メニュートレンド:居酒屋前菜をインスタ映え商品に “カワイイ”仕立てる小道具使い
“インスタ映え商品”というと高単価をとれるメイン商品ばかりに意識が向きがちだ。店の世界観を表現するためにフォトジェニックな商品開発に力を入れている業態は、まだまだ少ない。そんな数少ない先進事例となるのが東京・新宿の居酒屋「ハレバレPECORI 新宿店」だ。同店の前菜メニュー事例を取材した。
●見た目だけでなく味も女子目線
「20~30代の女性が女子会やバースデーといったハレの日に選んでいただける店を目指し、2017年7月にメニューを一新。これまで以上にSNS映えを意識したフォトジェニックな商品メイクに注力しました」と料理長の福田淳さんは語る。
今回取材したアイテムを例にすると「尾山鶏のレバーペーストと林檎の蜜煮」では、レバーペーストを和菓子に使う最中(もなか)に入れて提供。「半熟卵のスモーキーポテサラ」は、お風呂グッズでおなじみのアヒルのソープディッシュに盛り付けるなど遊び心が満載だ。この2品に加えて前菜メニュー計8品を少量ずつ盛り合わせた「ジェントルマンな前菜盛り合わせ」では、シルクハットの形をした木製の器の上に8品全ての料理をオン。その高さは40・に及ぶ。
見た目だけでなく“味”の面でも女子受け目線を徹底。「尾山鶏のレバーペーストと林檎の蜜煮」では、レバーの苦手な人でも食べやすいクセの少ない尾山鶏をチョイス。臭みの原因になる血合いを丁寧に取り除き、炒め玉ネギ、バターと合わせてじっくりとソテー。これをロボクープで生クリームと混ぜ合わせてとろける口溶け感に仕上げる。これにリンゴと蜂蜜をじっくり煮詰めて甘さを引き出した蜜煮をオン。独特な甘じょっぱさが特徴だ。
「半熟卵のスモーキーポテサラ」では、ポテサラの上には卵、下には細切りしたジャガイモを鳥の巣のように成形して揚げたものを敷いて“鳥テーマ”を二重三重に仕掛けているところがポイント。味付き半熟卵の濃厚なとろみ、揚げたジャガイモのサクサク感が組み合わさった食感で価値を高めている。一方、スモークは低温で30分ほどと、短時間で香りを付ける程度にすることで、薫製香が苦手な客でも食べやすい配慮をしている。
その他にも「PECORI伝統のティラミス」(626円)はチョコレートパウダーを“土”に見立ててシャベルに盛り付けるなどフォトジェニックなメニューが目白押しで、来店客の実に9割を女性客が占めている。「今後は液体窒素を使ったデザートなども挑戦したい」と福田料理長は意欲を見せる。
●店舗情報
「ハレバレPECORI新宿店」 経営=ファイブグループ/店舗所在地=東京都新宿区歌舞伎町1-25-3 西武新宿駅前ビル7階/開業=2017年7月(業態転換)/坪数・席数=80坪・72席/営業時間=17時~翌5時。無休/平均客単価=3000円
●愛用資材・食材
「グレースジャークシーズニング」 輸入元=スパイスロード(東京都文京区)
カリブの味を一発で表現
オバマ元米国大統領の好物でもある「ジャークチキン」(842円・税込み)は売れ筋の肉料理の一つ。同品を味の要となるスパイスとして使用している。「ペーストなのでパウダータイプより短時間で食材に味が付きやすい。オペレーション的にも利点がある」と福田料理長。原材料に含まれるエスカリオン(春ネギ)などの香草が本場の味わいを表現する。
規格=284g