メニュートレンド:メガ盛りがネットで話題 ますや食堂「唐揚定食」
「ますや食堂」の店構えは、よくある町の食事処。アクセスは最寄り駅からバスか、徒歩で30分弱と決してよくない。周囲は住宅とのどかな田園風景……にもかかわらず、昼時は駐車場が埋まる。43年間営業を続け、さらにここにきて、ネットでにわかに注目を集めて、週末は遠方からの来店もあるという。その人気の理由は、ズバリ!このメニューにある。
●1人分で鶏もも肉2枚半のド迫力 43年間、町の食堂として愛される理由
何も知らずに、ますや食堂の「唐揚定食」をオーダーすると、運ばれてきた料理を見て、度肝を抜かれる。いや、ネットなどで事前に料理写真を見ていても、実物の圧倒的なボリューム感に驚嘆せずにはいられない。それもそのはず、ご覧の通りのインパクトだ。
「唐揚定食」がますや食堂のメニューに載ったのは1994年ごろ。今でこそ“メガ盛り”がなにかと話題を呼んでいるが、今から10年前は、メガ盛りはトレンドではなかった。矢部勝利店主も「特に理由はないんですが、うちの奥さんが『お客さまに喜んでいただけるように』と言うので大きめにしたら、評判になって止められなくなっちゃったんです」とのこと。
自分が食べた料理を撮影して、Facebookやツイッター、個人ブログなどにアップすることが浸透するにつれ、メガ盛りの「唐揚定食」の評判がさらに広まった。今の時代、お客が発信する口コミの宣伝効果は見逃せない。それには、お客の目を引く特徴がカギ。そのひとつがメガ盛りといえるだろう。
メニューには「唐揚定食」とあるだけで、ことさら“メガ盛り”をアピールしているわけではない。それが、かえって料理が運ばれてきた時のサプライズとなり、メニューの評判を上げるのに効果的だ。
「唐揚定食」に使用している鶏もも肉は、1人分でなんと2枚半、約750g。1枚を半分にカットし、たれ、すりおろしたショウガとニンニク、ごま油、コショウ、溶き卵、片栗粉を混ぜたものに絡めて揚げる。卵は1人分に2個使用。「1個だと、揚げた時に衣が硬くなっちゃうんです」と原価を惜しまない。そのおかげで「フワ~ッと軟らかくて、冷めてもおいしい」と好評だ。
さらに、肉の筋を丁寧に切るという手間をかけ、下味用にはチャーシューを煮込んで肉のうま味が出ているたれを使うという工夫を凝らし、メガサイズの肉に火を通すために170℃の油で7~8分じっくり揚げる。また、食べ切れない場合は、持ち帰り用の容器に詰めてくれるというサービスも欠かさない。
「唐揚定食」は、決してデカイだけで売れているわけではない。“おいしい”という飲食店としての基本と行き届いたサービスがしっかりあり、そのうえでのメガ盛りだからこそ、メニュー力を発揮しているというわけだ。
「唐揚定食」は採算度外視の大盤振る舞いだが、これをきっかけに新規客を獲得して、再来店につなげるといういい循環を築いている。また、唐揚げは2つにして、コロッケと半ラーメンを付けたメニューを出したり、「お客さまが食べ飽きないように、ポン酢や大根おろしで食べていただけるようにもしたいと思っています」という。
店を長く続ける基盤となるのは、奇抜で斬新なメニューを開発することだけではなく、既存メニューをいかに工夫するかにあるかを、ますや食堂は実証しているといえるだろう。
●店舗情報
「ますや食堂」 所在地=埼玉県北本市荒井1-153/開業=1973年6月/営業時間=午前11時~午後2時30分、5時~8時 月曜定休 第2・3火曜休み/坪数・席数=約30坪・30席/平均客単価=昼約1000円
●愛用資材・食材
「ヤマサ 新味醤油」 ヤマサ醤油(千葉県銚子市)
コストパフォーマンスのよさが抜群
「本醸造ヤマサしょうゆ」に配合調味料のうま味を加えたまろやかな味が特徴。明るい色合いで、料理を鮮やかに仕上げる。保存料無添加。「うちは昔からヤマサの醤油。ラーメン用のチャーシューを煮込むのも、ラーメンのかえしにも使っています。使い慣れているので安心ですね」と矢部店主。
規格=18L