FCビジネス点検(6)「サーティワンアイスクリーム」出店は5坪からでも
営業効率高い物販的売り方
「サーティワンアイスクリーム」(米・バスキン&ロビンス)は、一九四五年に創業して以来、アイスクリーム専門チェーンとして市場を切り開いてきており、現在では世界四五ヵ国に進出、トータルで約四〇〇〇店を出店する。日本市場では昭和48年12月、洋菓子メーカーの不二家との合弁事業でスタートした。
わが国初の本格的FF機能のアイスクリームショップで、ストア・ブランドどおりに三一種の商品をラインアップ、独自のアイスクリーム市場を創造してきた。
今年8月末現在の店舗数は、直営二五店、FC三一七店の計三四二店を数え、出店エリアは北海道から沖縄まで全国におよぶ。
アイスクリーム商品は他の飲食ビジネスと異なって、熱源を使う必要もなく、また調理も不要というシンプルさがあり、営業効率が極めて高い飲食ビジネスだ。
つまり、店舗では工場から配送されてくる商品をディッシュアップするだけでよく、いわば“物販的なサービス形態”ですむということだ。
商品は五〇〇種以上のフレーバーの中から常時三一種をピックアップし、客に一ヵ月間毎日違った商品が提供できるという運営形態にある。
シンプルな商品だけに材料やフレーバーの面で、客に飽きさせない工夫をしているということだが、テーストの追求に加えては「温度」と「衛生」管理は厳重で、工場はもちろんのこと店舗での「クリンリネス」は徹底している。
商品はマイナス二五度Cでデリバリーされており、店舗でもこの温度でストックされる。このため、他の食材と異なって“不良在庫”になって、商品を劣化させるという心配がない。
貢献度の高いメニューは、コーンまたはカップ(シングル二〇〇~二八〇円)、バラエティパック(六個入り一一五〇円、一二個入り二二〇〇円)、デザートケーキアイスクリーム類(アイスクリームバー八五〇円、プチスナック一〇〇〇円、ほか)、サンデー・パフェ類(三二〇~五二〇円)など。
イートインに加えて、テークアウトサービスも行っているが、このウエートは立地によって異なってくる。
平均的にみれば、イートインが六、七割で、テークアウトが三、四割といったところだ。
客層は若い女性やファミリー層がボリュームゾーン。客単価は七〇〇円前後で、ハンバーガーなどFFショップに比べ一、二割高い。
FCシステムは他のFCビジネスにみられるように、加盟金や保証金、ロイヤルティーは徴収しない。
商品特性から「販売ライセンス」を付与するシステムで、什器備品のレンタル、店舗資材および内外装のデザイン指定などを基本としており、初期投資が小さくてすむシステムだ。
いわば“商品卸”“小売流通型”のFCビジネスと理解することができる。しかし、店舗の開設からオープンまで、また開店後の継続的経営指導においても、トータル的に本部の支援を受けることができる。
店舗開店資金は、五坪からの出店が可能で、この場合で約八〇〇万円、標準規模が倍の一〇坪で一二〇〇万円、ロードサイド型(敷地一五〇坪、建物二〇~二五坪)で三〇〇〇~三五〇〇万円。
立地条件は商店街、駅前、学生街、住宅街、ロードサイドと幅が広く、小回りのきく出店が可能だ。
モデル収支は一〇坪(投下資本一二〇〇万円、六年償却)タイプの場合で、総売上高四〇〇〇万円、原価二〇八〇万円(五二%)、売上総利益一九二〇万円(四八%)、営業経費(人件費含む)一三〇〇万円(対総利益約六八%)、一般管理費一八〇万円(同九%)、税引き前利益四四〇万円(同二三%)。
小資本、小スペースで確実な収益が期待できるということだが、しかし、市場(五〇〇〇億円)の伸びは鈍化しているのに加え、とくに最近は製菓メーカーやコンビニとの競合関係が強まってきており、今後これをどうクリアしていくか、さらに強いマーチャンダイジングとマーケティング力が望まれる状況となってきている。
・企業名/B‐Rサーティワンアイスクリーム(株)
・ストアーブランド/サーティワンアイスクリーム
・設立/一九七三年12月
・所在地/東京都品川区上大崎三‐二‐一
・電話/03・3449・0331
・資本金/六億七五〇〇万円
・代表取締役社長/松山和夫
・店舗数/直営一九店、FC三三〇店(九四年12月現在)
・売上高/六七億円(九四年度)