FCビジネス点検(2) 吉野家 国内最大の牛丼チェーン、海外にも出店
昨年度の店舗出店が直営三〇一店、FC一七三店の計四七四店(売上高六〇六億円)。全店二四時間営業。「牛丼」(四〇〇円)、「大盛」(五〇〇円)、「特盛」(六〇〇円)の三つが主力商品。年間四〇~五〇店のペースで出店を具体化。既存チェーンの出店形態は直営六割、FC四割のウエートで、直営主導のチェーンビジネスをみせている。
九〇年2月に店頭登録銘柄となったので、資金力がつき直営出店にハズミがついたことが、その大きな要素だ。
このため、FC展開にもゆとりがあり、フランチャイジーの選択や立地確保の面でも、確実性の高い店舗開設が可能になっている。
店舗の出店形態は「ビルイン型」と「フリースタンディング(郊外型)」の二つのタイプに分かれるが、売上げは両タイプともに月商一二〇〇万円を設定している。
立地特性はビルイン型(店舗面積二〇~三〇坪)が乗降客一日五万人以上の駅前か、同一〇万人以上の駅周辺および人通りの多い繁華街。
フリースタンディング型(敷地面積一五〇~三三〇坪、店舗面積二七~三三坪)、は、車の通行量の多い幹線道路沿いや新興住宅街の生活道路沿い、人口の増加が顕著なところとしている。
「以前のように客数がとれない時代ですから、コストを下げて収益性を高めていく考え方です。牛丼が“安くてうまい商品”といっても、コンビニや弁当チェーンとの戦いもありますから、牛丼商品がすべて優位に立つというわけにはいかない。結局はペイラインを引き下げる工夫ということで、出店コストなり、営業コストをカットするしかない。その一番のポイントとして、ハード面のコストダウンがあるわけです。これについてはすでに二割くらいは削減できておりますが、さらには出店工期の短縮ということも具体化してきておりまして、これは従来の六五日工期が五四日と一〇日ほど縮まっております」(岩堀勝臣取締役フランチャイズ推進室長)
人件費や原材料コストの削減も、ポストバブル後の経営課題だが、サービスや質の維持を考えれば、おのずとこの面でのコストコントロールには限界がある。
ローコストでの出店を計画
以前は一店舗当たり六〇〇〇万円前後の出店コストがかかっていた。しかし、ポストバブル時代は消費にブレーキがかかり、店の収益力が弱まった。
このため、出店コストを軽減することが、大きな課題となっていた。吉野家はこの抜本的な対策として、“ローコスト計画”を打ち出した。ハード面において初期投資を軽減して加盟店の負担を小さくするとともに、収益力を高める出店戦略を打ち出したのだ。
原価45%で荒利55%に設定
これらの出店条件については、直営もFC出店も同一。店の収支は原価四五・二%、荒利五四・八%で経常、営業利益が合わせて約二〇%。FCシステムは、もちろん立地調査からオープンまで一貫体制で支援をおこなう。
加盟金一五〇万円、保証金七五万円(契約終了時に無利子返済)。ロイヤリティが総売上げの三%、宣伝広告費同一%というのが契約の条件だが、これによって吉野家牛丼ビジネスの高度な「ノウハウ」が得られるので、開業のメリットは大きい。
開業資金は自己物件のビルイン型店舗(店舗面積三〇坪、客席数三〇席)の場合で二五〇〇万円。
単純に計算すれば、坪当たり八三万円の内装・設備費ということで、出店コストをおさえた投資額だ。物件確保から出店を考える場合でも、トータルで五〇〇〇万円内、つまり、テナント出店の投資額も二五〇〇万円前後におさえるということだ。
郊外型の投資回転率は2回
吉野家のチェーン戦略は店舗運営面でパワーダウンしないで、営業収益の向上で投資効率を高めていこうとしているのだ。
FC契約は五年だが、一店舗当たりの営業利益は月商一二〇〇万円で一二%、投資回転率はビルインで一回転、フリースタンディングで二回転、初期投資はさらに軽減する方向にあるので、収益性の高いFCビジネスを展開しているといえる。
このため国内では退店もスクラップ店もなく、一オーナーが一〇、二〇店とサブチェーン化しているケースも多く、独自の牛丼市場を拡大中だ。
(しま・こうたつ)
・社名/(株)吉野家ディー・アンド・シー
・本社/東京都新宿区新宿四‐三‐一七HK新宿ビル
・代表取締役社長/安部修仁
・店舗数/直営三〇一店、FC一七三店、計四七四店(平成6年度)
・売上高/六〇六億円(同)
・海外市場/アメリカ(カリフォルニア)、中国(北京)、台湾、香港、タイ(バンコク)、フィリピン(マニラ)、インドネシア(ジャカルタ)