メニュートレンド:高さ10cm超!?の3Dお好み焼き ミシュランが認めたふんわり食感
地域に根付いた伝統料理をモダンにアレンジする。数多の飲食店がさまざまな料理をベースに挑戦するものの、その大半は短命に終わってしまうものだ。そんな定説を覆し、広島お好み焼きをアップデートさせたのが「電光石火」の「広島お好み焼き」だ。“3Dお好み焼き”とも称されるオリジナリティーの高い同品の実力を検証する。
●鉄板焼きコースで食べる新店舗
「創業した社長が、おいしい広島お好み焼きを追求していくうちに、押しつぶして固める一般的な調理法とは真逆の焼き方にたどり着きました」と、銀座店店長の森俊之さんは同品誕生を振り返る。創業当時こそ賛否の声があったが、自らの味を貫いた結果、今や不動の名店の一つとして定着した。
調理の手順自体はオーソドックな広島風お好み焼きと変わらない。しかし工程ごとに独自のひと手間を加えて創作性の高い味を生み出している。卵、麺、野菜はどれもふわっとジューシーで軟らか。しっとり蒸したイカ天と香ばしく焼いた豚肉の組み合わせがアクセントになった上品な食感が人気の理由だ。
具材の中で最も量の多いキャベツは極細切りにし、広い鉄板でも温度の低い位置でじっくりと蒸し焼きする。その際、ヘラでキャベツを軽くほぐすようにして空気を含ませる。これによってキャベツがしっとり軟らかく心地よい歯応えに仕上がるのだ。
次が焼きそば麺。鉄板で軽く炒めてから少量の水で蒸していくのが一般的だが、ゆで麺機でしっかりゆで上げてから鉄板焼きする手法を採用。しっとりモッチリとしたまとまり感がある。
極めつけが具材全体を丸く包み込む卵。卵2個分をしっかり溶いて鉄板に広げ、上面が固まりはじめる前に具をのせてひっくり返す。ヘラで優しく回しながら丸く包み込んでいく様子は、赤子を産湯でなでる母親を思わせる繊細さである。
見逃せないのが「電光石火」という異色なネーミング。ほかにもカキを具材に入れた「人にやさしく」(1450円)、ホルモンを具材に加えて激辛ソースを塗った「キングオブルーキー」(1160円)と、ユニークな料理名がメニューに並ぶ。音楽好きの人ならお気づきかもしれないが、これらの商品名はパンクロックバンド「ザ・ブルー・ハーツ」の楽曲をオマージュしている。パンクロックが音楽の常識を打ち破って独自のカルチャーを生み出したように、同店のお好み焼きも既成概念にとらわれない個性を強烈にアピールし続けたことで、多くの人に支持されるブランドへと成長したのだ。
●店舗情報
「電光石火 銀座店」 経営=電光石火/店舗所在地=東京都中央区銀座8-2-16 FUNDES銀座4階/開業=2020年1月/坪数・席数=33坪・45席/営業時間=11時~24時。日曜休/平均客単価=昼1650円、夜4000円
●愛用資材・食材
「オタフクお好みソース」 オタフクソース(広島市西区)
広島の味を代表、そのままで使用
「食材はできる限り広島産にこだわっています」と森店長は語るが、その筆頭に挙げられるのが同品。他の調味料とブレンドせずに使用。斬新な軟らか食感を慣れ親しんだ味でまとめて、幅広い客層の支持につなげている。
規格=1.2kg