居酒屋の潮流を読む:立ち呑み「晩杯屋」 成功戦略とは?

2017.07.03 461号 10面
アクティブソース 代表取締役 金子源氏

アクティブソース 代表取締役 金子源氏

 ●マスト食材なしで安く仕入れ

 「晩杯屋」を展開するに際し、私には三つの業態イメージがありました。それは、「純立ち飲み屋」「下地屋」「ド大衆酒場」であることです。

 「純立ち飲み屋」は、“チャージがかからず、安くて早くてウマい”。飲み屋に徹し、ご飯は置きません。「下地屋」は、“早い時間帯の1軒目利用”というコンセプト。本格的に食べて飲むのは次の店で、うちでは低価格のドリンクとフードを短時間で楽しんでいただく高回転の店を目指しています。「ど大衆酒場」は、安価のビール大ジョッキ提供をベースにした、“安くて酔える店”です。

 一方、フードの参考にしたのが、「デパ地下グルメ」。といっても、お手本にしていたのではなく、デパ地下グルメとはまったく逆のイメージを目指しました。見栄え重視ではなく本当においしいものを、デパ地下グルメの3分の1~2分の1の価格で提供しよう、と考えたのです。

 現在、晩杯屋の客単価は1階路面店を例に挙げると、組客数平均1.4人で約1350円。“しっかり飲んでもらう”という基本姿勢から、フードは少ないポーションの1~1.5人前分量で、110~150円が最も多い価格帯です(表組参照)。

 フードでこれほど安い価格設定が可能な理由の一つは、晩杯屋は「必ず入手するメーン食材を設定していない」からです。例えば焼き鳥や刺し身、牛肉など、多くの店では、店のメーンメニューになっているがゆえ、必ず仕入れる食材というものがあります。

 しかし、うちは“純立ち飲み屋”ですから、つまみになる料理であれば何でもいい。刺し身や焼き鳥など、“必ずなくてはならないメニュー”がありません。日によって安く大量に買える食材だけを仕入れ、それを使ったメニューを提供すればいい、というわけです。

 晩杯屋のお客さまは1~2人の少人数での来店が多く、従来の立ち飲み屋ではあまり見かけなかった女性一人飲みや、シニア層の食事利用も大変目立ちます。

 地元のお客さまが1人、またはご夫婦で気軽に来店し、初対面の隣のお客さまと会話をしながら、お酒を楽しむ。これが晩杯屋のいつもの光景であり、私が目指していきたいのもまさにこれです。

 特に今後は、1人で食事をする層は、ますます増えていくはずです。そんな“おひとりさま”が、自宅からラフな格好でふらっと立ち寄り、酒と食事、そして人との語らいを楽しんでいく。そうした場を提供する店として、成長していきたいと思います。

 ※「焼肉ビジネスフェア2017」講演内容より

 アクティブソース 代表取締役 金子源氏

 1976年群馬県生まれ。「晩杯屋」を展開するアクティブソース代表取締役。「晩杯屋」は、09年に武蔵小山で4坪の一号店からスタート。その後は順調に店舗数を増やし、27店舗にまで拡大(17年4月現在)。

 ◆「晩杯屋」のメニュー価格帯

 ◎フード

 110・130円…26%

 150円…40%

 180円…10%

 200円以上…24%

 ◎ドリンク(アルコール)

 250・270円…15%

 290円…40%

 330円…15%

 370円…15%

 410円…5%

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