コメ特集 新食糧法追い風、伸びる付加価値米 ブランドで独自性
日本人のライフスタイルの変化や少人数マニュアルでやりくりするようになった外食産業の構造の変化が折り重なって、コメにたいするニーズが急速に多様化し、「洗わなくて良いコメ」「炊かなくて良いご飯」に代表される付加価値米が急成長している。また、11月から多様なコメが比較的安く買えると期待される「新食糧法」の施行が追い風となって、コメ人気そのものも急浮上中。ただ、これまで国の検査下で品質が保証されていたコメが、それぞれの立場での自己管理に負うところが多くなるということは確かで、改めてコメの知識が問われるということでもある。ここでは外食産業のコメの動きと新たなニーズに焦点を当て、確実に生産量を伸ばしている付加価値米の両雄「炊飯米」と「無洗米」、そして銀座で若者に人気のコメ料理を紹介する。
外食産業は年間二三〇万t、テークアウトを含めると三〇〇万tと家庭のコメ消費が落ち込む中、流通の三分の一を使用しており、味噌などの加工米一四〇万tよりはるかにその消費量は多い。小僧寿し本部は約二〇〇〇店各店で炊飯しており、年間二万四〇〇〇~五〇〇〇tを使用。牛丼の吉野家は政府管理米を中心に一日一店舗九〇キログラム、年間一万八〇〇〇t使用する。京樽は炊飯工場から各店に炊飯米を配送して対応している。
使用米のブランドはと言うとFRのロイヤルは東日本がひとめぼれ、西日本がヒノヒカリ、すかいらーくは栃木産コシヒカリと熊本産ヒノヒカリで、有機栽培米の実験も行っている。デニーズはあきたこまちである。年間一万二〇〇〇tを利用するすかいらーくは新食糧法になったらコメは直で各県の経済連と取引し、帳合いのみは二~三年卸問屋に支払って、ゆくゆくは全くの直で仕入れる方向である。直が一番品質の良いコメを仕入れられるという理由からである。
気になる外米の利用であるが、大手FRは一昨年の外米騒動で客数を落としていることから、あくまで国産米にこだわる。しかし、集団給食は「品質と味が保証されるのなら大いに歓迎」(シダックス)と業態によって異なる。一般の外米アレルギーについては「緊急輸入米騒動の時には中国、タイなどアジア中心の輸入だった。ミニマムアクセスではオーストラリア、アメリカのジャポニカ米が入ってくる。産地精米の動きもありほとんどピュアなコメが届く」(お米ギャラリー・西氏)と、ポストハーベストなど安全性が懸念されるところだが前向きな見方もある。
▽炊飯米デリバリー=炊きあがった米飯を保温ケースに入れ、ユーザーの指定の場所・時間に指定の温度で配達するシステム。販売品目としては白飯が四〇%、すし飯が五〇%、おにぎり用のご飯、赤飯が一〇%。各社ともに比較的付加価値のあるすし飯の比率を高める方向にある。今後はユーザーの要望に応えて茶めし、炊き込みご飯などのウエートも高くなりそう。
炊飯米の普及に伴い、日本炊飯協会(03・3590・1589)は9月から、高品質の米飯を安定供給して社会的信用をより高めるために、コメのグレードと精米のシーズンを表す米飯の品位格付認定を協会事業としてスタートした。
▽無洗米=パッケージする前にあらかじめ洗ってヌカを取ってあり、研がずにそのまま炊ける。製造方法は原料の精白米を機械に入れ、水で数秒研いだ後一定温度で乾燥する方法と水ではなくヌカで洗う方法がある。どちらもヌカをきれいに取り除く。保存性も良く、ふっくらと炊きあがるのが特徴。農林水産省では無洗米加工により適したコメの品種改良も計画中とあって、二一世紀は「研がずに炊くコメ」が主流になりそうな勢い。その背景には水資源や研ぎ汁の垂れ流しによる環境保護の問題がある。全家庭や外食産業で無洗米を使うと年間で約八四〇〇万t(約一二六億円)もの水が節約できるとも言われている。これに廃水処理費用も考えると膨大になる。
ヌカでヌカを取る独自のBG製法で無洗米を製造している東洋精米機製作所は、加工時に出るヌカを肥料として近く製品化し販売する予定だ。