近はトイレも店舗空間の一つという考え方から衛生はもちろん、広さ、照明、コーディネートなど、店舗内の新しいプレゼンテーションの場としてさまざまな提案がされるようになっている。
トイレは基本的に大便器、小便器、手洗器の三つの機能をもつが、どこへ行ってもまったく同じというのはまずない。なんの変哲もないトイレであるが、それ故にこそ、店主の細かい配慮や心づかいで客に心地よさを与えたり、逆に不快感を与えたりすることもある。
入ったその店のトイレの汚さの話は、いつまでも口コミで語られる(その逆で清潔でアレンジの美しさも)。それは特に女性の場合に多い。男性がただ用を足すだけに比べ、女性は化粧、ストッキングを替える、鼻をかむ、髪形の手直し、赤ちゃんのおむつ交換などなど多目的にトイレを使用する。
それにひきかえ、昔は店舗の中でトイレは営業面積に含まれなかったし、存在することだけのものであった。時代とともにトイレの多用途化や心地よさ、個人的空間から、開かれた快適空間として、機能はもちろん、快適さや遊びのあるスペースとして見直されてきた。
だれも気になる臭気の問題は、ボタンを押して芳香を出す従来のものから、着座するとセンサーの働きで便器内側の穴からファンでにおいを吸い取り排水管から外に出し、便座から立ち上がると一分後まで脱臭が続く(INAX)という便座が生まれた。オゾン脱臭方式では着座センサーが使用開始を感知すると稼働し、においをカットし、立ってから三分後まで脱臭を続けるもの(TOTO)が発売されている。換気口も最近では設置位置を天井から床近くへと工夫されている。
女性は音に敏感に神経を使う。消音装置もさることながら、トイレ室のドアを二重になるよう設計を工夫した(かに道楽渋谷店)もある。
照明の選択も重要なポイント。鏡に映るお客の化粧直しや、ムードづくりのために間接照明も普及している(調布市のやきとり処・い志井)。
トイレの色も「白色=清潔感」といった既成概念はひと昔前のこと。ブルーが喜ばれているが、客のニーズは流動的なので、オーナーは常にキャッチして、便器の色もコーディネートすることを忘れないこと。
トイレの高級化はさておいて、ソフトには配慮がほしいもの。手持ちのカバン、バックなど小物を置く棚、フックにも注意を。和式・洋式トイレも、性別、年齢、店舗の業態により使用する客の視線も変わるもの。女性用のみでなく、男性用小便器も光センサーにより水が流れたり止まったりするのも清潔感があり心地よい。
抗菌便器(INAX)や、除菌クリーナーを使うものは人気を呼び好評を得ている。今やトイレを虐待する店は客を虐待していると意識づけられているのもうなづける。
トイレの位置の配慮や出入口に電話台を設置したり、背丈の高い植物を置いたりする目隠しも心嬉しい気配りである。