メニュートレンド:吸引力あるダイレクトな素朴感 古都屋「きこりむすび」
インスタ映えするきらびやかな弁当がある一方で、“素朴感”の直球勝負で人気なのが、奈良県香芝市にある古都屋の「きこりむすび」。近隣はもちろん、遠方から買いに来るファンも多く、強力な吸引力を発揮している。集客と売上げをけん引する、名物弁当の魅力を取材した。
●シンプルだからこそ素材が重要 日販80~100食のロングセラー
同店は、創業26年の地域に密着した弁当店。オープン当時、周囲は閑散としたエリアだったが、現在では、大阪のベッドタウンとして人口が急増。近隣にニュータウンが広がる幹線道路沿いにあり、弁当需要が期待できる立地である。
「当時は、イタリアンなどがもてはやされていた時代。でも、一般家庭では作らなくなった“おふくろの味”が、今後必要になってくるであろうという思いがありました。家庭の味に、もう少し手間暇をかけた料理を食べてもらいたいとオープンしました」と、水谷充宏店主。ミセスをターゲットに、テイクアウト専門のおにぎり店としてスタートした。
そして、開店ほどなく登場したのが「きこりむすび」。和歌山だけではなく奈良にも、山仕事などでの手軽な携帯食として、大きなおにぎりを高菜で包む“めはり寿司”が伝承されている。そのスタイルをヒントに、他のおにぎり店にはない商品をと開発したという。
竹皮を開くと出現するのは、昔話に出てくるような巨大なおにぎり。中には、甘辛く味付けしたチリメンジャコと昆布の佃煮が入っており、見た目通りの男性も満足できるボリュームだ。塩分3%に調整した塩紅サケとコンニャクの煮付け、梅干し、たくあんが添えられており、おかずも素朴である。
「シンプルな商品だからこそ、コメや海苔、サケなどの食材には、品質が良く安定供給される“ほんまもん”を使用しています」。中でも、コメはおにぎりの“命”。新米の季節には、各品種の味や食感を確認し、米穀店と相談しながら選定。数種類の品種をブレンドした同店専用のコメを、ガス炊飯器で炊き上げる。
きこりむすびでは、ご飯260gに塩味を付け、手で5~6回握るだけで成形。口の中でほどけるような食感を目指し、中はふんわりと外はしっかりした山の形に仕上げている。
同商品は、今や名物として定着し、日販は80~100個。購入者は、2~3個からレジャーや催事用に大量注文する人まで幅広く、他のおにぎりや幕の内などの弁当を同時購入する人も多い。同商品は、購入単価をアップさせる役割も果たしているのである。
「息長く愛される商品として大事にしていきたい」と水谷さん。名物を柱に、今後も地域に根ざして、利用を広げていきたいと話す。
●店舗情報
「古都屋」 所在地=奈良県香芝市旭ヶ丘1-31-1/開業=1992年7月/坪数=8.5坪/営業時間=8時30分~19時。水曜、第2火曜定休/平均客単価=1500円/1日平均集客数=100人
●愛用資材・食材
「専用ブレンド米」 使用米=富山県産コシヒカリ、奈良県産ヒノヒカリ、山形県または奈良県産ひとめぼれ
冷めてもおいしいご飯に
同店でこだわるのは、「冷めてもおいしい」を実現できるコメ。同店専用に、「コシヒカリ」4対「ヒノヒカリ」4対「ひとめぼれ」2の割合でブレンドした商品を使用している。変更はほとんどないが、新米の作柄により、産地が変わる場合もあるという。