総点検-激震下の外食・飲食業 スエヒロレストランシステム、まず郊外立地の活性化
(株)スエヒロレストランシステムは、創業が昭和8年。法人(会社)経営に移行したのは昭和51年11月だが、銀座での創業なので、オーソドックスな伝統を引き継いでおり、体質的には堅実、スタティックな企業という印象を強くする。
しかし、生業から脱皮するに当たっては、昭和52年3月、神奈川県海老名にロードサイド(郊外型)立地のステーキレストラン「すえひろ5」一号店を出店、「すかいらーく」や「デニーズ」「ロイヤル」などに追従して、本格的に外食ビジネスに参入、チェーン化のスタートラインに立っている。
出店数は今年8月末現在、六八店舗だが、これは他業態を含めての出店数だ。主力業態のすえひろ5を軸に53年以降、年間一〇店前後のペースで推移し、平成元年にはトータルで九一店舗を開設している。
しかし、その後はバブル経済の破綻で、店舗の収益力が下降してきたので、平成2年以降はリストラに着手、不採算店のスクラップや他業態への転換を図ってきている。
主軸の市場戦略としては、郊外型立地においては「すえひろ5」に加え、ステーキレストラン「スエヒロ」、和食レストラン「スエヒロ」、石器焼ステーキレストラン「SUEHIRO」の四業態を展開、郊外立地での活性化に取り組んでいる。
一方、これら四業態を補完する出店戦略としては、本拠地の銀座に牛しゃぶ「すえひろ」をはじめ、焼肉「末廣苑」、とんかつ「スエヒロ」、イタリアン「デルピアット」など四業態、また、複合レストランと関連事業として、カラオケレストラン「ON‐TIME」、食材販売の「ミートショップスエヒロ」、スポーツ&レストラン「SUEHIROひばりが丘テニスクラブ」など三業態を出店しており、業態の多角化をさらに進めている。
しかし、店舗出店の基本は花正同様に肉料理に比重がかかっており、本来の「スエヒロ」の企業(ブランド)イメージを逸脱することはない。
「私どもスエヒロの本業はあくまでも、ステーキやしゃぶしゃぶなど肉料理の提供と考えております。
とにかく、一店一店を着実に出店していく。そのためには味づくりを最大のテーマとしており、他のレストランチェーンのように“コックレス”という考えはありません。
一〇年、一五年とコックが育ってから出店する。これが私どものチェーン戦略であるのです」(干田弘義社長)
スエヒロの出店戦略はまた、時代の流れといっても、いたずらに“低価格志向”に迎合することはない。味・サービスと質の追求の結果において、リーズナブルな価格政策を導入すればよいと考えている。
「店の良しあしは味づくりが七割」(干田社長)と、スエヒロの店舗オペレーションはコックの技量に大きなウエートをおいているのだ。
店舗運営はホールと厨房スタッフの一体化によって成り立つというのは説明するまでもないが、スエヒロはこの分野においては、新入社員からベテランのマネジメント研修まで、独自の「キャリアプログラム」を確立、スタッフの技術・知識レベルを高めている。
問題はそれがどの現場(店舗)で機能しているかということだ。単なる“サラリーマン”であり、“マニュアル人間”の養成であっては、消費者が納得する“質的追求”という付加価値の創造にはつながらない。
市場の飽和状態と熾烈な競合、競争状態の現下において、プロ意識に徹して自らが日々工夫し、つねに向上する人材(スタッフ)が求められているのだ。
それはともかくとして、スエヒロは全社的にみれば、数値管理を基本としたコストの削減と経営効率の追求を徹底しており、この面では外食業界では有数の成果をあげている。
平成元年10月からスタートした肉、コメ、野菜など約五〇〇種の食材の産地直買システムは、品質向上と仕入れコストの低減に寄与、経営の効率化を成功させた具体的な例だ。
食材の確保は国内ばかりではない。牛肉、魚介類、野菜についてはアメリカ、カナダ、オーストラリアなど海外からも買い付けており、コスト吸収にプラスしている。
数値管理については、昭和59年、業界に先がけて、ハンディー・ターミナルとレジ・コンピューターをリンクさせた「オーダー登録システム」(ROS)を導入。これを本部のホストコンピューターにネットワーク(“SINS”=スエヒロ・インフォメーション・ネットワークシステム)することで、仕入れ、売上げ管理から経理、総務部門のマネージメントまで、全社規模での完全オンライン化を実現している。
スエヒロの市場戦略はいってみれば、“慎重・管理型の経営”ということになるが、しかし、花正に比べ市場を創造するための“熱気”が感じられないという印象は否めない。
◇(株)スエヒロレストランシステム
・本社所在地/東京都中央区銀座五‐六‐一二
・設立/昭和51年11月(創業昭和8年)
・資本金/三億七〇〇〇万円
・代表取締役社長/干田弘義
・店舗数/七〇店
・売上高/九〇億円(九四年度)