インバウンド繁盛店の秘訣:トリップアドバイザーで1位に 「ステーキおおつか」
◆肉に負荷をかけない焼き方
世界最大級の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」。京都・嵐山に、「外国人に人気の日本のレストラン」で2015年トップに輝いた店がある。にぎわうエリアから少し入った住宅街にある「ステーキ おおつか」だ。客の半数以上が外国人。海外から年に3回も食べに来たり、翌年に友だちを連れて来たりなど、リピーターも多い。3年前の開業時、客が1週間に3人だった店が、行列の絶えない店となっている。
●店舗の特徴:目利きが選ぶ肉
同店の特徴は、肉の目利きである店主の大塚洋一さんが、肉を厳選し、その肉にあった調理をしているということ。大塚さんは開業前、京都の三大精肉店の一つ「銀閣寺大西」に勤めていた。1000頭以上の牛をさばき、小売店の店長もし、広く細部にわたって肉を学んだ。
肉の調理にも、一工夫ある。ステーキというと鉄板やフライパンなどで焼くが、そうすると肉は焼き縮みをしやすい。大塚さんは、肉本来の軟らかさを目指した。赤外線グリルを使い、要らない脂を落とし、うま味を残して、程よい焼き具合。肉のおいしさを最大限に表現する。
●繁盛の理由:日本のステーキ
客足がまばらだった開店当初「味に自信はあったものの、3ヵ月くらいは心が折れそうでした」と大塚さん。転機は、外国人客に「おいしかった。トリップアドバイザーに店を登録してくれ。感想を書きたい」と言われたこと。登録すると、3ヵ月後には同サイト内で京都1位のレストランに。「高級ステーキ店よりおいしくて安い」「希少肉が食べられる」など多数投稿された。
外国人客が増えるにつれ、パンを出すことも考えたが、せっかく日本に来てくれたのだからとコメの質を上げた。肉はあらかじめカットしてあり、箸で食べるスタイルを提案する。
●伸ばすヒント:感動を味わってほしい
人気メニューは、丼物はローストビーフ、ステーキは村沢牛サーロインステーキ。村沢牛の村沢は、地名ではなく生産者の名前。長野の村澤さんが、育てた最高級ランクの肉にしかつけない。村沢牛を独占販売する前職の精肉店から特別に仕入れ、提供する。
「トリップアドバイザー1位は宝くじを当てたようなもの」と謙虚な大塚さん。肉を知り尽くす大塚さんだからこそ提供できるステーキに、国籍を問わず多くの客がファンになる。店内には、日本語と英語のメニュー表と、さらに観光地までのスタッフ手作りマップも置く。「また日本に来たい、京都に来ようと思ってくれたら、それだけでうれしい」と話す。
◆愛用機材
「赤外線グリラー」 リンナイ(愛知県名古屋市)
肉縮みなく本来の軟らかさ
ステーキに欠かせないのが、この赤外線グリル。赤外線で熱を加えるので、表面だけ焼けて、中は冷たいということがない。肉に負荷をかけず、本来の軟らかさや味わいが出せる。焼きながら余計な脂は落ちて、「肉の甘味、うま味、脂の質が全く違います」と店主の大塚さん。同店になくてはならない存在である。
◆企業メモ
「ステーキおおつか」 業態:ステーキ専門店
所在地=京都市右京区嵯峨天龍寺瀬戸川町20-10/開業=2013年5月/営業時間=午前11時~午後3時(LO2時30分)、木曜休み/席数=30席/平均客単価=2,500~3,000円