業務用加工食品ヒット賞受賞製品列伝(3)ポテトサラダ編
外食メニューの活性化に貢献した業務用加工食品を表彰する「業務用加工食品ヒット賞」は来年第20回を迎える。あらためてカテゴリー別に受賞製品を振り返り、ロングセラー商品の強みを探る。
第3回で紹介するのは「ポテトサラダ」。ポテトサラダは洋食部門でこれまで3社4品が受賞している。
ポテトサラダは「ポテサラ」と略されて呼ばれるほどの定番メニュー。日配品だったものがロングライフサラダの登場で業務用卸が扱えるようになったことで販路が大きく広がった製品だ。さらに近年では素材使いとして汎用性が高まっている。
◆ケンコーマヨネーズ「レストランポテトサラダ」
受賞回:第1回洋食部門(1997年)
100種を超えるポテサラ製造 生産量は年間2万t超 一貫製造ラインの「ケンコープレミアム ポテト」好調
●販売の現状
ケンコーマヨネーズは77年に「FDF(ファッションデリカフーズ)」を開発したロングライフサラダのパイオニアだ。製パン向けに開発した製品を外食向けに改良して、92年に発売したのが「レストランポテトサラダ」だ。同社の連結売上高の約4割がサラダ類であり、主力製品である「ポテトサラダ」の生産量は年間2万tを超えている。製パン・外食・中食・給食などあらゆる業態向けに製造しており、その種類は100種類(PB含む)を超える。
●ヒットの歴史
FDFは、77年にサンドイッチ用として製パンメーカー向けに開発した。しかし、発売当時は日持ちをさせる工程で味や風味が落ち、手作りのようなポテトサラダを再現するのが難しく苦労したという。「レストランポテトサラダ」は、殺菌方法、専用マヨネーズの開発など改良を重ね、より手作りポテトサラダに近づけた。そのため販売はレストランなどの外食を中心に順調に推移していった。
現在の売れ筋は、収穫後、泥付きのまま入荷した北海道産のジャガイモを一貫製造ラインで出来たてをそのままパックした製品だ。その中でも、具材のすべてを北海道産にこだわった「まるごと北海道ポテトサラダ さやか」や、豊かなコクと濃厚な味わいの「特濃ポテサラ」、素材の風味をとことん追求したポテト製品「ケンコープレミアムポテト」が特に伸びている。
●裏ワザ事例
ちくわにポテトサラダを詰めてフライにした「ちくわサラダ」は熊本県のソウルフード的な惣菜として全国に広まっており、使用事例が増えている。また、ポテトサラダを牛乳、コンソメ、生クリームと合わせ冷製スープ仕立てのうどんスープにした新感覚うどんといったメニューも誕生。ポテトサラダの素材活用に注目が高まっている。
◆味の素「味の素kk士幌ポテト」サラダシリーズ
受賞回:第2回洋食部門(1998年)
産地(北海道士幌周辺地域)にこだわり 全アイテムがロングセラー サラダ以外の領域にも広がり
●販売の現状
味の素社が93年に発売した「味の素kk士幌ポテト」サラダシリーズは、レストランを中心に発売時から約3倍に伸びている(物量ベース)。同シリーズはジャガイモの食感が楽しめるごろっとタイプ、フィリングとしても使用できる用途が広いつぶしタイプの他に、「和風たらも」「粒マスタード&ソーセージ」などアレンジを加えたバラエティーサラダシリーズを含め現在12アイテムが揃っている。常に品質改良を続け、いずれの製品もロングセラー製品としてマーケットを広げている。
●ヒットの歴史
同社が、業務用ロングライフサラダ市場に参入したのは89年。同社業務用初のチルド製品でもある。発売後、順調な滑り出しで好調に推移。93年には、北海道士幌町農協とタイアップし、原料のジャガイモを産地指定(「士幌馬鈴薯施設運営協議会」のジャガイモ限定)し、「士幌ポテト」を全面的に打ち出す。
士幌周辺地域は、昼夜の寒暖差が大きく、養分や糖分をたっぷり蓄えたジャガイモが育つ、北海道でも有数のジャガイモの産地。士幌町農協はジャガイモの貯蔵技術にも優れており、収穫後も高い鮮度を維持できることが「士幌ポテト」にこだわる理由だ。原料のジャガイモは泥付きのまま工場に運ばれ、そこで一貫生産される。殺菌処理を施してもジャガイモの風味を損なわない技術改良が進み、「食べ比べていただくとホクホクとした食感の違いがわかっていただける」と地道な提案活動を続けた結果、ロングセラー製品になった。
●裏ワザ事例
「士幌ポテト」サラダに「コンソメ」をあえると洋風ポテトサラダに、また「ほんだし」をあえると和風ポテトサラダに。ジャガイモの風味をそのままにオリジナルポテトサラダができる。最近ではピザのトッピング、すしの軍艦巻きのネタなどサラダ以外の領域に使用範囲が広がっている。
◆キユーピー「エクシードサラダシリーズ〈デリカ用ポテトサラダ〉」
受賞回:第3回洋食部門(1999年)
昔ながらの手作り惣菜感 同社LLサラダの6、7割のシェア 製パン向けに高い伸び
●販売の現状
キユーピーは88年に「エクシード」ブランドで「デリカ用ポテトサラダ」「レストラン用ポテトサラダ」のロングライフサラダ2品を発売。その後も「サワークリームオニオンポテトサラダ」など自社の独自技術を生かしたバラエティー化で食シーンを広げ、現在ではNBだけで10数種のアイテムにまで拡大。物量ベースで10年前の2倍以上に伸び、同社のLLサラダカテゴリーの6、7割の売上げシェアを誇る主力商品となっている。
●ヒットの歴史
「デリカ用ポテトサラダ」は惣菜店が素材を足して付加価値をだせるようコクのある味わい、「レストラン用ポテトサラダ」は飲食店がそのまま提供できる自然な味わいが特徴。コクのある味わいが飲食店などでも人気となり「デリカ用ポテトサラダ」を中心に発売時から順調なスタートだった。
同社のポテトサラダは国産ジャガイモを使用。商品ごとに野菜の加工法は異なる。発売時からのニンジンがイチョウ切り、玉ネギがスライス、彩りにコーンという、手作り惣菜のイメージそのままのポテトサラダのファンも多い。
現在、特に伸びているカテゴリーは製パン関係。素材の味を引き立てる酸味を抑えたマイルドな味わいで賞味期間60日の「エルデリポテトサラダ」、自社グループのアンチョビー原料を生かし、大人の味わいが出せる「アンチョビーポテトサラダ」などが人気だ。
●裏ワザ事例
ロサンゼルスの人気朝食メニューの「エッグスラット」は、瓶の中にジャガイモのピューレと卵を入れて湯煎した卵料理。日本でもトレンドメニューとして人気が高まっている。ジャガイモピューレの代わりに「アンチョビーポテトサラダ」を用いて、トレンドメニューが簡単にできると好評だ。