外食経営者の提言:梨湖フーズ・高木勉社長 カード決済手数料の料率是正が急務

2018.02.05 468号 07面

 ◆世界標準に向け外食産業の団結を提言 政府戦略のキャッシュレス化に呼応

 カードやモバイルの普及、インバウンドの活況を背景に飲食店のキャッシュレス決済が進んでいる。とはいえ、日本市場におけるキャッシュレスシェアは約17%(日本クレジット協会)と、世界各国と比べると半数以下。オリンピックを契機にさらなる飛躍が予測される。そこで議論を呼んでいるのが、見直しが遅れている「決済手数料率」(以下:料率)の是正だ。料率是正に向けた業界団結を進言する梨湖フーズの高木勉社長に話を聞いた。

 ●業界格差に疑問

 札幌を拠点に焼肉店など17店舗を経営しておりますが、カード決済が年々増えて、いまや30%に迫る勢いです。カード会社と交渉し、料率は多少割り引きされましたが、それでも「手数料=純利益」として年間換算すると相当な金額です。料率相場は個人店4~7%、中小飲食企業3~4%と聞きます。この数字は飲食店の経常利益率そのものといって過言ではないでしょう。

 私が料率に疑問を持ったのは、ゴルフ場経営者との雑談がきっかけです。いわく、ゴルフ場の料率相場は1.2~1.5%、コンビニは1%以下といわれ、各種業界別に料率相場が決められているそうです。なぜそれほど格差があるのか?

 ●日本再興戦略でも重要

 俗に「飲食店は水商売だから」という、リスクを懸念する慣習がありますが、そもそもリスクを担保されるべき本筋は、飲食店ではなくカード使用者本人のはず。飲食店が前借りしているわけではないので、その慣習は不当差別だと思います。カード会社の与信(審査)リスクを飲食店に押し付けているとしか考えられません。

 カード決済が少数派だった時代は、「カード使えます」が宣伝になり、高額利用者の集客にも役立つので、外食業界は黙っていましたが、1人2~3枚のカード保持が普及した現在のカード社会においても、昔の慣習を続けているのはおかしいと思います。

 自衛手段として、料率を上乗せして請求したり、面倒な少額決済を拒否する飲食店もありますが、それらは消費者保護の観点から倫理的にいかがなものか? カード会社は見て見ぬふりを続けるのでしょうか?

 政府は2014年に閣議決定した「日本再興戦略」で、「2020年に向けたキャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性向上」を掲げています。これはオリンピック開催を踏まえた国の方針でもあり、インバウンド促進による内需拡大に欠かせない重要な社会改革でもあります。

 ●サインレスで普及加速

 世界を見渡すと、カード決済比率が進んでいる先進諸国の中で北欧諸国は8割以上、与信が遅れている新興国でもデビット決済比率が飛躍的に高まっています。現金主義といわれた日本も世界の流れには逆らえないでしょう。

 いま日本の外食市場におけるカード決済総額は約1兆2000億円、市場規模の5%ほどです。外食の主要プレイヤーであるファストフードなどは、少額決済のため現金決済が主流ですが、競合相手のコンビニやスーパーはサインレスのカード決済を導入して、迅速会計やポイント付加を求める消費者ニーズに応えています。また、ある大手カード会社はサインレスの全世界実施を発表しており、他のカード会社も追随するとみられます。少額カード決済の普及は一段と加速し、ファストフードなども対応に迫られると思います。

 いまこそ外食産業が団結して料率是正を叫ぶべきです。

 ◆プロフィル

 高木勉(たかぎ・つとむ)

 梨湖フーズ(株)代表取締役社長 1956年北海道札幌市生まれ。高校卒業後、大昭和製紙北海道・実業団野球部を経て、79年「焼肉亭北一」独立開業。現在「焼肉徳寿」を主力に札幌拠点17店舗を展開。エストニア、フィンランドに日本料理店を出店するなど海外戦略にも注力。事業協同組合全国焼肉協会の副会長を務める。

 ◆会社概要

 梨湖フーズ(株)

 「焼肉徳寿」など17店舗

 本社所在地=札幌市白石区東札幌5条3丁目1-11

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