喫茶特集 変化するFF・FRのドリンク戦略 「レストラン型喫茶」に変身
「環境変化は“ピンチ”でもあり“チャンス”でもある。今こそ足元をしっかり見つめ直し(現状把握)、進むべき方向をしっかりと見すえ(店舗コンセプトの確立)、勇気を持って足を踏み出すことが求められているときなのである」((財)全国環境衛生営業センター・全国喫茶業環境衛生同業組合連合会、喫茶業における経営近代化に関するアンケート調査平成6年度報告書)
時あたかも、喫茶業にはホットな話題が満載である。
昨年暮れの某TVで「驚異の薬効、ココアで健康・長寿」が流れるや否や小売店からココアが消えた。業務用も同様にココアの動きが活発になってきた。
また、ファミリーレストラン(FR)、ファストフード(FF)のコーヒー一杯入れが見直され、味を訴求するメニュー揃えになってきた。
春には米国のスペシャルティコーヒーの最大手「スターバックス」が日本に上陸する。
経済も明るい兆しとの論調が大勢をしめるようになり、「何かが起こりそうな予感」のする平成8年春、今こそ勇気を持って足を踏み出しチャンスをつかむ時かもしれない。
(株)プロントコーポレーションは昨年12月、ココアブームをすばやくキャッチ、「コーヒー・紅茶だけでなく少し甘い飲み物を加えてみたらどうか」という意見が社内からあがってきたために、ココア(普通サイズ二二〇円、Lサイズ二七〇円)、アイスココア(同)を導入した。女性を中心に人気が出て一日平均(一店舗あたり)四〇~五〇杯出るというヒット商品となった。
この数字は昼のドリンク出杯数に対して約八%前後を占め、カフェタイムの売上げ構成比では約一〇%前後を占める。ココア一杯だが、同社の売上げに大きく貢献することとなった。
(株)デニーズジャパンではコーヒー一杯入れのテストを昨年3月に都内三店舗でスタートした。従来のアメリカンお替わり自由二八〇円にブレンドコーヒー三〇〇円、カフェラッテ、カフェモカ、カプチーノ(各三三〇円)のヨーロピアンコーヒーのニーズを探ることが目的。
エスプレッソマシーンを導入してスペシャルティコーヒーにこだわるというよりも品揃えの一環として人の配置などメニューとしての評価とバックヤードの変化を確かめた。実験の結果、やはり一番出るのはアメリカンであるが、スペシャルティコーヒーの新たなニーズ掘り起こしがあることがわかり、今年度は二〇店舗ぐらいに導入店舗を増やす予定だ。
喫茶需要の促進にドリンクの品揃えが貢献している。ファーストキッチン、モスフードサービス、すかいらーくG、ロイヤルなどなど、品質の向上とバリエーション揃えなどを目的に一杯入れコーヒーに着手する企業が急増中だ。
一方で昨年度、わが国の紅茶輸入数量が過去最大となったように紅茶人気も依然衰えていない。デニーズでは紅茶のダージリンとカモミール(各二八〇円)も好調という。これまでのFF・FRにおける喫茶需要戦略はデザートメニュー争奪であったが、ここに来てドリンク類の品揃えが見直されており、アイドルタイムである午後を、喫茶需要に重きを置くいわば「レストラン型喫茶店」として需要を伸ばそうという動きが、FRでは特に顕著になってきた。