外食史に残したいロングセラー探訪(74)かに道楽「かにすき」

2013.04.01 409号 04面
50余年守り続けている味、元祖かにすき

50余年守り続けている味、元祖かにすき

巨大なカニが動く看板はアイキャッチとしても優れている(道頓堀本店)

巨大なカニが動く看板はアイキャッチとしても優れている(道頓堀本店)

 今や大阪道頓堀のシンボルともいえる動く巨大なかにの看板を目印とする「かに道楽」は日本で初のカニ料理専門店だ。創業時から「カニのおいしさを伝えたい」という思いから数多くのカニ料理を開発。なかでも看板料理の「かにすき」は同店のオリジナル料理として人気を博してきたロングセラー商品だ。カニを知り尽くした同店が提案する「かにすき」を紹介する。

 ●白醤油を使った「黄金だし」 カニを知り尽くした看板料理

 1960年、城崎マリンワールド・ホテル金波楼(兵庫県)は大阪から宿泊客を呼び込むため道頓堀に案内所を設置。そこに併設してオープンした魚介料理店「千石船」が同店の前身だ。千石船は1年以上営業不振が続いたが、1961年、同商品の登場により、他にはない料理として注目を浴び繁盛店のきっかけとなった。また、今でこそ世界中の漁場からカニを仕入れている同店だが、当時としては画期的な氷柱花を参考とした冷凍保存方法を開発したのもこの年だ。年中おいしいカニが食べられることも後押しした。その翌年に道頓堀にかに道楽をオープンした。

 同商品は、漁師たちが漁の合間に魚介を塩水で煮て食べる「沖すき」をヒントに、どうしたらカニのうま味を損なわず、おいしく食べられるかを考え研究開発された。

 その代表ともいえるのが鍋の中に黄金色に輝く「黄金だし(白醤油だし)」だ。厳選された白醤油と昆布、カツオで作られるこのだし汁は、カニの甘味と野菜のうま味を引き立たせる絶妙なバランスを持つ。カニを知り尽くす同店だから開発できただし汁といえる。

 具材となるカニはズワイガニ。同社の厳しい品質基準をクリアした、刺し身でも食べられるほどの新鮮なものだ。その他の具材は、野菜を中心とした三ツ葉、白菜、ネギ、ニンジン、椎茸、エノキ、豆腐など、カニの繊細な味を生かすことを考慮したもの。

 食べ方にも特徴があり、野菜を先に入れ、甘味を出し、カニを1~2分ほど炊き、だし汁と一緒にカニを食べる。さらに通な食べ方は、かに味噌をだし汁に溶き、コクを出し変化を楽しむ。そして、うま味の溶け出ただし汁でカニ雑炊とし、フルコースの締めとする。

 まさに「カニのおいしさを伝えたい」という同店が提案する道楽な逸品といえるだろう。

 ●企業データ

 JRI(株)かに道楽/本部所在地=大阪府大阪市中央区西心斎橋2-9-16/事業内容=かに料理専門レストラン「かに道楽」・活魚料理などの飲食店「いけす道楽」を運営、及び食品発送販売事業 グループ合計45店舗。(2013年2月現在)

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