高度成長する惣菜・デリ ロードサイド型の弁当・惣菜チェーン「ヒライ」の基本戦略

1992.07.20 8号 9面

熊本県内三九店、福岡県内三店の合計四二店舗の弁当・惣菜直営店を展開し、同エリアでは圧倒的な人気を博しているのが、㈱ヒライである。

同社は昭和四六年、弁当・惣菜・サンドウィッチ・寿司等の製造、直売を事業内容とし設立。「べんとうのヒライ」をキャッチフレーズに、年間1~3店ペースで店舗展開してきた。資本金二五〇〇万円、従業員数六〇〇名、年商八五億円。子会社には、西日本一の炊飯能力を誇る㈱南九州炊飯センターや、タバコの自販機オペレーション会社である㈲ワイドリサーチ。その他、㈱福岡ヒライ、㈱つるや等の関連会社があり、ヒライグループ全体としては一〇〇億円を超える規模となる。全国的にみても業界大手企業と位置付けられよう。

《24時間営業とイー トイン付帯の業態》 ヒライの強さは次の三つの基本コンセプトにある。

①「ロードサイド型二四時間営業とイートイン付帯の業態コンセプト」。

同社工場から片道五〇㎞圏内を立地条件とし、市内スーパー内のテナント数店を除けば、ほとんどがこのコンセプトの惣菜店である。

標準タイプは、敷地面積五〇〇坪、建物面積六〇坪、うちイートインスペースは一〇坪・三〇席前後、駐車スペース三〇台、販売員は正社員、パート・アルバイト合わせて七~八名となっている。

全店平均月商一五〇〇万円前後。中には、大矢野店(八〇坪)のように月商五〇〇〇万円を記録する超繁盛店もある。

②「インストア加工による手作り・出来立て訴求と、食品から生活雑貨類までの豊富な品揃え」。

同社工場で生産される弁当類(売上げ構成比三〇%)、惣菜(八%)、おにぎり(四%)、寿司(一〇%)、サンドイッチ(八%)に加え、店内調理される揚げ物、おでん、うどん、牛どん、カレー、たこ焼き等のホットデリカ類が二〇%、そして、食品、飲料、生活雑貨類が二〇%となっている。弁当・惣菜類四五〇アイテム、グロッサリー類一二〇〇アイテム、合計一六五〇アイテムの品揃えは、まさに惣菜主導型のCVSと言って過言ではない。

また、店内入り口付近は惣菜バイキングコーナーとなっており、店内調理された各種揚げ物類が並べられ、POP等をうまく使ったホット&フレッシュ演出が効果を発揮している。

③「高鮮度志向に対応した生産・物流システム」。

本社に隣接した工場には、約二五〇名の製造スタッフが二四時間三交替制で勤務している。「煮炊き」「揚げ物」「水産加工」「盛合わせ」「寿司」「サンドイッチ」の六部門に分かれ、一日四回の製造システムにより一日一〇万食の生産が行われている。

同社は「その日に作られたものはその日に完売する」を前提条件に、各店の予定販売数に基づいた完全受注方式を採用している。因みに商品ロスは一~二%で、日配品としてはかなり優秀な数字である。

生産のオートメーション化にも積極的で、真空冷却機やいなり寿司成型機、自動巻寿司機、オートフライヤー、コロッケ製造機、自動包装機等を導入している。オートメーション化と手作り調理のウェルバランスにより、高鮮度で手頃な価格の惣菜・弁当を実現させている。

一方、物流面は約四〇台の配送車(一・五t、二t)を一日六便、三~四時間に一度の割合で配送する体制で臨んでいる。また、生産段階から各店納品まで常に一八℃、湿度六〇%で徹底管理されている。

以上のように、「業態」、「マーチャンダイジング」、「生産・販売」の三つのコンセプトを軸に、トータル・オペレーションシステムを構築し、熊本というローカル市場で、見事に惣菜ビジネスを成功させたのが、「べんとうのヒライ」である。

現在、福岡県久留米市に新工場を建設中で、それに伴い年内四店舗の出店計画がある。「熊本のヒライ」から「九州のヒライ」への展開がいま始まろうとしている。

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