外食史に残したいロングセラー探訪(95)志津屋「カルネ」
◆京都人のソウルフード 京都の老舗ベーカリーの代名詞 玉ネギが決め手
日本の古都京都。家計調査によると、意外にも1世帯当たりのパンの消費量は、都道府県庁所在市及び政令指定都市の中でも、1位か2位を争うパン好きな街である。その京都で愛されているパンが、老舗ベーカリー「志津屋」の「カルネ」だ。丸いフランスパンに、ハムと生のスライスオニオンが挟んであるシンプルなもの。あるテレビ局が調べたところによると、カルネの認知度は、東京0%、京都96%という。
●商品の発祥:日本のカイザーロール
志津屋の創業は1948年。戦後の食糧難時代に、たまたまパンを食べた堀信(ほりまこと)氏は、「これからの時代はパンだ」と直感した。
カルネが登場したのは、1975年ごろ。少し前に、大きな設備投資をしてフランスパンを製造販売し、大人気だったものの、スーパーなどでも流通しだすと、だんだんフランスパン離れともいうべき現象が起きる。そんな折、二代目社長の小林美英氏がヨーロッパ視察時に、ハード系のパンにハムやチーズを挟んだサンドイッチ「カイザーロール」に目を付けた。
フランスパン生地を利用して、日本人の口に合うカイザーロールを作ろうと開発が始まる。特に、生の玉ネギを挟むかどうかは、開発担当2人の意見が合わず、調整に苦心した。
●商品の特徴:玉ネギがポイント
意見が分かれた玉ネギは工夫を凝らし、特有の臭みを取って、カルネの味のアクセントとなった。丸いフランスパンに、マーガリンとボンレスハム、生のスライスオニオンを挟んだ、シンプルなサンドイッチであるだけに、一つ一つの素材を厳選。日本流のカイザーロールが完成した。
カルネは、フランス語で「地下鉄の回数券」という意味。「何度でも来ていただきたい」「何度でも買っていただきたい」という同社の思いを託して名付けられた。
●販売実績:TV番組で弾み
同品は、直営23店と、関西にある一部のショッピングセンターに「棚置き」で売られ、1日平均、平日で約6000個、週末には約8000個売れるという人気ぶり。
もともと人気商品だったが、拍車が掛かったのは、ご当地の行事や習慣を紹介する人気TV番組に出てから。それまでも1日4000~5000個売れていたが、番組紹介を機に数量が増え、一時は製造能力一杯の1万個を売上げた。放映されてから3年近くがたつが、依然として売れ続けているカルネ。その商品力故であろう。
●企業データ
社名=志津屋/本店所在地=京都市右京区山ノ内五反田町35/店舗数=直営23店(京都府21店、大阪府1店、滋賀県1店)/事業内容=パン・洋菓子・デリカテッセンの製造販売、及び喫茶・レストラン営業。社名の由来は、創業者で初代社長の堀信氏が、愛妻・志津子さんの名前から「志津屋」と命名した。