お店招待席 南欧料理「らんぐさむ らんぐさむ」 徹底した手作り料理

1995.12.18 91号 6面

JR中野駅にほど近い丸井の脇道に入った飲食店街に位置する。周りは、スナック、ラーメン屋、喫茶店が建ち並んでいる中、徹底した手作りの欧風家庭料理を提供し、若いOL、カップルを取り込んでいるのが、「らんぐさむ らんぐさむ」である。

オープンして一年余りだが、店名の「らんぐさむ」は、ドイツ語で「ユックリやれば、きっと良いことがあるよ」の意に由来し、「あせらず腰を据えてやっていく」(石川正歩店長)姿勢の積み重ねが、客が客を呼び、固定客層を厚くしている。

ビストロ風に肩肘張らず、気楽に食事をする場をイメージし、店内は、壁から床まですべて板張りだ。さらに木製のテーブルとイス、陶製の絵皿やつぼを置くことでアットホームな雰囲気を演出する。九割方は自分たちの手作りというから半端ではない。

立地上、客単価を食べて飲んで三〇〇〇円以内に設定、居酒屋も視野に入れ、「気楽な気分で奇をてらった料理ではなく、手作りのクラシックな料理を家庭的雰囲気で出したい」とする。

何より女性一人でも安心して食べて飲んで欲しいとして、税・サービス料は一切つけず、ズバリ実費だ。

これもコスト削減努力で得たものは、すべて客に還元しようという姿勢によるもの。食材では、肉、魚、野菜など、オープン当初から試行錯誤で、希望にかなう業者や市場を探りあて、三分の二から二分の一の削減に成功している。

「努力を惜しまず、ちょっとした愛情と技術により、ひと味違ったものに仕上げる」という料理は、いかにも手をかけた風にはせず、さりげなく出し、ナイフ、フォークだけでなく箸でも食べられる。

メニューは、当初四〇アイテムだったが、三〇に絞る。“本日のおすすめ”を打ち出し、季節感のある旬の素材を使ったもの、魚はその日の仕入れに合わせたもので出す。

「木の子のオイスターソース炒め」九〇〇円、「仔羊のグリル」一二〇〇円、「ホウレン草とクルミのサラダ」六五〇円など。冬は体が温まる料理、夏は食欲が湧くサラダ系、秋はキノコといった具合。

また、夜とは違い、近隣ビジネス街のOLやビジネスマン、住民をターゲットにビーフシチュー、その日の魚、肉のうち一品を選択し、スープ、サラダ、パンまたはライス、アイスクリーム、コーヒーがついた一〇〇〇円のランチメニューもある。日・祭日は、さらにオードブル、ワンドリンクつきで一五〇〇円とし、「店の味を知ってもらい、夜につなげている」。

こうした料理メニューのほかワインも揃えており、人気は、白でソービニオンブラン(グラス七〇〇円、ボトル二五〇〇円)、赤でキャンティクラシコ(七五〇円、二八〇〇円)がある。カクテルは、おしゃれ感覚で安易に入れたくないとする。

徹底した手作りで、おいしいものを出せば「お客にも理解され、△△を食べたいと足を運ぶ頻度が増える」。あとは、お客が店の雰囲気を作り、賑わいが出るとする。

こうしたハッキリしたコンセプトが、女性客の舌と心をとらえ、「結果として、女性に人気の店となった」。

「カキと野菜のニース風トマト煮」(700円)カキとピーマンやナスなど季節の野菜をたっぷり使い、アツアツをテーブルに出す

「ブイヤベース」(1050円)マルセイユ名物の海鮮寄せ鍋。ムール貝、甘エビ、白身肉がたっぷり。日本人の舌に合わせたあっさり味

よく外食をするという大須賀直美さん=写真左。きょうは、母親といとこと来店。

「南欧田舎料理の看板とたたずまいに、以前から入ってみたいと思っていた店」。こぢんまりし、木づくりの壁、床、テーブル、イスで落着いた雰囲気が気に入ったという。

甘いカクテルよりビールが好きとかで、ソーセージ盛合わせで乾杯。大根、海草類のサラダ、トマトベースのスパゲティは、週に何回か食べるほどのお気に入りだが、寒い季節には、「田舎風煮込み料理が身も心も温まる」という。

三人でたびたび外食するが、一回の食事代は一万円以内を目安におく。居酒屋、焼肉屋によく通うというが、アットホームな南欧料理店もレパートリーに入ったようだ。

「らんぐさむ らんぐさむ」

〈創業〉平成6年8月

〈所在地〉東京都中野区中野三‐三四‐二三、辻ビル2F、Tel03・3381・1173

〈営業時間〉午前11時30分~翌朝5時

〈店舗面積・席数〉一〇坪、二〇席

〈従業員数〉正社員三人

〈客単価〉ランチ一〇〇〇円、夜三〇〇〇円

〈一日来店客数〉五〇~六〇人

〈平均月商〉二五〇万円

〈客層〉若い女性を主流にカップル客がほとんど

★カキと野菜のニース風トマト煮(カキとピーマン、ナスなど野菜たっぷり)……700円

★チーズフォンデュ(大きめのカップに入れたチーズを卓上で食すスタイル)……700円

★スペイン風魚ときのこのガーリックオイル煮(ホウボウ、アナゴなど白身魚と季節のキノコを使って)……………………1〓000円

★本日のポトフ(若鶏、豚バラ肉、牛肉などや野菜をじっくり煮込んだ冬の人気メニュー)………………………………………950円

★地鶏のカルパッツィオ(ジェノバ風バジリコソースで)……………………………900円

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